上 下
79 / 101
そのななじゅうはち

裏では大変仲が良い

しおりを挟む
「最近はどうなの、同居人君とノーチェのゲーム内の仲は?」
 ゲーム内においてのリシェとノーチェの関係を知らされている同級生のキリルは、ラスが一人で居る機会を見計って質問してきた。
 ラスは「今の所は大丈夫っぽい」と安心の表情を見せる。
「ゲームの中だと物凄くいい関係なんだよ。話を聞く限りでは協力プレイとかしてるみたいだし、話も良くしてるし。俺が聞かなくても先輩から話してくれるし」
 へえ、と相槌を打つ。
 本当に変なものだ。
 ラスがノーチェと同居の解消をして以来、その元凶であるリシェをとにかく嫌っていたのに。神様が遊んでいるのではないかと思わずにはいられない。
 ネットのゲーム内ではお互いがお互いを知らないまま、常に仲良く遊んでいるだなんて。
「ここまで正体が分からないとか、あんたの同居人はともかくノーチェはめちゃくちゃ鈍いんじゃないのか?だってキャラクター名だってまんまなんだろ?」
 確かに。
 お互い現実の事も織り交ぜて毎度会話しているはずなのだが、リシェの場合は自分の名前をそのままゲーム内の名前として使っているのだ。良くノーチェは気が付かないものだと思う。
 何でだろうね…とぼんやり空を仰いだ。
「ほんと、何で気付かないんだろう」
 不思議そうな顔で二人で考えていると、忙しない様子で「ちょっと聞いてよ!!」と噂の本人が教室内に入ってきた。
 ノーチェは怒りに顔を任せながら「あのガキ!」と一方的に話をしだす。今度は何に対して怒っているのだろう。
「どうしたー?」
 呑気なキリルの言葉に、ノーチェは顔を真っ赤にして話を始めた。
「俺が売店で飲み物買ってる時にあのリシェが居たんだけどさ!!生意気にも同じ物に手を出してきたんだよ!」
「へえ」
「普通さ!?普通はだよ!?先輩に対してお先にどうぞって言わない!?なのにあのガキ、しれっとして先に取りやがってさあ!」
 別にいいじゃないか…と二人は思ったが、彼はそれが許せなかったらしい。相手がリシェだから、なのかもしれないが。
 プンスカと怒りながら彼は「ほんとあり得ない!」と鼻息を荒げている。
「俺、ムカついてあいつに言ったんだよ。普通は譲るだろって。ラス一だったんだよ?残り一本だけだったのにしれっと持っていくか普通!?どんだけ意地汚いのって話だよ!」
 残り一本だった飲み物を先に持っていかれた、と言いたかったようだ。この二人は波長が良く合うらしく、食べ物や飲み物の好みが一致してしまう様子。
 つい苦笑いをするラス。
 ノーチェは笑い事じゃないよ!と怒った。
「そもそもラスと一緒の部屋だから、先輩に対しての礼儀っていうのがなってないんだよ。行く先々で俺を似たような物とか同じ物を選びやがって!」
「むしろ趣味系統が同じようなもんじゃないの…」
「冗談じゃないよ!!」
 ここまで毛嫌いしているのに、ゲームの中ではお互いに普通に会話しているのが不思議だ。
「ラス、あのガキに言っといてよ、少しは譲歩っていうのを学んでおけってさ!スカした顔して普通に持って行きやがって!」
「言ってもいいけど、あの人には全く聞かないと思うよ…基本的にそこまで考えてないだろうし」
 はぁっ、と苛々しながら溜息を漏らすノーチェ。
「良くあいつと付き合ってられるよ、ほんと」
 ラスとキリルはその言葉を聞いた瞬間、微妙な顔を見せていた。

 その夜。
 ゲームをしていたリシェは突然「うわー!!やったあああ」と珍しく喜びの声を上げる。
 びくっと体を反応させながらラスは何ですか!?と驚く。
「赤フンが俺が欲しかったアイテムをくれた!」
「そ、そうですか…良かったですね、先輩」
 上機嫌のリシェは画面を見ながら、どうしようと嬉しそうに笑う。何かお返ししなきゃ、と交換するアイテムを選んでいるようだ。
 ゲーム内ではとにかく関係が良好な様子。
「赤フンはいい奴だな。赤フンが欲しいアイテムがあれば交換してやろう」
 リシェの言葉に、赤フンの正体を知っているラスは複雑な気持ちで「そうですね…」とだけ返していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・不定期

異世界学園の中の変な仲間たち3

ひしご
BL
司祭の国の変な仲間たち https://www.alphapolis.co.jp/novel/791443323/775194431の番外編の3となっています。 本編を読まなくても大丈夫な中身です。 突発的に書いてるので不定期な更新。 前回までのは↓ https://www.alphapolis.co.jp/novel/791443323/347326197です。 中高一貫のアストレーゼン学園。 何故かいつものファンタジーな世界での記憶を持たずに全く色合いが違う世界に飛ばされたキャラクター達。 ただ、向こうの記憶を持ちながら飛ばされた者も居た。 司祭ロシュをこよなく愛する剣士リシェが、全くその記憶が無いまま異質な世界に飛ばされたのをいいことに、彼に憧れる後輩剣士のラスは自分はリシェの恋人だと嘘をつき必死にアピールする。 記憶が無いリシェを、ラスは落とす事が出来るだろうか。 それはもう一つの別の世界の、『アストレーゼン』の話。 元の世界では年上ながらも後輩剣士だったラスが、ひたすらいちゃいちゃと先輩剣士だったリシェを甘やかす話です。ちなみに本編ではラスは稀にしか出ません。 同じ内容でエブリスタでも更新しています。 表紙はヨネヤクモ様です(*´ω`*) 有難うございます!! 尚、画像の無断使用は一切お断りしております

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

処理中です...