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そのななじゅうさん
一方、その頃
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「ああ、何か今すっごくムカついてきた」
噂をされているのを微かに感じたのか、スティレンは寮内の休憩室で不愉快そうにそう吐き捨てる。
それを聞いたリシェは、すぐにスティレンから離れようと席を立つ。それを見るなりちょっと!と注意した。
リシェは眉を寄せ、何だと返す。
「何離れようとしてるのさ!」
「勝手にムカつかれて、知らない理由で殴られたら困るから避難しようとしていたのだ」
真っ当な理由なのだが、スティレンははああ?とリシェに詰め寄る。
「そんな野蛮な事する訳ないでしょ!」
「そう言いながら殴ってくるくせに…」
どうやら本人は全く自覚が無いらしい。
リシェは大人しくスティレンの向かいの椅子に再びすとんと座る。
「そういえばラスは?」
必ずくっついてくるはずの人間が居ないのが珍しい。スティレンの質問にリシェは首を傾げて「知らない」と言った。
「何か同級生に呼ばれてどこかに行った」
「へえ…まあいいけど」
邪魔する人間が居なければ居ないで別に構わないのだ。その分ゆっくりとリシェに構う事が出来る。
…まあ、構うと言っても普通に会話をするだけで、特に何かしたいとかは思ってはいないのだが。
こいつに何かしらアピールしても、超ド級に鈍いお子様な性質を持つせいで全く勘付いたりもしないだろう。
「リシェ」
「ん?」
リシェの前には飲み物すら一切置かれていない。
ただ座っているだけの状態だった。
「お前、好きな人とか居ないの」
口を真一文字に結んでいたリシェは首を傾げ「居ないけど」と無表情に返事をした。
「ラスにあれだけアピールされてるのに?はは、無駄な努力じゃないか」
「…って言えば、お前はどう反応するのかと思ったのだ」
………。
………。
しばらくお互い無言になる。
その後、スティレンはかああっと白い顔を真っ赤にした。ひくひくと顔を引きつらせ、動揺のあまり落ち着かない様相を見せる。
「何なのさお前!!お、俺を試すような真似、しないでくれない!?む、ムカつくっ!馬鹿じゃないの!?」
「何を慌てる」
「ああっ!?慌てる!?あ、慌ててないし!!何で俺がっ、この俺がお前ごときに動揺しなきゃいけないのさっ!?は、はぁああ!?ああっ、すっごい気分悪い!!リシェのくせに俺を騙そうとかっ!」
勢い余って座席を立ちながらこちらを見下ろし、スティレンはリシェに対して怒りだした。
ここまであからさまに動揺されると鈍いリシェも少し呆気にとられそうになる。
「大丈夫なのか、お前」
「何が!?何がさ!お前にっ、心配される事なんかひとっつも!無いんだからっ!!」
そう言いながら彼は赤面し、指摘された事で変に恥ずかしくなってきたのか勝手に弱っていった。
「?」
「くそっ!リシェのくせに!リシェのくせに!!」
リシェがぽかんとしていると、彼はううっと呻いてその場から脱走する。
休憩室に一人残されたリシェは、勝手に怒って勝手に動揺し、勝手に走り去ってしまった変なスティレンに対し、変な奴だと呆れていた。
噂をされているのを微かに感じたのか、スティレンは寮内の休憩室で不愉快そうにそう吐き捨てる。
それを聞いたリシェは、すぐにスティレンから離れようと席を立つ。それを見るなりちょっと!と注意した。
リシェは眉を寄せ、何だと返す。
「何離れようとしてるのさ!」
「勝手にムカつかれて、知らない理由で殴られたら困るから避難しようとしていたのだ」
真っ当な理由なのだが、スティレンははああ?とリシェに詰め寄る。
「そんな野蛮な事する訳ないでしょ!」
「そう言いながら殴ってくるくせに…」
どうやら本人は全く自覚が無いらしい。
リシェは大人しくスティレンの向かいの椅子に再びすとんと座る。
「そういえばラスは?」
必ずくっついてくるはずの人間が居ないのが珍しい。スティレンの質問にリシェは首を傾げて「知らない」と言った。
「何か同級生に呼ばれてどこかに行った」
「へえ…まあいいけど」
邪魔する人間が居なければ居ないで別に構わないのだ。その分ゆっくりとリシェに構う事が出来る。
…まあ、構うと言っても普通に会話をするだけで、特に何かしたいとかは思ってはいないのだが。
こいつに何かしらアピールしても、超ド級に鈍いお子様な性質を持つせいで全く勘付いたりもしないだろう。
「リシェ」
「ん?」
リシェの前には飲み物すら一切置かれていない。
ただ座っているだけの状態だった。
「お前、好きな人とか居ないの」
口を真一文字に結んでいたリシェは首を傾げ「居ないけど」と無表情に返事をした。
「ラスにあれだけアピールされてるのに?はは、無駄な努力じゃないか」
「…って言えば、お前はどう反応するのかと思ったのだ」
………。
………。
しばらくお互い無言になる。
その後、スティレンはかああっと白い顔を真っ赤にした。ひくひくと顔を引きつらせ、動揺のあまり落ち着かない様相を見せる。
「何なのさお前!!お、俺を試すような真似、しないでくれない!?む、ムカつくっ!馬鹿じゃないの!?」
「何を慌てる」
「ああっ!?慌てる!?あ、慌ててないし!!何で俺がっ、この俺がお前ごときに動揺しなきゃいけないのさっ!?は、はぁああ!?ああっ、すっごい気分悪い!!リシェのくせに俺を騙そうとかっ!」
勢い余って座席を立ちながらこちらを見下ろし、スティレンはリシェに対して怒りだした。
ここまであからさまに動揺されると鈍いリシェも少し呆気にとられそうになる。
「大丈夫なのか、お前」
「何が!?何がさ!お前にっ、心配される事なんかひとっつも!無いんだからっ!!」
そう言いながら彼は赤面し、指摘された事で変に恥ずかしくなってきたのか勝手に弱っていった。
「?」
「くそっ!リシェのくせに!リシェのくせに!!」
リシェがぽかんとしていると、彼はううっと呻いてその場から脱走する。
休憩室に一人残されたリシェは、勝手に怒って勝手に動揺し、勝手に走り去ってしまった変なスティレンに対し、変な奴だと呆れていた。
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