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そのはちじゅう
スティレン、吹っかける
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「だから、これで何回目なのさリシェ!!」
常に怒りっぽいスティレンは、自分の従兄弟に対して感情を剥き出しにしていた。リシェは口をぽかんと開きながら「ああ」と返すと、これもまた悪びれずに続ける。
「わざとじゃないんだ」
「わざとじゃないって!?一度ならまだいいけど二回目だよ、二回目!!何なの、目ぇ付いてるの!?」
彼が怒りを露わにするのは無理も無かった。
お気に入りの鏡をまた割られたのだ。これで二度目だった。
「また買ってやるから」
「買えばいいってもんじゃないんだよ、このデブ!!」
一度目もリシェは足でスティレンの手鏡を踏んで粉砕していた。そして今回もうっかり踏んで粉砕したのだ。
これは怒られても無理は無い。
「ちゃんと弁償するから」
「俺が集める物は高いんだよ!折角気に入ったのを見つけて手に入れたのにさ!何なの本当に!!お前わざとやってるだろ!?」
たかだか手鏡でやかましく言わないで欲しい。
リシェは自分が悪いのに、相手の怒りをかわしながら思った。
「ちゃんと買うから」
「腹立つなぁ!お前、絶対反省してないだろ!」
「代金払うから」
スティレンは「もう!」と言いながら自分の携帯電話で自分の気に入っていた手鏡を検索していく。
「言っておくけど、俺のはハイブランド物だからね!お前なんかに買えるかっての!!」
「鏡如きでそんなに金をかけるのか。同じだろうに」
百均でも良いくらいだ。どうせ同じ顔を見るのに、余計に金をかけてどうするのだろう。
スティレンが検索し終え、リシェに「ほら!」と突き出した。
リシェはひょっこりと画面を覗き込む。そして表情を暗くすると、違う!!と怒鳴る。
「お前、俺が割った鏡と全然違う物を出してるじゃないか!金額も馬鹿に高いし!!」
「弁償するならこれくらい出してよ!!」
「桁が違うだろうが!!吹っかけてくるな!!」
お互い怒鳴り合う美少年二人組。
「大体お前が俺の足元の着地点目掛けて鏡を落としてくるのが悪いのだ!何なんだお前は、当たり屋なのか!?俺に粉砕して欲しくて落としてるんじゃないのか!?」
リシェが言うように、何故か彼の鏡はリシェの足元にまるで滑り込むようにして落ちてきたのだ。躱しようがないタイミングで滑り込んでくるものだから、気付いた時は完全にバッキリと割れてしまうという結果になる。
スティレンの言い分と、リシェの言い分は完全に違いを見せていた。それを聞くなり、スティレンは顔を真っ赤にして「何だって!?」と言った。
「割ったのは事実だろうが!」
「そんなに割れて困るなら首にでもかけておけ!!」
リシェは画面を見ながら金額の桁を数えていく。
「お前の手鏡、こんな金額じゃないだろう!」
「は?」
「学生で買える金額じゃないぞ!何なんだ、二十万とか!そんな金どこから持ってくるんだよ、陰で美人局とかやってるんじゃないだろうな!?」
可愛らしい顔からとんでもない発言が飛び出してきた。
「そんな訳ないだろ!?」
「そもそも割れた鏡は一体いくらしたと思ってるんだ!俺が弁償した物だろう!」
前回割れた際にもリシェはちゃんと弁償したのだ。
「そういえばそうだったけど!?」
忘れてるんじゃないか、と呆れる。
「お前、俺と一緒に自分で買いに行って忘れてるじゃないか」
「………」
怒りに任せて言い出したが、スティレンは前回リシェと一緒に買いに行き、気に入った物を見つけて買って貰ったというのを、頭からすっかり抜けていたようだった。
「そうだったっけ?」
「何で忘れるんだよ!割れた鏡なんて、普通に売ってたじゃないか、百均で!!」
鋭すぎるツッコミを受けたスティレンは、しばらく思考を停止させ考え込んでしまう。
「…そうだっけ?」
「都合が悪くなったら忘れる癖をやめろ!!というか、安い鏡を弁償させようとして高い鏡を買えと吹っかけてくるとか、どれだけ性格が悪いんだ!」
ぷりぷりと怒りながら訴えるリシェに向き合いながら、スティレンは照れたように「ごっめ★」と変な謝り方をしてきた。
てへっ、と舌を出しながら。
変に似合うのがまたリシェには苛立つ要因になる。
「その腹の立つ謝り方やめろ!!」
結局安い鏡でも満足するじゃないか。
あまりにもズル過ぎる相手に対し、呆れて物が言えなくなっていた。
常に怒りっぽいスティレンは、自分の従兄弟に対して感情を剥き出しにしていた。リシェは口をぽかんと開きながら「ああ」と返すと、これもまた悪びれずに続ける。
「わざとじゃないんだ」
「わざとじゃないって!?一度ならまだいいけど二回目だよ、二回目!!何なの、目ぇ付いてるの!?」
彼が怒りを露わにするのは無理も無かった。
お気に入りの鏡をまた割られたのだ。これで二度目だった。
「また買ってやるから」
「買えばいいってもんじゃないんだよ、このデブ!!」
一度目もリシェは足でスティレンの手鏡を踏んで粉砕していた。そして今回もうっかり踏んで粉砕したのだ。
これは怒られても無理は無い。
「ちゃんと弁償するから」
「俺が集める物は高いんだよ!折角気に入ったのを見つけて手に入れたのにさ!何なの本当に!!お前わざとやってるだろ!?」
たかだか手鏡でやかましく言わないで欲しい。
リシェは自分が悪いのに、相手の怒りをかわしながら思った。
「ちゃんと買うから」
「腹立つなぁ!お前、絶対反省してないだろ!」
「代金払うから」
スティレンは「もう!」と言いながら自分の携帯電話で自分の気に入っていた手鏡を検索していく。
「言っておくけど、俺のはハイブランド物だからね!お前なんかに買えるかっての!!」
「鏡如きでそんなに金をかけるのか。同じだろうに」
百均でも良いくらいだ。どうせ同じ顔を見るのに、余計に金をかけてどうするのだろう。
スティレンが検索し終え、リシェに「ほら!」と突き出した。
リシェはひょっこりと画面を覗き込む。そして表情を暗くすると、違う!!と怒鳴る。
「お前、俺が割った鏡と全然違う物を出してるじゃないか!金額も馬鹿に高いし!!」
「弁償するならこれくらい出してよ!!」
「桁が違うだろうが!!吹っかけてくるな!!」
お互い怒鳴り合う美少年二人組。
「大体お前が俺の足元の着地点目掛けて鏡を落としてくるのが悪いのだ!何なんだお前は、当たり屋なのか!?俺に粉砕して欲しくて落としてるんじゃないのか!?」
リシェが言うように、何故か彼の鏡はリシェの足元にまるで滑り込むようにして落ちてきたのだ。躱しようがないタイミングで滑り込んでくるものだから、気付いた時は完全にバッキリと割れてしまうという結果になる。
スティレンの言い分と、リシェの言い分は完全に違いを見せていた。それを聞くなり、スティレンは顔を真っ赤にして「何だって!?」と言った。
「割ったのは事実だろうが!」
「そんなに割れて困るなら首にでもかけておけ!!」
リシェは画面を見ながら金額の桁を数えていく。
「お前の手鏡、こんな金額じゃないだろう!」
「は?」
「学生で買える金額じゃないぞ!何なんだ、二十万とか!そんな金どこから持ってくるんだよ、陰で美人局とかやってるんじゃないだろうな!?」
可愛らしい顔からとんでもない発言が飛び出してきた。
「そんな訳ないだろ!?」
「そもそも割れた鏡は一体いくらしたと思ってるんだ!俺が弁償した物だろう!」
前回割れた際にもリシェはちゃんと弁償したのだ。
「そういえばそうだったけど!?」
忘れてるんじゃないか、と呆れる。
「お前、俺と一緒に自分で買いに行って忘れてるじゃないか」
「………」
怒りに任せて言い出したが、スティレンは前回リシェと一緒に買いに行き、気に入った物を見つけて買って貰ったというのを、頭からすっかり抜けていたようだった。
「そうだったっけ?」
「何で忘れるんだよ!割れた鏡なんて、普通に売ってたじゃないか、百均で!!」
鋭すぎるツッコミを受けたスティレンは、しばらく思考を停止させ考え込んでしまう。
「…そうだっけ?」
「都合が悪くなったら忘れる癖をやめろ!!というか、安い鏡を弁償させようとして高い鏡を買えと吹っかけてくるとか、どれだけ性格が悪いんだ!」
ぷりぷりと怒りながら訴えるリシェに向き合いながら、スティレンは照れたように「ごっめ★」と変な謝り方をしてきた。
てへっ、と舌を出しながら。
変に似合うのがまたリシェには苛立つ要因になる。
「その腹の立つ謝り方やめろ!!」
結局安い鏡でも満足するじゃないか。
あまりにもズル過ぎる相手に対し、呆れて物が言えなくなっていた。
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