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そのはちじゅうなな

真偽は定かではない

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 何さその反応、とスティレンはやけに不満そうにラスに言う。彼にしては、自分の意見に賛同して欲しかったのだろうがラスにとっては相当どうでもいいようだった。
 ラスは「うん?」ととぼける。
「俺は世界で一番美しいんだよ。そこはちゃんと同意してくれないとさぁ」
「ああ、はいはい」
「何なのその適当な返しは!もう、腹立つなぁ」
 褒めろという事か。
 ここまで自画自賛が激しいと同意する気が失せてくるのだが、スティレンはそこまで思わないのだろう。
「俺に褒められたって嬉しくないと思うけど…」
 乗り気でないラスの言葉を受け、スティレンは何言ってるのさと呆れた顔をする。
 彼は無駄に顔がいいだけに、例えどんなイラッとするような発言が出たとしても、そこまで腹が立ってこないのは不思議だ。それだけ妙な魅力があるのだろう。
 ただ、ラスの趣味ではない。
「俺は褒められたら伸びるんだよ!」
 さも当然のように言い出す。
 ラスは雑誌をめくりながら「何の話をしてるんだよ…」と困惑する。
「何の話だって?…何だったっけ?ああ、俺は美しいって事だよ!もう、言わせないでよ」
「自分から言っておいて何を言ってるんだよ。前々から思ってたけど、スティレンってとにかく前向きだよね」
 自分の事に関して、と言いたいのをグッと堪える。
 するとスティレンは強気にふふんと笑った。
「そりゃそうだよ。何たってこの美貌だよぉ?誰からも注目されちゃうだろうさ、これくらいの美しさならね。ラブレターだって沢山貰ってたしぃ?ま、みんなが放って置かないのが困り物だけどさぁ」
「その割にはこっちでは誰からも相手にされなくない?」
「うっさいな!!こっちの学校の連中は見る目が無さすぎるのさ!眼球に藁でも詰まってるんじゃないの!?」
「その前にここ、普通に男子校だしね」
「いいんだよ!俺の美しさは性別を超えるんだよ!」
「めちゃくちゃだなぁ…」
 図星を刺されると分かりやすく反応するのが楽しい。
 ラスはつい読んでいた雑誌から目を離して顔を上げ、くすくすと笑った。
 顔を紅潮させながらスティレンは腕を組み「何さ」とラスを鬱陶しそうに見る。彼にとってはラスも見る目のない人間の一人だ。
「それはそうとさ、スティレン。寝小便癖は治ったの?」
 いらない言葉が投げつけられてしまう。
「さすがに今の年でそれはやばいから治した方がいいと思うよ」
 それまでラスを下に見ていたスティレンは顔を真っ赤にし、やたらムキになって反論した。
「だから!!!そんなのしてないってばっ!!馬鹿なの!?何リシェの言葉を間に受けてんのさ!!!」
 このままでは自分の能力に寝小便スキルが付与されてしまうではないか、とスティレンは内心慌てた。リシェがいらない事を言うせいで。
 ラスはきょとんとしながら「してないの?」と悪びれる事も無く問う。
「当たり前でしょ!?適当な事を間に受けないでよ!大体あいつはたまに適当な事を喋ってくるんだから信じないでよね!!」
 これから突っ込まれるたびにいちいち説明しなければならないのだろうか、と苛立ちながらスティレンはラスに対してリシェにもそう言っておきなよと釘を刺していた。
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