94 / 101
そのきゅうじゅうさん
どこでも自信満々
しおりを挟む
毎度のように放課後、校舎の屋上で何となく集まった三人。
ラスはわきわきと両手を動かしながらリシェに言い出した。
「さあ先輩」
またか、といつもの如くリシェは溜息を吐いた。
「どうせまたいちゃいちゃしたくなる周期とか言うんだろう、鬱陶しい」
どうやらすっかり慣れたらしく冷たくあしらう。それでもラスは完全に耐性がついたのか、ダメージを食らう事なくニコニコしながら手をわきわきさせる。
あーあ、とスティレンは退屈そうにぼやいた。
「あんたも良く飽きないね、こいつの態度見たら突き放されてる感半端無いのに」
諦め悪すぎない?と呆れる。
「そりゃあ」
ちらりとラスはリシェに目を向けた。彼は相変わらずのポーカーフェイスのまま、同級生から貰ったというスルメを食べている。
稀に彼は特に何もしていないのに善意で物を貰う時があった。
歯でなかなか千切れないせいか、ぐぬぬと唸りながら格闘する。
「…先輩」
…可愛い顔をしているのにスルメに噛り付くとか。
肩を落とし、ラスは彼に話しかけた。リシェはギリギリと固いイカのスルメを噛みながら相手を見上げる。
大きな瞳がラスの姿を映し出した。
「ん?」
「少しずつ小さく食べたらどうですか…じゃなくて。俺はいちゃいちゃしたくなる周期に入ってるんですよ」
「発情期か」
「ちっ…違います!動物みたいに言わないで下さいよ!」
何が違うのか、とスティレンは話を聞きながら思う。口を開ければリシェの事しか言わないくせに、と。
「てか、こいつの何が良い訳?根暗だし隠キャだし、生意気な事しか言わないし。目立つ長所なんて顔がいいだけじゃない」
あまりにもこき下ろすので、リシェはスルメを噛み切りもぐもぐと口を動かしながら「お前」と眉を顰める。
「俺に何か恨みでもあるのか?」
「恨みは別に無いけど何となくムカつくからそう言ってるだけ」
「何だよそれは!!」
スルメを噛み千切り、リシェは怒り出した。話がおかしげな方向に向かってしまうので、ラスはまぁまぁとひたすら宥める。怒るのか食べるのかどちらかにしてほしい。
それにしても何故スルメという渋い物を貰って来たのだろう。
「何で俺が先輩をって?もう何度もいってるよ。俺は元の世界の記憶を持っているからね。元の世界では先輩とは添い遂げられないから、こっちでは絶対結婚までこぎ着けてやるって思ってるんだよ」
繰り返し同じように説明するが、やはりスティレンにはまたかよと言わんばかりに「あっそう」とつれない返事をする。
「元の世界が何なのか知らないけどさ。あまり電波な事を言わない方がいいんじゃないの?変な奴だと思われちゃうよ?まぁ、変な奴なんけどさ」
頭のおかしい人間だと思われる事が心外で、ラスはやや不服そうに頰を膨らませた。
「スティレンはあっちと全然変わらないね」
「…はぁ?俺のように美しい人間なんて二人も居てたまるかっての」
「全く同じだよ…」
異論が無い程スティレンは変化が無い。
ここまで強烈な性格だと、これ以上変化のしようがないのだろう。ただ、違う世界線なのに変化のある所は著しく変化しているのに全く変わっていないのも珍しい気がする。
スティレンはふんと強気に鼻を鳴らすと、「まぁ」と一言。
「俺の美しさは次元を超越するからね。あんたの言うどの世界線だろうが、俺の素晴らしさは限界突破してるんだろうさ」
自意識過剰なスティレンの発言を、リシェはつまらなそうな顔をしながらスルメを噛みながら聞いていた。
しばらく自分を褒め称える言葉を聞いているのに飽きてきたのか、不意にリシェは口を開く。
よくここまで自分を褒められるものだとその前むきさが羨ましくもあるが、何にしろ程があるだろう。スティレンの場合は自分を過剰に褒め過ぎだと思う。
「ラス」
「はい。先輩」
「こいつはその別の方でもこんなんなのか?」
延々と自身たっぷりに話続けるスティレンを見ながら問う。
ラスはちらりとその本人に目を向けた後、苦笑しながら「そうですねえ」と返した。
「向こうでもこんな感じでしたよ」
リシェは残りのスルメを口に含み、がちがちと噛み締めながら「そうか」と納得した。
ラスはわきわきと両手を動かしながらリシェに言い出した。
「さあ先輩」
またか、といつもの如くリシェは溜息を吐いた。
「どうせまたいちゃいちゃしたくなる周期とか言うんだろう、鬱陶しい」
どうやらすっかり慣れたらしく冷たくあしらう。それでもラスは完全に耐性がついたのか、ダメージを食らう事なくニコニコしながら手をわきわきさせる。
あーあ、とスティレンは退屈そうにぼやいた。
「あんたも良く飽きないね、こいつの態度見たら突き放されてる感半端無いのに」
諦め悪すぎない?と呆れる。
「そりゃあ」
ちらりとラスはリシェに目を向けた。彼は相変わらずのポーカーフェイスのまま、同級生から貰ったというスルメを食べている。
稀に彼は特に何もしていないのに善意で物を貰う時があった。
歯でなかなか千切れないせいか、ぐぬぬと唸りながら格闘する。
「…先輩」
…可愛い顔をしているのにスルメに噛り付くとか。
肩を落とし、ラスは彼に話しかけた。リシェはギリギリと固いイカのスルメを噛みながら相手を見上げる。
大きな瞳がラスの姿を映し出した。
「ん?」
「少しずつ小さく食べたらどうですか…じゃなくて。俺はいちゃいちゃしたくなる周期に入ってるんですよ」
「発情期か」
「ちっ…違います!動物みたいに言わないで下さいよ!」
何が違うのか、とスティレンは話を聞きながら思う。口を開ければリシェの事しか言わないくせに、と。
「てか、こいつの何が良い訳?根暗だし隠キャだし、生意気な事しか言わないし。目立つ長所なんて顔がいいだけじゃない」
あまりにもこき下ろすので、リシェはスルメを噛み切りもぐもぐと口を動かしながら「お前」と眉を顰める。
「俺に何か恨みでもあるのか?」
「恨みは別に無いけど何となくムカつくからそう言ってるだけ」
「何だよそれは!!」
スルメを噛み千切り、リシェは怒り出した。話がおかしげな方向に向かってしまうので、ラスはまぁまぁとひたすら宥める。怒るのか食べるのかどちらかにしてほしい。
それにしても何故スルメという渋い物を貰って来たのだろう。
「何で俺が先輩をって?もう何度もいってるよ。俺は元の世界の記憶を持っているからね。元の世界では先輩とは添い遂げられないから、こっちでは絶対結婚までこぎ着けてやるって思ってるんだよ」
繰り返し同じように説明するが、やはりスティレンにはまたかよと言わんばかりに「あっそう」とつれない返事をする。
「元の世界が何なのか知らないけどさ。あまり電波な事を言わない方がいいんじゃないの?変な奴だと思われちゃうよ?まぁ、変な奴なんけどさ」
頭のおかしい人間だと思われる事が心外で、ラスはやや不服そうに頰を膨らませた。
「スティレンはあっちと全然変わらないね」
「…はぁ?俺のように美しい人間なんて二人も居てたまるかっての」
「全く同じだよ…」
異論が無い程スティレンは変化が無い。
ここまで強烈な性格だと、これ以上変化のしようがないのだろう。ただ、違う世界線なのに変化のある所は著しく変化しているのに全く変わっていないのも珍しい気がする。
スティレンはふんと強気に鼻を鳴らすと、「まぁ」と一言。
「俺の美しさは次元を超越するからね。あんたの言うどの世界線だろうが、俺の素晴らしさは限界突破してるんだろうさ」
自意識過剰なスティレンの発言を、リシェはつまらなそうな顔をしながらスルメを噛みながら聞いていた。
しばらく自分を褒め称える言葉を聞いているのに飽きてきたのか、不意にリシェは口を開く。
よくここまで自分を褒められるものだとその前むきさが羨ましくもあるが、何にしろ程があるだろう。スティレンの場合は自分を過剰に褒め過ぎだと思う。
「ラス」
「はい。先輩」
「こいつはその別の方でもこんなんなのか?」
延々と自身たっぷりに話続けるスティレンを見ながら問う。
ラスはちらりとその本人に目を向けた後、苦笑しながら「そうですねえ」と返した。
「向こうでもこんな感じでしたよ」
リシェは残りのスルメを口に含み、がちがちと噛み締めながら「そうか」と納得した。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
純白のレゾン
雨水林檎
BL
《日常系BL風味義理親子(もしくは兄弟)な物語》
この関係は出会った時からだと、数えてみればもう十年余。
親子のようにもしくは兄弟のようなささいな理由を含めて、少しの雑音を聴きながら今日も二人でただ生きています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

異世界学園の中の変な仲間たち3
ひしご
BL
司祭の国の変な仲間たち
https://www.alphapolis.co.jp/novel/791443323/775194431の番外編の3となっています。
本編を読まなくても大丈夫な中身です。
突発的に書いてるので不定期な更新。
前回までのは↓
https://www.alphapolis.co.jp/novel/791443323/347326197です。
中高一貫のアストレーゼン学園。 何故かいつものファンタジーな世界での記憶を持たずに全く色合いが違う世界に飛ばされたキャラクター達。
ただ、向こうの記憶を持ちながら飛ばされた者も居た。
司祭ロシュをこよなく愛する剣士リシェが、全くその記憶が無いまま異質な世界に飛ばされたのをいいことに、彼に憧れる後輩剣士のラスは自分はリシェの恋人だと嘘をつき必死にアピールする。
記憶が無いリシェを、ラスは落とす事が出来るだろうか。
それはもう一つの別の世界の、『アストレーゼン』の話。
元の世界では年上ながらも後輩剣士だったラスが、ひたすらいちゃいちゃと先輩剣士だったリシェを甘やかす話です。ちなみに本編ではラスは稀にしか出ません。
同じ内容でエブリスタでも更新しています。
表紙はヨネヤクモ様です(*´ω`*)
有難うございます!!
尚、画像の無断使用は一切お断りしております


男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる