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そのななじゅうろく
真夜中に飛び交う矢文
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どこから矢を飛ばしてるんだろう、とリシェは窓から顔を出してみる。しかし人影らしいものは見当たらず、リシェは不思議そうな顔で首を傾げていた。
変だなあと呟いていると、額に刺さるようにくっついていた矢を手にしながらラスが隣で憤慨しながらやってきた。
「この辺りには隠れられる場所なんかあるわけないのに…!どこに居るんだよ!」
「ラス」
随分と矢がくっついたなあ、と彼の手の中にある数本の吸盤付きの矢を眺めていると、再び「あ痛っ!」とラスが叫んだ。
またかよ!と彼は額に付いた矢を抜く。
「またよく分からない紙が付いてる」
指摘された通り、その矢には紙が括られていた。
「何なんだよ、腹立つなあ!あの変態教師め!」
ラスはその紙を勢い良く広げて中身を確認した。
『この矢にリシェの身に付けるものを括り付けて送り返しなさい』
丁寧な美しい文字でそう認められている。
ラスは忌々しげに舌打ちすると、ぐしゃぐしゃにしてゴミ箱に捨てた。
リシェはきょとんとしながら何て書いていたんだ?と問う。
「いや、先輩が見たら気分が悪くなりますから見ない方がいいですよ」
「?」
こうなったら絶対にリシェをあの変態から守らなければ、とラスは意気込む。あんな奴の毒牙に当たれば、先輩は嫌でも従わざるを得ない状況になるに違いない、と。
密室に連れられてあんな事やそんな事をされてしまうのは分かっている。
「あの変態なんかに、先輩は渡さないから!」
「変態?」
すると再びラスの額にピシリと矢が飛んできた。
痛い!と額を押さえながら引っこ抜く。先程と同じように、矢文が付いていた。
何故こんな古典的なやり方をするのか。
「大丈夫か」
無言で矢を取り、紙を広げる。
『意味が分かりますか?リシェが身に付ける物です。例えば下着とか下着とか下着とか。察して下さい、私はリシェの身に付けるものが欲しいのです』
ラスは矢を投げ捨て、紙を破いて窓に飛び出すと「この変態野郎!!」とどこに居るか分からない相手に向けて叫んだ。
リシェは段々飽きてきたらしく、室内に入って温かいお茶を飲み始めていた。そんな彼の前をズカズカと横切り、ラスは何かの布切れを矢に括り付け投げ飛ばす準備を始める。
クッキーを頬張りながら、リシェは彼に「何をしているんだ?」と聞いた。
「相手様の要求に従おうと思って。向こうは大層ご所望のようだから」
「?」
矢に布を巻き付け、ゴムで縛る。
「何だそれ?」
「何かって?俺の下着ですよ。勿論未使用です。派手すぎてなかなか使えないんだよねぇ」
確かに黄色やら紫やらの派手な柄で、目にうるさい色をしている。でも何故下着を括り付けているのだろう、と手紙の内容を知らないリシェは疑問だった。
ラスは勝ち誇った顔で、これでも喰らえと窓から矢を飛ばす。
「変なやり取りをしてるなあ」
リシェはうずず、と音を立てながら茶を飲み切った。やり方が古風過ぎる。
返事はなかなか返ってこない。
お望み通り、未使用だが下着を送りつけてやったので満足したのかもしれない。
普通なら捕まる案件だと思うが、変態には変態的なやり方で撃退したらどうかと考えたのだ。
しばらくすると、また矢が窓に貼り付いてきた。
「何だよ、まだ文句があるのか!」
ラスは窓を開けて矢を抜き、同封された手紙を広げる。
『リシェはもっと地味なのを履くと思います』
知ったような口で言う相手に、ラスはかあっとなる。今度はケチをつける気なのか、と腹が立ってきた。未使用の下着をやっただけでもありがたいと思って欲しい。
そのまま手紙をぐしゃりと握り潰すと、「贅沢を言うな!!」と暗闇に向けて怒鳴り散らしていた。
変だなあと呟いていると、額に刺さるようにくっついていた矢を手にしながらラスが隣で憤慨しながらやってきた。
「この辺りには隠れられる場所なんかあるわけないのに…!どこに居るんだよ!」
「ラス」
随分と矢がくっついたなあ、と彼の手の中にある数本の吸盤付きの矢を眺めていると、再び「あ痛っ!」とラスが叫んだ。
またかよ!と彼は額に付いた矢を抜く。
「またよく分からない紙が付いてる」
指摘された通り、その矢には紙が括られていた。
「何なんだよ、腹立つなあ!あの変態教師め!」
ラスはその紙を勢い良く広げて中身を確認した。
『この矢にリシェの身に付けるものを括り付けて送り返しなさい』
丁寧な美しい文字でそう認められている。
ラスは忌々しげに舌打ちすると、ぐしゃぐしゃにしてゴミ箱に捨てた。
リシェはきょとんとしながら何て書いていたんだ?と問う。
「いや、先輩が見たら気分が悪くなりますから見ない方がいいですよ」
「?」
こうなったら絶対にリシェをあの変態から守らなければ、とラスは意気込む。あんな奴の毒牙に当たれば、先輩は嫌でも従わざるを得ない状況になるに違いない、と。
密室に連れられてあんな事やそんな事をされてしまうのは分かっている。
「あの変態なんかに、先輩は渡さないから!」
「変態?」
すると再びラスの額にピシリと矢が飛んできた。
痛い!と額を押さえながら引っこ抜く。先程と同じように、矢文が付いていた。
何故こんな古典的なやり方をするのか。
「大丈夫か」
無言で矢を取り、紙を広げる。
『意味が分かりますか?リシェが身に付ける物です。例えば下着とか下着とか下着とか。察して下さい、私はリシェの身に付けるものが欲しいのです』
ラスは矢を投げ捨て、紙を破いて窓に飛び出すと「この変態野郎!!」とどこに居るか分からない相手に向けて叫んだ。
リシェは段々飽きてきたらしく、室内に入って温かいお茶を飲み始めていた。そんな彼の前をズカズカと横切り、ラスは何かの布切れを矢に括り付け投げ飛ばす準備を始める。
クッキーを頬張りながら、リシェは彼に「何をしているんだ?」と聞いた。
「相手様の要求に従おうと思って。向こうは大層ご所望のようだから」
「?」
矢に布を巻き付け、ゴムで縛る。
「何だそれ?」
「何かって?俺の下着ですよ。勿論未使用です。派手すぎてなかなか使えないんだよねぇ」
確かに黄色やら紫やらの派手な柄で、目にうるさい色をしている。でも何故下着を括り付けているのだろう、と手紙の内容を知らないリシェは疑問だった。
ラスは勝ち誇った顔で、これでも喰らえと窓から矢を飛ばす。
「変なやり取りをしてるなあ」
リシェはうずず、と音を立てながら茶を飲み切った。やり方が古風過ぎる。
返事はなかなか返ってこない。
お望み通り、未使用だが下着を送りつけてやったので満足したのかもしれない。
普通なら捕まる案件だと思うが、変態には変態的なやり方で撃退したらどうかと考えたのだ。
しばらくすると、また矢が窓に貼り付いてきた。
「何だよ、まだ文句があるのか!」
ラスは窓を開けて矢を抜き、同封された手紙を広げる。
『リシェはもっと地味なのを履くと思います』
知ったような口で言う相手に、ラスはかあっとなる。今度はケチをつける気なのか、と腹が立ってきた。未使用の下着をやっただけでもありがたいと思って欲しい。
そのまま手紙をぐしゃりと握り潰すと、「贅沢を言うな!!」と暗闇に向けて怒鳴り散らしていた。
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