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そのごじゅうご
ふわふわした欲望
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部屋に戻ると、入口でスティレンが二人を待ち構えていた。リシェはまたかと困ったような顔をする。
彼はこちらを見るなりすっくと立ち上がって「何でそんなに帰るのが遅いのさ!」と頰を膨らませて怒り出す。
リシェとラスはお互いに顔を見合わせると「何で待ってるんだ?」と問う。
「何で待ってるかって?あんたらがどこかでいかがわしい事をしているんじゃないかって疑ってるからだよ!」
ぷりぷりと怒り狂うスティレンを他所に、リシェは部屋のドアノブに鍵を差し込む。解錠しながら、何だよいかがわしい事って、と不機嫌そうに呟いた。
「言わせたいの?あんたらがどこかでセックスしてるんじゃないかって疑ってたんだよ!」
「は?」
変な事をはっきりと言う従兄弟に対しリシェが思いっきり否定を込めて反論の声を上げる一方、ラスは「はぁあああああああん」と頰を紅潮させて両手で押さえ、何故か悶絶していた。
「そ…そんなっ、せ、セック…なんてっ!そりゃあそのうちそうなるかもしれないけどっ、もう、何て事言うんだよスティレン!先輩だっていきなりそう言われちゃ困っちゃうだろぉお」
リシェは二人を無視して部屋に入る。
はあ、もうこいつらしんどい。
通学カバンを自分の机に置き、凝ってきた肩を軽く揉む。ラスとスティレンはまだ何やら言い合っていたが、内容を知る気にもなれない。
「言っとくけど、俺が最初にリシェに唾をつける予定なんだから触んないでよね!あんたみたいなむっつりタイプ、目を離せば好き勝手に突いてくるんだから!」
「突いてくるとか!そんな…この場合、俺が突くあれなんだろうな…ああもうそんな照れ臭い!もう、スティレンってば卑猥な事を普通に喋ってくるんだから」
「馬鹿なの!?俺、突くなんて言ってないんだけど!つーつーくって言ったの!何でそこまで想像広げられる訳!?」
部屋の入口で言い合っているのを聞いていると、次第に脱力してくるのを感じる。
「ちょっとリシェ!お前、ラスに変な事されてないだろうね!?俺を差し置いていやらしい事をされたら即言うんだよ!分かった!?」
俺を差し置いてとはどういう意味なのか、知りたいとも思わないけれども引っかかる。無気力に何もないよとだけ言うと、二人に向けて「入れば?」と告げた。
いつまで入口で変な事を言い合う気なのだろう。
リシェは至って普通のことを言ったつもりなのだが、頭がすっかり蒸発している状態のラスはさらに顔を真っ赤にする。
「そんな!先輩、入れるだなんて!もう、そんなに求められても!」
「何言ってるんだ…」
ロシュとの件以降、完全に舞い上がり続けている。今のラスには、何を言ってもいいようにしか聞こえてこないようだ。
しかも言葉を違う意味に捉えている模様。
スティレンはずるずるとラスを引きずって室内に入ると、そのまま床に放った。
「てか、こいつ本当に大丈夫なの?お前食われるんじゃないのこのままじゃ」
「いや、大丈夫だろう。俺が嫌がる事はしないってちゃんと言ったし…」
約束はちゃんと守ってくれる方だ、と思いたい。
余程嬉しかったのか、彼は蕩けそうな表情を見せながら床に座ってへらへらと笑顔を見せ続けていた。
「先輩」
「?」
ラスは座り込んだまま、リシェを見上げて声をかける。彼はいつもの無表情のままで返事をした。
彼はほわほわと夢心地に居るかのように宣言する。
「その時は絶対優しくしますから…!」
何を言い出すのか。
思いっきり嫌そうな表情をするリシェよりも先に、彼の従兄弟が先に出てくる。
「そんなのは絶対起きないから安心しな!!」
スティレンはラスに対しそう断言していた。
彼はこちらを見るなりすっくと立ち上がって「何でそんなに帰るのが遅いのさ!」と頰を膨らませて怒り出す。
リシェとラスはお互いに顔を見合わせると「何で待ってるんだ?」と問う。
「何で待ってるかって?あんたらがどこかでいかがわしい事をしているんじゃないかって疑ってるからだよ!」
ぷりぷりと怒り狂うスティレンを他所に、リシェは部屋のドアノブに鍵を差し込む。解錠しながら、何だよいかがわしい事って、と不機嫌そうに呟いた。
「言わせたいの?あんたらがどこかでセックスしてるんじゃないかって疑ってたんだよ!」
「は?」
変な事をはっきりと言う従兄弟に対しリシェが思いっきり否定を込めて反論の声を上げる一方、ラスは「はぁあああああああん」と頰を紅潮させて両手で押さえ、何故か悶絶していた。
「そ…そんなっ、せ、セック…なんてっ!そりゃあそのうちそうなるかもしれないけどっ、もう、何て事言うんだよスティレン!先輩だっていきなりそう言われちゃ困っちゃうだろぉお」
リシェは二人を無視して部屋に入る。
はあ、もうこいつらしんどい。
通学カバンを自分の机に置き、凝ってきた肩を軽く揉む。ラスとスティレンはまだ何やら言い合っていたが、内容を知る気にもなれない。
「言っとくけど、俺が最初にリシェに唾をつける予定なんだから触んないでよね!あんたみたいなむっつりタイプ、目を離せば好き勝手に突いてくるんだから!」
「突いてくるとか!そんな…この場合、俺が突くあれなんだろうな…ああもうそんな照れ臭い!もう、スティレンってば卑猥な事を普通に喋ってくるんだから」
「馬鹿なの!?俺、突くなんて言ってないんだけど!つーつーくって言ったの!何でそこまで想像広げられる訳!?」
部屋の入口で言い合っているのを聞いていると、次第に脱力してくるのを感じる。
「ちょっとリシェ!お前、ラスに変な事されてないだろうね!?俺を差し置いていやらしい事をされたら即言うんだよ!分かった!?」
俺を差し置いてとはどういう意味なのか、知りたいとも思わないけれども引っかかる。無気力に何もないよとだけ言うと、二人に向けて「入れば?」と告げた。
いつまで入口で変な事を言い合う気なのだろう。
リシェは至って普通のことを言ったつもりなのだが、頭がすっかり蒸発している状態のラスはさらに顔を真っ赤にする。
「そんな!先輩、入れるだなんて!もう、そんなに求められても!」
「何言ってるんだ…」
ロシュとの件以降、完全に舞い上がり続けている。今のラスには、何を言ってもいいようにしか聞こえてこないようだ。
しかも言葉を違う意味に捉えている模様。
スティレンはずるずるとラスを引きずって室内に入ると、そのまま床に放った。
「てか、こいつ本当に大丈夫なの?お前食われるんじゃないのこのままじゃ」
「いや、大丈夫だろう。俺が嫌がる事はしないってちゃんと言ったし…」
約束はちゃんと守ってくれる方だ、と思いたい。
余程嬉しかったのか、彼は蕩けそうな表情を見せながら床に座ってへらへらと笑顔を見せ続けていた。
「先輩」
「?」
ラスは座り込んだまま、リシェを見上げて声をかける。彼はいつもの無表情のままで返事をした。
彼はほわほわと夢心地に居るかのように宣言する。
「その時は絶対優しくしますから…!」
何を言い出すのか。
思いっきり嫌そうな表情をするリシェよりも先に、彼の従兄弟が先に出てくる。
「そんなのは絶対起きないから安心しな!!」
スティレンはラスに対しそう断言していた。
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