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そのなな
やめておけ
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「大体お前は一学年上じゃないか!」
苛々しながらリシェは従兄弟に怒り出す。しかし怒鳴られた彼は何の問題も無いと言わんばかりに「別に不都合なんてないじゃない」と返していた。
同じクラスに連続で転入生というあまり類を見ない状況。
それも似たような系統の美少年となればかなりの注目の的となる。噂に上がる程の二人を見る為に、わざわざ休み時間に他のクラスの生徒らが教室を覗きに来ては、その外見の華やかさに感嘆の声を上げていた。
しかし彼らの会話に耳を傾ければ、その華やかさとはかけ離れた会話をしているのだ。
「どうせお前なんか友達らしい友達なんか出来やしないんだから、大人しく俺にくっついてりゃいいのさ」
「友達すら出来た事が無いお前が言える事か」
「はあ?お前なんかに俺の何が分かるってんだよ!」
お互いがお互いをボロクソに言い合う始末。
じゃれあっているように見えるが、真逆なのだ。
数十分の授業の合間の休み時間。その度にリシェの世話を焼くべく、従兄弟のスティレンは彼の席の前を陣取っていた。
他人の席なので相手はその間着席出来ない。
「あの…そこ、僕の席なんだけど」
…などと、遠慮がちに言われれば渾身の笑顔を見せながら「ごめんねっ★」と可愛らしく言って対応する。スティレンは自分の魅力を十分分かっていた。
そのふわふわした髪と頼り無さげな垂れ目、守ってやりたくなるような雰囲気を醸し出してくるせいで、騙される犠牲者も多数。
外見だけはいいので、そんな対応をされればその気は無くても反論出来なくなってしまう。
「えっとねぇ、悪いんだけどもうちょっと席貸して欲しいなぁ…」
「え!?あっ、ああ、はい!!」
上目遣い気味にお願いをすれば、大人しく去っていく。
ふっとスティレンは表情を戻し、チョロいねと呟き足を組んで座り直した。
「ま、俺の美しさには敵わないよね」
「性格が悪過ぎる」
「与えられた美貌を使う事の何が悪いってのさ」
「お前だけ一晩寝たら十年経過するようにして欲しい」
「…十日経ったら死ぬじゃない!!」
お前も十分性格が悪いよ!とリシェに怒鳴った。
休み時間の終了を告げてくる鐘の音が校舎内に響いた。スティレンは教室内の壁掛け時計を睨みながらもう終わり?と舌打ちする。
そして授業の準備をするリシェに目を向けると、「くれぐれも他の奴に色目を使うんじゃないよ」と忠告する。
先程のあれは色目を使う事に入らないのかと疑問に思いながら、リシェは彼を無視していた。生徒達はそれぞれの席に着き始め、元々の席の持ち主も戻ってくる。
席に着くと同時に、彼はリシェを振り返ると「あの」と声をかけてきた。
「?」
きょとんとするリシェ。
「す、スティレン君っていつもあんな感じなの?」
「あんなって?」
「ほら、その…可愛くて守ってあげたくなるような…」
「………」
完全に騙されているようだ。夢を見させてやるか、それとも目を覚まさせて現実を見せた方が彼の為になるのか。
リシェは困った顔で彼を見る。
どうやら騙されている事も知らずに惚れてしまう一歩手前のようだ。
「やめておけ」
「え!?」
結果、リシェは目を覚まさせる事にした。
「あれはあいつの常套手段だ。あの外見に騙されると痛い目に合うぞ。あれはああ見えてめちゃくちゃ性格が悪い。とにかく悪い。自分がこの世で一番美しいと思っているから、他の人間なんかその辺の空き缶程度にしか思ってない」
「えっ…!?えぇっ…」
「守ってやりたくなるだろうが、あいつは守ってやる以前にお前を踏み台にするぞ。関わったらお前が不幸になる。だからやめておけ」
無表情のままつらづらと忠告するリシェの話を周囲の生徒達も引き気味に聞いていた。
苛々しながらリシェは従兄弟に怒り出す。しかし怒鳴られた彼は何の問題も無いと言わんばかりに「別に不都合なんてないじゃない」と返していた。
同じクラスに連続で転入生というあまり類を見ない状況。
それも似たような系統の美少年となればかなりの注目の的となる。噂に上がる程の二人を見る為に、わざわざ休み時間に他のクラスの生徒らが教室を覗きに来ては、その外見の華やかさに感嘆の声を上げていた。
しかし彼らの会話に耳を傾ければ、その華やかさとはかけ離れた会話をしているのだ。
「どうせお前なんか友達らしい友達なんか出来やしないんだから、大人しく俺にくっついてりゃいいのさ」
「友達すら出来た事が無いお前が言える事か」
「はあ?お前なんかに俺の何が分かるってんだよ!」
お互いがお互いをボロクソに言い合う始末。
じゃれあっているように見えるが、真逆なのだ。
数十分の授業の合間の休み時間。その度にリシェの世話を焼くべく、従兄弟のスティレンは彼の席の前を陣取っていた。
他人の席なので相手はその間着席出来ない。
「あの…そこ、僕の席なんだけど」
…などと、遠慮がちに言われれば渾身の笑顔を見せながら「ごめんねっ★」と可愛らしく言って対応する。スティレンは自分の魅力を十分分かっていた。
そのふわふわした髪と頼り無さげな垂れ目、守ってやりたくなるような雰囲気を醸し出してくるせいで、騙される犠牲者も多数。
外見だけはいいので、そんな対応をされればその気は無くても反論出来なくなってしまう。
「えっとねぇ、悪いんだけどもうちょっと席貸して欲しいなぁ…」
「え!?あっ、ああ、はい!!」
上目遣い気味にお願いをすれば、大人しく去っていく。
ふっとスティレンは表情を戻し、チョロいねと呟き足を組んで座り直した。
「ま、俺の美しさには敵わないよね」
「性格が悪過ぎる」
「与えられた美貌を使う事の何が悪いってのさ」
「お前だけ一晩寝たら十年経過するようにして欲しい」
「…十日経ったら死ぬじゃない!!」
お前も十分性格が悪いよ!とリシェに怒鳴った。
休み時間の終了を告げてくる鐘の音が校舎内に響いた。スティレンは教室内の壁掛け時計を睨みながらもう終わり?と舌打ちする。
そして授業の準備をするリシェに目を向けると、「くれぐれも他の奴に色目を使うんじゃないよ」と忠告する。
先程のあれは色目を使う事に入らないのかと疑問に思いながら、リシェは彼を無視していた。生徒達はそれぞれの席に着き始め、元々の席の持ち主も戻ってくる。
席に着くと同時に、彼はリシェを振り返ると「あの」と声をかけてきた。
「?」
きょとんとするリシェ。
「す、スティレン君っていつもあんな感じなの?」
「あんなって?」
「ほら、その…可愛くて守ってあげたくなるような…」
「………」
完全に騙されているようだ。夢を見させてやるか、それとも目を覚まさせて現実を見せた方が彼の為になるのか。
リシェは困った顔で彼を見る。
どうやら騙されている事も知らずに惚れてしまう一歩手前のようだ。
「やめておけ」
「え!?」
結果、リシェは目を覚まさせる事にした。
「あれはあいつの常套手段だ。あの外見に騙されると痛い目に合うぞ。あれはああ見えてめちゃくちゃ性格が悪い。とにかく悪い。自分がこの世で一番美しいと思っているから、他の人間なんかその辺の空き缶程度にしか思ってない」
「えっ…!?えぇっ…」
「守ってやりたくなるだろうが、あいつは守ってやる以前にお前を踏み台にするぞ。関わったらお前が不幸になる。だからやめておけ」
無表情のままつらづらと忠告するリシェの話を周囲の生徒達も引き気味に聞いていた。
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