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そのななじゅうろく
【手ごね】悪い表情【マッサージ】
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いつ大好きなリシェに変な輩が寄り付いてくるか分からないので、いっその事彼の携帯電話にGPSでも付けてやろうかとイガイガしながら呟いていると、リシェは「お前には必要ないだろう!」と怒り出す。
ラスは「へ!?」と隣にいるリシェを見下ろした。
「実際普通に嗅ぎつけて来たじゃないか!」
誰も居ない場所に居ても、自分が居た場所を把握してすぐにやって来たのが地味にショックだった。ドン引きどころか壮絶に引いてしまったのだ。こいつはどうしていつもくっついてくるのだろう。
むしろ気持ち悪いし恐怖ですらある。
「何で場所が分かったんだ…」
「それですか?俺、ちょうど二階に居たんですよ」
そう言われ、リシェはふっと上の階を見上げる。ちょうどここから上は二年生の教室が立ち並ぶ位置。そこで、ようやく「あ」と理解した。
要するにここから話し声を聞きつけた、という事か。
「この上、俺のクラスに近いんです」
「………」
なるほど、と納得する。同時に妙に安心してしまう。
こいつがそこまで気持ち悪い奴じゃなくて良かった、と。
「先輩のピンチは必ず駆けつけてあげないと。ほら、俺って先輩の王子様じゃないですか。だから困った場面にはいち早く反応しないと」
「…俺は別にピンチを感じてはいなかったけどな」
確かに困ってはいたが。
ラスは得意げに鼻を膨らませながら「ほらぁ」とドヤる。
「先輩を悪い人々から守り抜くのが王子様である俺の役割なんですよ!外見的に先輩はぽやぽやしてるイメージがあるから…」
頼みもしていないのに勝手に話を作ろうとするラスに対し、リシェはハッと馬鹿にしたように鼻で笑った。
「王子様だと?」
その笑い方が妙に馬鹿にしているような様子で、ラスは「先輩!!」と悲痛な叫びを上げる。
「何?」
リシェはそこから全く表情を変えずにラスに反応する。
「その心底馬鹿にしたような顔やめて下さい!!何か傷付きます!!何て言うの、そのハッとしためちゃくちゃ見下してるような表情!!先輩らしくもない!!」
余程精神的に応えるのだろう。めちゃくちゃ馬鹿にしたような嘲笑の表情なのだ。
しかしリシェはそのままの様子で「そうか?」と問う。
「可愛いのに!そんな顔しちゃうなんて勿体無い!!」
嘆くラス。
「お前が変な事を言うたびにこの顔にしてやろうか」
リシェは妙に気に入ってしまったらしく、心底馬鹿にしたその表情をキープし続けている。
「ずっとその顔にしてると癖が付きますよ!!その可愛い顔が台無しになりますよ!?いいんですか先輩!?」
癖になる、という必死なラスの叫びにリシェはスッと元の無表情に戻った。
そして「確かに」と理解する。
「そうですよ…ああ、先輩。癖が付かないようにマッサージしてあげますからね」
「いらな…」
「ダメです!さっきの悪い表情を忘れる位にこねてあげないと!」
ラスの両手がリシェの左右両方の頰を包み、優しくこね始める。
「………」
ぐにょりぐにょりとマッサージを受けながら、リシェは自分が粘土になった気分に陥っていた。
ラスは「へ!?」と隣にいるリシェを見下ろした。
「実際普通に嗅ぎつけて来たじゃないか!」
誰も居ない場所に居ても、自分が居た場所を把握してすぐにやって来たのが地味にショックだった。ドン引きどころか壮絶に引いてしまったのだ。こいつはどうしていつもくっついてくるのだろう。
むしろ気持ち悪いし恐怖ですらある。
「何で場所が分かったんだ…」
「それですか?俺、ちょうど二階に居たんですよ」
そう言われ、リシェはふっと上の階を見上げる。ちょうどここから上は二年生の教室が立ち並ぶ位置。そこで、ようやく「あ」と理解した。
要するにここから話し声を聞きつけた、という事か。
「この上、俺のクラスに近いんです」
「………」
なるほど、と納得する。同時に妙に安心してしまう。
こいつがそこまで気持ち悪い奴じゃなくて良かった、と。
「先輩のピンチは必ず駆けつけてあげないと。ほら、俺って先輩の王子様じゃないですか。だから困った場面にはいち早く反応しないと」
「…俺は別にピンチを感じてはいなかったけどな」
確かに困ってはいたが。
ラスは得意げに鼻を膨らませながら「ほらぁ」とドヤる。
「先輩を悪い人々から守り抜くのが王子様である俺の役割なんですよ!外見的に先輩はぽやぽやしてるイメージがあるから…」
頼みもしていないのに勝手に話を作ろうとするラスに対し、リシェはハッと馬鹿にしたように鼻で笑った。
「王子様だと?」
その笑い方が妙に馬鹿にしているような様子で、ラスは「先輩!!」と悲痛な叫びを上げる。
「何?」
リシェはそこから全く表情を変えずにラスに反応する。
「その心底馬鹿にしたような顔やめて下さい!!何か傷付きます!!何て言うの、そのハッとしためちゃくちゃ見下してるような表情!!先輩らしくもない!!」
余程精神的に応えるのだろう。めちゃくちゃ馬鹿にしたような嘲笑の表情なのだ。
しかしリシェはそのままの様子で「そうか?」と問う。
「可愛いのに!そんな顔しちゃうなんて勿体無い!!」
嘆くラス。
「お前が変な事を言うたびにこの顔にしてやろうか」
リシェは妙に気に入ってしまったらしく、心底馬鹿にしたその表情をキープし続けている。
「ずっとその顔にしてると癖が付きますよ!!その可愛い顔が台無しになりますよ!?いいんですか先輩!?」
癖になる、という必死なラスの叫びにリシェはスッと元の無表情に戻った。
そして「確かに」と理解する。
「そうですよ…ああ、先輩。癖が付かないようにマッサージしてあげますからね」
「いらな…」
「ダメです!さっきの悪い表情を忘れる位にこねてあげないと!」
ラスの両手がリシェの左右両方の頰を包み、優しくこね始める。
「………」
ぐにょりぐにょりとマッサージを受けながら、リシェは自分が粘土になった気分に陥っていた。
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