異世界学園の中の変な仲間たち2

ひしご

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そのきゅうじゅうさん

どこでも自信満々

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 毎度のように放課後、校舎の屋上で何となく集まった三人。
 ラスはわきわきと両手を動かしながらリシェに言い出した。
「さあ先輩」
 またか、といつもの如くリシェは溜息を吐いた。
「どうせまたいちゃいちゃしたくなる周期とか言うんだろう、鬱陶しい」
 どうやらすっかり慣れたらしく冷たくあしらう。それでもラスは完全に耐性がついたのか、ダメージを食らう事なくニコニコしながら手をわきわきさせる。
 あーあ、とスティレンは退屈そうにぼやいた。
「あんたも良く飽きないね、こいつの態度見たら突き放されてる感半端無いのに」
 諦め悪すぎない?と呆れる。
「そりゃあ」
 ちらりとラスはリシェに目を向けた。彼は相変わらずのポーカーフェイスのまま、同級生から貰ったというスルメを食べている。
 稀に彼は特に何もしていないのに善意で物を貰う時があった。
 歯でなかなか千切れないせいか、ぐぬぬと唸りながら格闘する。
「…先輩」
 …可愛い顔をしているのにスルメに噛り付くとか。
 肩を落とし、ラスは彼に話しかけた。リシェはギリギリと固いイカのスルメを噛みながら相手を見上げる。
 大きな瞳がラスの姿を映し出した。
「ん?」
「少しずつ小さく食べたらどうですか…じゃなくて。俺はいちゃいちゃしたくなる周期に入ってるんですよ」
「発情期か」
「ちっ…違います!動物みたいに言わないで下さいよ!」
 何が違うのか、とスティレンは話を聞きながら思う。口を開ければリシェの事しか言わないくせに、と。
「てか、こいつの何が良い訳?根暗だし隠キャだし、生意気な事しか言わないし。目立つ長所なんて顔がいいだけじゃない」
 あまりにもこき下ろすので、リシェはスルメを噛み切りもぐもぐと口を動かしながら「お前」と眉を顰める。
「俺に何か恨みでもあるのか?」
「恨みは別に無いけど何となくムカつくからそう言ってるだけ」
「何だよそれは!!」
 スルメを噛み千切り、リシェは怒り出した。話がおかしげな方向に向かってしまうので、ラスはまぁまぁとひたすら宥める。怒るのか食べるのかどちらかにしてほしい。
 それにしても何故スルメという渋い物を貰って来たのだろう。
「何で俺が先輩をって?もう何度もいってるよ。俺は元の世界の記憶を持っているからね。元の世界では先輩とは添い遂げられないから、こっちでは絶対結婚までこぎ着けてやるって思ってるんだよ」
 繰り返し同じように説明するが、やはりスティレンにはまたかよと言わんばかりに「あっそう」とつれない返事をする。
「元の世界が何なのか知らないけどさ。あまり電波な事を言わない方がいいんじゃないの?変な奴だと思われちゃうよ?まぁ、変な奴なんけどさ」
 頭のおかしい人間だと思われる事が心外で、ラスはやや不服そうに頰を膨らませた。
「スティレンはあっちと全然変わらないね」
「…はぁ?俺のように美しい人間なんて二人も居てたまるかっての」
「全く同じだよ…」
 異論が無い程スティレンは変化が無い。
 ここまで強烈な性格だと、これ以上変化のしようがないのだろう。ただ、違う世界線なのに変化のある所は著しく変化しているのに全く変わっていないのも珍しい気がする。
 スティレンはふんと強気に鼻を鳴らすと、「まぁ」と一言。
「俺の美しさは次元を超越するからね。あんたの言うどの世界線だろうが、俺の素晴らしさは限界突破してるんだろうさ」
 自意識過剰なスティレンの発言を、リシェはつまらなそうな顔をしながらスルメを噛みながら聞いていた。
 しばらく自分を褒め称える言葉を聞いているのに飽きてきたのか、不意にリシェは口を開く。
 よくここまで自分を褒められるものだとその前むきさが羨ましくもあるが、何にしろ程があるだろう。スティレンの場合は自分を過剰に褒め過ぎだと思う。
「ラス」
「はい。先輩」
「こいつはその別の方でもこんなんなのか?」
 延々と自身たっぷりに話続けるスティレンを見ながら問う。
 ラスはちらりとその本人に目を向けた後、苦笑しながら「そうですねえ」と返した。
「向こうでもこんな感じでしたよ」
 リシェは残りのスルメを口に含み、がちがちと噛み締めながら「そうか」と納得した。
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