異世界学園の中の変な仲間たち2

ひしご

文字の大きさ
上 下
86 / 101
そのはちじゅうご

同類

しおりを挟む
 という訳で、とサキトはにこやかに笑った。
「少しの間、よろしくね★」
「最初にスティレンの部屋に行ったのか?」
 お茶を飲み切ったリシェは、顔見知りの部屋にうまく侵入出来た事でミッション成功とばかりに完全に寛ぐサキトに問う。
 質問を笑顔で返しながら、「勿論!」と言い放った。
「部屋には入れなかったけどね」
 そりゃそうだろう。これで入れたら逆にその執念が怖い。彼の場合、全く気にせずに強引にこじ開けそうな気もするが、その辺は自制心が残されていたようだ。
 ラスはリシェと一緒に寝る事が何より楽しみらしく、ひたすら含み笑いやら何かしら笑みを浮かべてくる。
「俺、やっぱり床で寝ようかな」
 リシェはそれに気付いてかぼそりと呟いた。
「ええっ!?」
 ラスは当然驚きの悲鳴を上げる。
「だって気持ち悪いし」
「な、何がですか!?」
 自覚が無いのかとリシェは冷め果てたようにラスに目を向けていた。
「お前が気持ち悪いんだよ」
「え!?な、何です!?」
 ラスは再び聞き返した。わざと聞こえないふりをしているのか、それとも知りたくないのか。リシェは舌打ちすると、更に大きな声で説明を繰り返した。
「お前が!!非常に!!気持ち悪い!!」
 めちゃくちゃ否定の声を受けてショックを受けるラス。
 サキトはそのやり取りを目にすると、椅子に座りながら大爆笑していた。
「んっふ!…あっはははは!凄い、めちゃくちゃ拒否られてるぅ!!かっ…可哀想っ、んっふ!!あははははは!!」
 そこまで笑わなくてもというレベルで大爆笑され、ラスは更に傷が深くなってしまった。
 しかもサキトもスティレンに拒否されている立場なのだ。
 笑いながら可哀想~!と言ってのける図太さ。おまけに言い方も、ただ可哀想、ではなく「か~わぁ~い~そ~ぉお~」というニュアンスで余計イラッとしてくる。
「そこまで笑わなくてもいいでしょ!それに何その言い方!絶対可哀想とか思ってないだろ!」
「はあっ、あはぁ…はぁー、面白…んっふ…」
「スティレンに拒否られてるあんたに笑われたくないよ!」
 笑い疲れ、呼吸を整えながらサキトは「僕が拒否されてるって?」とラスの言葉尻に反応する。
「違うの?めちゃくちゃ嫌がられてるように見えるけど!」
 まるで仕返しとばかりにラスは鼻を膨らませながら言った。
「ふん、馬鹿だね。僕はスティレンを苛めたくてたまらないんだよ。拒否されても突いてあげるのが愛情なのさ。君には分からないだろうけどねぇ…んふふ。ただ迫るだけだと面白くないだろう?僕は敢えてあの子の嫌がる事をするのが好きなの。例えば持ち物に僕の写真を挟み込むとか、ラブレターを仕込むとか…あの子に合いそうな下着を送るとか、クール便でタニシを届けるとか」
 うっとりとする美少年に対し、リシェはドン引きする。
「お前も気持ち悪いな」
 タニシの下りは意味不明過ぎる。
「絶対スティレンは喜ばないだろう」
 ラブレターや写真が出てくる度に、スティレンがブチ切れながら破り捨てているのはサキトは知る由も無い。
「それを承知で届けているんだよ。今は婚姻届を何枚も作っている最中さ。どんな顔をするか楽しみだなあ。ね、その瞬間を今度教えてよ。連絡先交換して?」
 恍惚とした顔のサキトは、リシェに迫りだした。
「え、嫌だ」
 やはり彼はすぐに拒否する。
 その為に連絡先交換などしたくない。
 そんなあとサキトは頬を膨らませると、今度はラスに目を向けた。
「ね、君は?連絡先教えてよ」
 散々笑った相手に言うのか、と呆れた。
「嫌だよ…」
 そんな悪趣味に付き合う為に連絡先の交換など御免だ。
 両者に拒否されたサキトは「何だよぉ」と膨れっ面になる。発言は変態なのに顔だけは無駄に可愛いのが妙に嫌味に見えてきた。
「同じレベルの変態なのに嫌がらないでよ!!何なのさ!?」
 …何なのさと言われても。
 しかも自分も変態だと自覚してるのか…とラスは脱力する。それに、自分はサキトみたいにアブノーマルなタイプではない。それは自信が持てる。
 一緒にしないでほしい。
「俺は変態じゃないし」
 一方で、リシェはしれっと一抜けする発言を放っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ
BL
『魅惑のプリンセス』というタイトルの乙女ゲームに転生した俺。転生したのはいいけど、悪役令嬢の双子の兄だった。

俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします

椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう! こうして俺は逃亡することに決めた。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

異世界学園の中の変な仲間たち3

ひしご
BL
司祭の国の変な仲間たち https://www.alphapolis.co.jp/novel/791443323/775194431の番外編の3となっています。 本編を読まなくても大丈夫な中身です。 突発的に書いてるので不定期な更新。 前回までのは↓ https://www.alphapolis.co.jp/novel/791443323/347326197です。 中高一貫のアストレーゼン学園。 何故かいつものファンタジーな世界での記憶を持たずに全く色合いが違う世界に飛ばされたキャラクター達。 ただ、向こうの記憶を持ちながら飛ばされた者も居た。 司祭ロシュをこよなく愛する剣士リシェが、全くその記憶が無いまま異質な世界に飛ばされたのをいいことに、彼に憧れる後輩剣士のラスは自分はリシェの恋人だと嘘をつき必死にアピールする。 記憶が無いリシェを、ラスは落とす事が出来るだろうか。 それはもう一つの別の世界の、『アストレーゼン』の話。 元の世界では年上ながらも後輩剣士だったラスが、ひたすらいちゃいちゃと先輩剣士だったリシェを甘やかす話です。ちなみに本編ではラスは稀にしか出ません。 同じ内容でエブリスタでも更新しています。 表紙はヨネヤクモ様です(*´ω`*) 有難うございます!! 尚、画像の無断使用は一切お断りしております

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

処理中です...