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そのごじゅうなな
リシェ、オンラインゲームをする
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リシェは暇潰しにゲームをしていた。
手にフィットした大きさで、真ん中に画面、両サイドにコントローラーがあり操作出来る。
風呂も済ませて完全なリラックスムードの中、ラスは彼の背後を覗き込むようにして「何をやってるんですか?」と問う。
あの俗物系には興味の湧かないリシェがこのようなゲームを好んでするなんてと、意外だとラスは思っていたがこちら側では普通の光景なのだろう。
「この前買っておいたのをやるの、すっかり忘れてたのだ。世界を冒険しておかないと」
「へえ…オンラインゲーム?」
「そんな感じだ」
ラスはあまりゲームには興味が持てない方だったが、リシェがやるなら自分もやってみようかなあとか簡単に思っていた。
中身を見ると最初に自分の操作するキャラクターを作成して、次に職業、それに付随するスキルなどをつけていきレベルを上げていくというパターン。
たどたどしい初めての操作でリシェはキャラクターを作っていき、ようやくゲームの世界に入り込んでいく。
「名前もリシェなんですか」
「他に何がある?」
「ほら、先輩の名前って女性的な感じがするじゃないですか。多分声とかかけられますよ」
「性別、男にしてるんだけど」
どんな外見にしたんですか?とラスはゲーム機を彼から借りて覗き込んだ。
「…名前と不釣り合いじゃないですかね?」
「だめか」
外見はランダムに設定したものの、相当屈強な筋肉男の姿にされていた。あまりの名前の似合わなさに、ついラスはふっと笑ってしまう。
「じゃあ何がいいって言うんだ」
「俺が作ってみますよ」
彼はひょいひょいとキャラを作成し、これはどうですかねとリシェに返した。
見るなり若干不満げにする。
「女キャラじゃないか」
「いいじゃないですか。可愛いし」
小柄でふりふりした衣装の可愛らしい姿に変更されてしまう。リシェは次第に面倒になり、いいやこれでと決定項目にカーソルを当てた。
「大丈夫ですよ、こういうゲームって大抵可愛いキャラは中身おっさんって決まってますから」
「お前、実際会った事があるのか?」
「他から聞いた話ですよ」
そんなものなのかと変に納得するリシェ。
大人しく進めることにした。
チュートリアルをこなし、ようやくオンラインの場へと進む。
「ん?」
降り立つなり、リシェは疑問の声を上げた。
「なあ」
「はい?」
「話しかけられてるんだけど、これって俺に対してか?」
どれどれと覗き込み、確認をする。
チャット画面を見ると。赤い文字で映される文字列。
『すみません』
『すみません』
『お金ください』
「………」
恐らくリシェ個人に当てられたものなのだろう。
「先輩に向けてじゃないですかねえ」
「始めたばかりの俺にお金を下さいって言うのか。こんな所にも乞食が居るなんて思わなかった」
萎えるな、とリシェは愚痴る。
しかも会話の仕方すら分からない。
「やめようかな」
作成の段階で疲れてきた、といきなりリセットする。あまり思い入れが無い為か、物凄くあっさりした終わり方だった。
「ええ、やめちゃうの?勿体ない」
「あとでやる」
「でも、その方が俺嬉しいなぁ。だって先輩と会話が出来るんだもん」
ラスは妙に嬉しそうにリシェに言うと、彼からゲーム機を剥がし優しく頭を撫でていた。
手にフィットした大きさで、真ん中に画面、両サイドにコントローラーがあり操作出来る。
風呂も済ませて完全なリラックスムードの中、ラスは彼の背後を覗き込むようにして「何をやってるんですか?」と問う。
あの俗物系には興味の湧かないリシェがこのようなゲームを好んでするなんてと、意外だとラスは思っていたがこちら側では普通の光景なのだろう。
「この前買っておいたのをやるの、すっかり忘れてたのだ。世界を冒険しておかないと」
「へえ…オンラインゲーム?」
「そんな感じだ」
ラスはあまりゲームには興味が持てない方だったが、リシェがやるなら自分もやってみようかなあとか簡単に思っていた。
中身を見ると最初に自分の操作するキャラクターを作成して、次に職業、それに付随するスキルなどをつけていきレベルを上げていくというパターン。
たどたどしい初めての操作でリシェはキャラクターを作っていき、ようやくゲームの世界に入り込んでいく。
「名前もリシェなんですか」
「他に何がある?」
「ほら、先輩の名前って女性的な感じがするじゃないですか。多分声とかかけられますよ」
「性別、男にしてるんだけど」
どんな外見にしたんですか?とラスはゲーム機を彼から借りて覗き込んだ。
「…名前と不釣り合いじゃないですかね?」
「だめか」
外見はランダムに設定したものの、相当屈強な筋肉男の姿にされていた。あまりの名前の似合わなさに、ついラスはふっと笑ってしまう。
「じゃあ何がいいって言うんだ」
「俺が作ってみますよ」
彼はひょいひょいとキャラを作成し、これはどうですかねとリシェに返した。
見るなり若干不満げにする。
「女キャラじゃないか」
「いいじゃないですか。可愛いし」
小柄でふりふりした衣装の可愛らしい姿に変更されてしまう。リシェは次第に面倒になり、いいやこれでと決定項目にカーソルを当てた。
「大丈夫ですよ、こういうゲームって大抵可愛いキャラは中身おっさんって決まってますから」
「お前、実際会った事があるのか?」
「他から聞いた話ですよ」
そんなものなのかと変に納得するリシェ。
大人しく進めることにした。
チュートリアルをこなし、ようやくオンラインの場へと進む。
「ん?」
降り立つなり、リシェは疑問の声を上げた。
「なあ」
「はい?」
「話しかけられてるんだけど、これって俺に対してか?」
どれどれと覗き込み、確認をする。
チャット画面を見ると。赤い文字で映される文字列。
『すみません』
『すみません』
『お金ください』
「………」
恐らくリシェ個人に当てられたものなのだろう。
「先輩に向けてじゃないですかねえ」
「始めたばかりの俺にお金を下さいって言うのか。こんな所にも乞食が居るなんて思わなかった」
萎えるな、とリシェは愚痴る。
しかも会話の仕方すら分からない。
「やめようかな」
作成の段階で疲れてきた、といきなりリセットする。あまり思い入れが無い為か、物凄くあっさりした終わり方だった。
「ええ、やめちゃうの?勿体ない」
「あとでやる」
「でも、その方が俺嬉しいなぁ。だって先輩と会話が出来るんだもん」
ラスは妙に嬉しそうにリシェに言うと、彼からゲーム機を剥がし優しく頭を撫でていた。
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