48 / 101
そのよんじゅうなな
毒吐き
しおりを挟む
どうしたら、最愛のリシェを手に入れる事が出来るのか。自宅の私室の中で、ロシュは延々とその事ばかり考えていた。
あれからというもの、警戒しているのか彼はこちらを見ると引き気味に様子を見たあとダッシュで逃げてしまうという元の世界では考えられない状況になっていた。
第一印象があまり良くなかったのかもしれない。
やはり保健室のあれがいけなかったのだろうか。さすがにいきなり指先をべろべろ舐めさせるのは人としてやってはいけなかったのかもしれない。
向こうの世界だと意外と乗り気だったと思うのだが。
「やっぱりこっち側では完全にリセットした赤の他人だもんなぁ…」
悶々としつつも、ロシュは頭を抱えてこの先のプランを考えていると、室内に呼び出し音が響いた。
「はぁい」
今出ますよと返事をして、インターフォンのカメラを確認しないまま玄関先に出る。なんの気なしにがちゃりと扉を開くと、涼しげな表情で「やあ」と来訪者が顔を見せた。
「………」
ロシュはそのまま無言で扉を閉めようとする。
しかし相手はすかさず爪先を扉の間に挟めると、何で閉めるんだいと困惑したような口調で言った。
「君はカメラで来客者の確認をしないのかい」
「…宅配かと思ったんですよ」
にこやかに相手は中に入り込んできた。
同僚の教師であるレナンシェは手土産を手にロシュの承諾もなく勝手に中へと進む。
「あなたも頼みもしないのに勝手に人の家の中にずかずか入ってくる癖はやめた方がいいですよ」
「何を今更。君と私との仲じゃないか」
「そんなに仲良くはないと思いますがねえ」
素っ気ない態度を取られるのにも、昔からの知り合いであるレナンシェは慣れているようでびくともしなかった。それ以前に、普通にキッチンに赴き勝手に持ってきた物を広げる始末。
はあ、とロシュは溜息を漏らす。
「君の為に美味しいワインを持ってきたんだ。一緒に飲もう。飲んだ勢いで私といちゃいちゃしよう」
「嫌です」
会話に組み込まれる意味深な言葉を、手慣れた様子でロシュは普通に拒否した。
腐れ縁の関係なので誘っては拒否されるというパターンがずっと続いている。
お互いどこまでが本気なのか分からないが、ロシュは即座に拒否をしている事からとにかく嫌なのだろう。
「何をしていたんだい」
「何って…計画を練っていたんですよ」
「計画?」
レナンシェは不思議そうな面持ちでロシュに問う。
「気になる子が居ましてね」
「へえ」
「その子をどうにか振り向かせたいと思っていたんですが、どうにも嫌われてしまったようで」
「君がそう言うならきっとその子は君が嫌いなんだろう」
話し始めているのにいきなり話の柱をばっきり折ってくるレナンシェに、ロシュは心底嫌そうな顔を見せた。
「オーギュスティンみたいな事を言いますね」
「私はその情熱をこちらに向けて欲しいから言ってるんだよロシュ。きっとその子は君が嫌いに違いない」
「………」
本人でもないのに何故そんな事を言い出すのか。
「たまには諦めも肝心だと思うよ。君のことだ、どうせ顔を合わせた瞬間いやらしい気持ち全開で指とかべろべろ舐めるレベルの最低最悪の変態的行為でもしでかしたんだろう。それはもう変質者を見るような目で見てしまうよ。だって君は変態だからね。長い付き合いの私には痛いほどよく分かるんだよ」
容赦無い相手の口撃を受け、地味にロシュは傷付いてしまう。何で指をべろべろ舐めさせた事を知っているのだろうか。
もしかして見ていたのだろうか。
「…レナンシェ」
「ん?何だい」
「そこまで把握していたんですか?」
苦しげに胸を押さえてロシュは問う。
一方のレナンシェは「いや」とだけ返した。
「いかにもやりそうな行動を適当に言っただけだ。もしかして君はその最悪な行為をしたのかい」
いかにもって。
その返答に、ロシュは更に凹んでしまった。
「まさかそれをやったのかい?君は本当にどうしようもない変態だね」
えらく軽い口調で言われるのが余計にきつかった。
追い討ちを更にかけられ、ロシュは撃沈してしまった。
あれからというもの、警戒しているのか彼はこちらを見ると引き気味に様子を見たあとダッシュで逃げてしまうという元の世界では考えられない状況になっていた。
第一印象があまり良くなかったのかもしれない。
やはり保健室のあれがいけなかったのだろうか。さすがにいきなり指先をべろべろ舐めさせるのは人としてやってはいけなかったのかもしれない。
向こうの世界だと意外と乗り気だったと思うのだが。
「やっぱりこっち側では完全にリセットした赤の他人だもんなぁ…」
悶々としつつも、ロシュは頭を抱えてこの先のプランを考えていると、室内に呼び出し音が響いた。
「はぁい」
今出ますよと返事をして、インターフォンのカメラを確認しないまま玄関先に出る。なんの気なしにがちゃりと扉を開くと、涼しげな表情で「やあ」と来訪者が顔を見せた。
「………」
ロシュはそのまま無言で扉を閉めようとする。
しかし相手はすかさず爪先を扉の間に挟めると、何で閉めるんだいと困惑したような口調で言った。
「君はカメラで来客者の確認をしないのかい」
「…宅配かと思ったんですよ」
にこやかに相手は中に入り込んできた。
同僚の教師であるレナンシェは手土産を手にロシュの承諾もなく勝手に中へと進む。
「あなたも頼みもしないのに勝手に人の家の中にずかずか入ってくる癖はやめた方がいいですよ」
「何を今更。君と私との仲じゃないか」
「そんなに仲良くはないと思いますがねえ」
素っ気ない態度を取られるのにも、昔からの知り合いであるレナンシェは慣れているようでびくともしなかった。それ以前に、普通にキッチンに赴き勝手に持ってきた物を広げる始末。
はあ、とロシュは溜息を漏らす。
「君の為に美味しいワインを持ってきたんだ。一緒に飲もう。飲んだ勢いで私といちゃいちゃしよう」
「嫌です」
会話に組み込まれる意味深な言葉を、手慣れた様子でロシュは普通に拒否した。
腐れ縁の関係なので誘っては拒否されるというパターンがずっと続いている。
お互いどこまでが本気なのか分からないが、ロシュは即座に拒否をしている事からとにかく嫌なのだろう。
「何をしていたんだい」
「何って…計画を練っていたんですよ」
「計画?」
レナンシェは不思議そうな面持ちでロシュに問う。
「気になる子が居ましてね」
「へえ」
「その子をどうにか振り向かせたいと思っていたんですが、どうにも嫌われてしまったようで」
「君がそう言うならきっとその子は君が嫌いなんだろう」
話し始めているのにいきなり話の柱をばっきり折ってくるレナンシェに、ロシュは心底嫌そうな顔を見せた。
「オーギュスティンみたいな事を言いますね」
「私はその情熱をこちらに向けて欲しいから言ってるんだよロシュ。きっとその子は君が嫌いに違いない」
「………」
本人でもないのに何故そんな事を言い出すのか。
「たまには諦めも肝心だと思うよ。君のことだ、どうせ顔を合わせた瞬間いやらしい気持ち全開で指とかべろべろ舐めるレベルの最低最悪の変態的行為でもしでかしたんだろう。それはもう変質者を見るような目で見てしまうよ。だって君は変態だからね。長い付き合いの私には痛いほどよく分かるんだよ」
容赦無い相手の口撃を受け、地味にロシュは傷付いてしまう。何で指をべろべろ舐めさせた事を知っているのだろうか。
もしかして見ていたのだろうか。
「…レナンシェ」
「ん?何だい」
「そこまで把握していたんですか?」
苦しげに胸を押さえてロシュは問う。
一方のレナンシェは「いや」とだけ返した。
「いかにもやりそうな行動を適当に言っただけだ。もしかして君はその最悪な行為をしたのかい」
いかにもって。
その返答に、ロシュは更に凹んでしまった。
「まさかそれをやったのかい?君は本当にどうしようもない変態だね」
えらく軽い口調で言われるのが余計にきつかった。
追い討ちを更にかけられ、ロシュは撃沈してしまった。
0
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
片桐くんはただの幼馴染
ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。
藤白侑希
バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。
右成夕陽
バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。
片桐秀司
バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。
佐伯浩平
こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる