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そのきゅうじゅうよん

ラスくんの同級生側の憂鬱①

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 最近付き合いが悪い、とラスの同級生達は不満を口にしていた。昼休みはやたら教室を飛び出してしまうし、休み時間になれば短い時間にも関わらず脱出してしまう。
 聞けば先輩が待ってるから、と言うだけ。
 三年生の知り合いに脅されているようにも見えず、毎回不思議だった。
「今日こそその先輩とやらを引きずり出してどういう事かを聞こうと思う」
 意気込みながら、同級生の少年は張り切る。
 まだ幼さの残る可愛げのある顔立ちの彼は、二年生になった際にラスと席が隣同士だった事から友達になったノーチェ。
「先輩がどんなタイプなのか分からないけどね」と言いながら不安そうな表情を見せる。
 だが、このままでは他から孤立しかねないと心配で仕方が無い。
「えぇ…あいつがフラフラうろつくのは今に始まった事じゃねえだろ…」
「ほら、ノーチェはラスが好きで好きで仕方無ぇんだって。だから休み時間になるとハラハラしてるだろ?」
 ラス同様に制服を着崩し、ぱっと見チャラそうなタイプの彼らは冷やかすようにノーチェの額に軽く指で小突く。
「大体先輩先輩ってさ。どんだけその先輩がいい訳?俺との同居を解消してまでさぁ、何なんだよ」
 膨れっ面の彼に、仲間達はにやにやしだした。
 なるほど、と。
「何だ、元はそれかぁ。やきもちか?」
「違うって!!てか、キリル、ベルンハルド、付き合ってよ。どんな奴か顔を見てやるんだからさ。あんたらだって気になるだろ?」
 キリルと呼ばれた明るめの茶色く短い髪を尖らせた少年は、隣の黒い無造作ヘアのベルンハルドをチラ見した。
 ベルンハルドの方は大して興味も無さそうで、自分の携帯電話でアプリゲームに夢中になっている。
「面倒だなあ」
 この廃人め、とノーチェは彼を軽く睨んだ。
「♬マミマミ♬って名前で姫プレーヤーしてんの知られたく無かったら手伝ってよ、ベルンハルド」
「…っはあぁあ!?何で知ってんのお前!?」
 それまで机に腰掛けながらひたすらゲームに興じていたベルンハルドはがたりと体勢を崩し、しらっとした表情のノーチェに食ってかかった。
 引き気味のノーチェは「教えて貰ったんだよ」と答える。
「じゃらじゃらとアクセ着けて、口ピアスしてる無駄にド派手な男がさぁ、ゲーム内で♬マミマミ♬って名を使って、色んな男プレーヤーからアイテム貰いまくってるって、この学校で同じゲームしてる奴が聞いたらどうするよ」
「勝手にくれるから仕方無ぇだろ!その名前言うなよ、姉貴の名前使ってんだからよ!分かったよ、付き合えばいいんだろ!くそっ」
 完全に脅しにかかるノーチェに負け、ベルンハルドは手にしていた携帯電話をポケットに収納する。
 頭を掻きながらベルンハルドは「誰にも教えて無えのに」とぶつくさと呟く。
「どっから漏れたんだよマジで」
 訝しむ彼に対し、それまで黙っていたキリルはようやく口を開いた。
「あ、俺画面開いてる時に見ちゃってさあ」
「はああ!?」
「だって俺、同じゲームしてるし」
「………」
 何それ、とベルンハルドは口をあんぐりと開く。
「知らないんだけど…何で今まで言わなかったんだよ」
「ほら、お前ワールド内で悪女だってボロクソじゃん」
 まさかこんな身近に居るなんて思わないだろ、とキリルは大笑いする。
「何なんだよあんたら、みんな廃なの」
 話に全くついていけないノーチェは頭を抱えた。
「ノーチェはやらないタイプか」
「一度やってみたけどお金無くて…もう仕様が分からなくて、お金下さいって他のプレーヤーに話しかけたら相手が消えちゃってそれっきりだよ」
 げんなりしながら言うと、ベルンハルドは「いきなり物乞いってやる事凄げぇな」と笑う。
「もう、それはいいから早くラスを探そうよ!休み時間勿体無いでしょ、♬マミマミ♬!!」
 言われたくない名前を呼ばれ、ベルンハルドはがくりと脱力する。
「その名前呼ぶな!!」
「何でだよ、可愛いだろ♬マミマミ♬」
「だから呼ぶなって言ってんだろ!」
 これからそう呼んでやろうかと揶揄いつつ、三人は仲間を探す為に自分達の教室を後にした。
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