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そのななじゅうはち
裏では大変仲が良い
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「最近はどうなの、同居人君とノーチェのゲーム内の仲は?」
ゲーム内においてのリシェとノーチェの関係を知らされている同級生のキリルは、ラスが一人で居る機会を見計って質問してきた。
ラスは「今の所は大丈夫っぽい」と安心の表情を見せる。
「ゲームの中だと物凄くいい関係なんだよ。話を聞く限りでは協力プレイとかしてるみたいだし、話も良くしてるし。俺が聞かなくても先輩から話してくれるし」
へえ、と相槌を打つ。
本当に変なものだ。
ラスがノーチェと同居の解消をして以来、その元凶であるリシェをとにかく嫌っていたのに。神様が遊んでいるのではないかと思わずにはいられない。
ネットのゲーム内ではお互いがお互いを知らないまま、常に仲良く遊んでいるだなんて。
「ここまで正体が分からないとか、あんたの同居人はともかくノーチェはめちゃくちゃ鈍いんじゃないのか?だってキャラクター名だってまんまなんだろ?」
確かに。
お互い現実の事も織り交ぜて毎度会話しているはずなのだが、リシェの場合は自分の名前をそのままゲーム内の名前として使っているのだ。良くノーチェは気が付かないものだと思う。
何でだろうね…とぼんやり空を仰いだ。
「ほんと、何で気付かないんだろう」
不思議そうな顔で二人で考えていると、忙しない様子で「ちょっと聞いてよ!!」と噂の本人が教室内に入ってきた。
ノーチェは怒りに顔を任せながら「あのガキ!」と一方的に話をしだす。今度は何に対して怒っているのだろう。
「どうしたー?」
呑気なキリルの言葉に、ノーチェは顔を真っ赤にして話を始めた。
「俺が売店で飲み物買ってる時にあのリシェが居たんだけどさ!!生意気にも同じ物に手を出してきたんだよ!」
「へえ」
「普通さ!?普通はだよ!?先輩に対してお先にどうぞって言わない!?なのにあのガキ、しれっとして先に取りやがってさあ!」
別にいいじゃないか…と二人は思ったが、彼はそれが許せなかったらしい。相手がリシェだから、なのかもしれないが。
プンスカと怒りながら彼は「ほんとあり得ない!」と鼻息を荒げている。
「俺、ムカついてあいつに言ったんだよ。普通は譲るだろって。ラス一だったんだよ?残り一本だけだったのにしれっと持っていくか普通!?どんだけ意地汚いのって話だよ!」
残り一本だった飲み物を先に持っていかれた、と言いたかったようだ。この二人は波長が良く合うらしく、食べ物や飲み物の好みが一致してしまう様子。
つい苦笑いをするラス。
ノーチェは笑い事じゃないよ!と怒った。
「そもそもラスと一緒の部屋だから、先輩に対しての礼儀っていうのがなってないんだよ。行く先々で俺を似たような物とか同じ物を選びやがって!」
「むしろ趣味系統が同じようなもんじゃないの…」
「冗談じゃないよ!!」
ここまで毛嫌いしているのに、ゲームの中ではお互いに普通に会話しているのが不思議だ。
「ラス、あのガキに言っといてよ、少しは譲歩っていうのを学んでおけってさ!スカした顔して普通に持って行きやがって!」
「言ってもいいけど、あの人には全く聞かないと思うよ…基本的にそこまで考えてないだろうし」
はぁっ、と苛々しながら溜息を漏らすノーチェ。
「良くあいつと付き合ってられるよ、ほんと」
ラスとキリルはその言葉を聞いた瞬間、微妙な顔を見せていた。
その夜。
ゲームをしていたリシェは突然「うわー!!やったあああ」と珍しく喜びの声を上げる。
びくっと体を反応させながらラスは何ですか!?と驚く。
「赤フンが俺が欲しかったアイテムをくれた!」
「そ、そうですか…良かったですね、先輩」
上機嫌のリシェは画面を見ながら、どうしようと嬉しそうに笑う。何かお返ししなきゃ、と交換するアイテムを選んでいるようだ。
ゲーム内ではとにかく関係が良好な様子。
「赤フンはいい奴だな。赤フンが欲しいアイテムがあれば交換してやろう」
リシェの言葉に、赤フンの正体を知っているラスは複雑な気持ちで「そうですね…」とだけ返していた。
ゲーム内においてのリシェとノーチェの関係を知らされている同級生のキリルは、ラスが一人で居る機会を見計って質問してきた。
ラスは「今の所は大丈夫っぽい」と安心の表情を見せる。
「ゲームの中だと物凄くいい関係なんだよ。話を聞く限りでは協力プレイとかしてるみたいだし、話も良くしてるし。俺が聞かなくても先輩から話してくれるし」
へえ、と相槌を打つ。
本当に変なものだ。
ラスがノーチェと同居の解消をして以来、その元凶であるリシェをとにかく嫌っていたのに。神様が遊んでいるのではないかと思わずにはいられない。
ネットのゲーム内ではお互いがお互いを知らないまま、常に仲良く遊んでいるだなんて。
「ここまで正体が分からないとか、あんたの同居人はともかくノーチェはめちゃくちゃ鈍いんじゃないのか?だってキャラクター名だってまんまなんだろ?」
確かに。
お互い現実の事も織り交ぜて毎度会話しているはずなのだが、リシェの場合は自分の名前をそのままゲーム内の名前として使っているのだ。良くノーチェは気が付かないものだと思う。
何でだろうね…とぼんやり空を仰いだ。
「ほんと、何で気付かないんだろう」
不思議そうな顔で二人で考えていると、忙しない様子で「ちょっと聞いてよ!!」と噂の本人が教室内に入ってきた。
ノーチェは怒りに顔を任せながら「あのガキ!」と一方的に話をしだす。今度は何に対して怒っているのだろう。
「どうしたー?」
呑気なキリルの言葉に、ノーチェは顔を真っ赤にして話を始めた。
「俺が売店で飲み物買ってる時にあのリシェが居たんだけどさ!!生意気にも同じ物に手を出してきたんだよ!」
「へえ」
「普通さ!?普通はだよ!?先輩に対してお先にどうぞって言わない!?なのにあのガキ、しれっとして先に取りやがってさあ!」
別にいいじゃないか…と二人は思ったが、彼はそれが許せなかったらしい。相手がリシェだから、なのかもしれないが。
プンスカと怒りながら彼は「ほんとあり得ない!」と鼻息を荒げている。
「俺、ムカついてあいつに言ったんだよ。普通は譲るだろって。ラス一だったんだよ?残り一本だけだったのにしれっと持っていくか普通!?どんだけ意地汚いのって話だよ!」
残り一本だった飲み物を先に持っていかれた、と言いたかったようだ。この二人は波長が良く合うらしく、食べ物や飲み物の好みが一致してしまう様子。
つい苦笑いをするラス。
ノーチェは笑い事じゃないよ!と怒った。
「そもそもラスと一緒の部屋だから、先輩に対しての礼儀っていうのがなってないんだよ。行く先々で俺を似たような物とか同じ物を選びやがって!」
「むしろ趣味系統が同じようなもんじゃないの…」
「冗談じゃないよ!!」
ここまで毛嫌いしているのに、ゲームの中ではお互いに普通に会話しているのが不思議だ。
「ラス、あのガキに言っといてよ、少しは譲歩っていうのを学んでおけってさ!スカした顔して普通に持って行きやがって!」
「言ってもいいけど、あの人には全く聞かないと思うよ…基本的にそこまで考えてないだろうし」
はぁっ、と苛々しながら溜息を漏らすノーチェ。
「良くあいつと付き合ってられるよ、ほんと」
ラスとキリルはその言葉を聞いた瞬間、微妙な顔を見せていた。
その夜。
ゲームをしていたリシェは突然「うわー!!やったあああ」と珍しく喜びの声を上げる。
びくっと体を反応させながらラスは何ですか!?と驚く。
「赤フンが俺が欲しかったアイテムをくれた!」
「そ、そうですか…良かったですね、先輩」
上機嫌のリシェは画面を見ながら、どうしようと嬉しそうに笑う。何かお返ししなきゃ、と交換するアイテムを選んでいるようだ。
ゲーム内ではとにかく関係が良好な様子。
「赤フンはいい奴だな。赤フンが欲しいアイテムがあれば交換してやろう」
リシェの言葉に、赤フンの正体を知っているラスは複雑な気持ちで「そうですね…」とだけ返していた。
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