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そのななじゅうに
スティレン不足のサキト様は妄想で興奮する
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ああ、スティレンの居ない毎日は何て退屈なんだろう。
そう呟き、甘すぎるマスクを切なげな表情を浮かべて、シャンクレイス学院のサキトは溜息を吐いた。
生徒会室は相変わらず清潔感の漂う白で統一されている。外観はもとより校舎内もとにかく真っ白で、お伽話に出てくるお城を思わせる造りになっている。
今日はこれで百五十九回の溜息だ。
彼のボディーガードであるクロスレイは、内心少しばかりやきもちを妬きながら余程スティレンが好きなのだなと思っていた。
「サキト様」
「んー?なあに、クロスレイ」
「そこまで退屈なら、いっそサキト様もアストレーゼン学園に転校されたらどうでしょう」
一番いい案だと思うのだ。
彼も同じ学校に行けば、毎日退屈しなくても済む。彼の為に考えた提案だが、サキトは「バカだねぇ」とぶった斬った。
「このシャンクレイス学院はほとんどの資金を僕の家から出しているのだよ。関係者たる僕が別の学校に転校だなんて出来る訳ないじゃないか。むしろ向こうがここを出て行く理由なんて無いはずなのにさ」
「はあ」
確かに。それならば、サキトが出て行くのはおかしい話だ。自分は浅はかな考えだったとクロスレイは反省した。
「それなのにどうして彼はアストレーゼンの方に行ったのでしょう?…サキト様が折角ご好意を示しているのに、勿体ない」
「全くだよ。僕の愛情表現が足りなかったのかな」
色々してあげられたのに、と彼は爪を軽く噛みながら呟く。
「愛情表現…」
「そう、愛情表現。僕はね、スティレンの為なら何でもするつもりだったのさ。めちゃくちゃ可愛がってあげたいのにあの子ったらすぐ逃げちゃうし…向こうに行っちゃったらそれもしてあげられないじゃない。つまんない」
温くなってきた紅茶を口にした後、クロスレイに熱いのを入れてと命じる。いそいそとそれに従う巨体のボディーガード。
香り立つ茶葉の匂いに包まれ、クロスレイはサキトに「ちなみに」と質問した。
「サキト様、スティレンさんに何をされたんですか?」
「ん?」
「学院内の生徒間の事は把握してませんので、サキト様のスティレンさんに対するスキンシップというか…余程お気に入りだった様でしたから」
クロスレイから新しい紅茶が入ったカップを受け取ると、サキトは小さな唇に笑みを称えて「色々やってきたよぉ」と呟いた。
「あの子の私物に僕の写真を忍ばせたり、体操着を僕のと交換してみたり…なかなか心を開いてくれなかったからね」
「はあ」
「あとはそうだねぇ、顔を合わせるたびに抱き着いてみたり」
「………」
何だかおかしいなとクロスレイは思った。
まるで普通の事のようにサキトは言ってのけるが、それはもう嫌がらせの範疇を超えているのではないだろうかと。
色々思い出してきたのか、サキトはその際のスティレンの反応を思い浮かべ恍惚とした表情に変化していく。
「僕ねぇ、スティレンが顔を真っ赤にして嫌がる顔が好きなの」
「はあ…」
「見るだけでこう、何て言うか…体が火照ってきちゃう。不思議と苛めたくなっちゃうんだよねぇ…あの無駄にプライドが高い所も可愛いし。あの鼻っ柱を折り曲げたくなっちゃうんだよねぇ…分かる、この気持ち?」
「分かりません…」
挙句にははあはあと呼吸を荒げていく始末。
「あぁ、もう堪らない。思い出したら今すぐあの子を可愛がってあげたくなっちゃうじゃない。どうしてくれるのさ」
サキトの彼に対する執着心は並々ならぬものを感じてはいたが、この反応はどこか変では無いだろうか。クロスレイは危険な何かを感じてしまった。
天使のような愛くるしさを印象付ける容姿にも関わらず、このように性的な欲求を満たしきれずに悶々としている顔をあからさまに見せられては相手もたまったものではないだろう。
…彼は逃げて正解だったのかもしれない。
そう呟き、甘すぎるマスクを切なげな表情を浮かべて、シャンクレイス学院のサキトは溜息を吐いた。
生徒会室は相変わらず清潔感の漂う白で統一されている。外観はもとより校舎内もとにかく真っ白で、お伽話に出てくるお城を思わせる造りになっている。
今日はこれで百五十九回の溜息だ。
彼のボディーガードであるクロスレイは、内心少しばかりやきもちを妬きながら余程スティレンが好きなのだなと思っていた。
「サキト様」
「んー?なあに、クロスレイ」
「そこまで退屈なら、いっそサキト様もアストレーゼン学園に転校されたらどうでしょう」
一番いい案だと思うのだ。
彼も同じ学校に行けば、毎日退屈しなくても済む。彼の為に考えた提案だが、サキトは「バカだねぇ」とぶった斬った。
「このシャンクレイス学院はほとんどの資金を僕の家から出しているのだよ。関係者たる僕が別の学校に転校だなんて出来る訳ないじゃないか。むしろ向こうがここを出て行く理由なんて無いはずなのにさ」
「はあ」
確かに。それならば、サキトが出て行くのはおかしい話だ。自分は浅はかな考えだったとクロスレイは反省した。
「それなのにどうして彼はアストレーゼンの方に行ったのでしょう?…サキト様が折角ご好意を示しているのに、勿体ない」
「全くだよ。僕の愛情表現が足りなかったのかな」
色々してあげられたのに、と彼は爪を軽く噛みながら呟く。
「愛情表現…」
「そう、愛情表現。僕はね、スティレンの為なら何でもするつもりだったのさ。めちゃくちゃ可愛がってあげたいのにあの子ったらすぐ逃げちゃうし…向こうに行っちゃったらそれもしてあげられないじゃない。つまんない」
温くなってきた紅茶を口にした後、クロスレイに熱いのを入れてと命じる。いそいそとそれに従う巨体のボディーガード。
香り立つ茶葉の匂いに包まれ、クロスレイはサキトに「ちなみに」と質問した。
「サキト様、スティレンさんに何をされたんですか?」
「ん?」
「学院内の生徒間の事は把握してませんので、サキト様のスティレンさんに対するスキンシップというか…余程お気に入りだった様でしたから」
クロスレイから新しい紅茶が入ったカップを受け取ると、サキトは小さな唇に笑みを称えて「色々やってきたよぉ」と呟いた。
「あの子の私物に僕の写真を忍ばせたり、体操着を僕のと交換してみたり…なかなか心を開いてくれなかったからね」
「はあ」
「あとはそうだねぇ、顔を合わせるたびに抱き着いてみたり」
「………」
何だかおかしいなとクロスレイは思った。
まるで普通の事のようにサキトは言ってのけるが、それはもう嫌がらせの範疇を超えているのではないだろうかと。
色々思い出してきたのか、サキトはその際のスティレンの反応を思い浮かべ恍惚とした表情に変化していく。
「僕ねぇ、スティレンが顔を真っ赤にして嫌がる顔が好きなの」
「はあ…」
「見るだけでこう、何て言うか…体が火照ってきちゃう。不思議と苛めたくなっちゃうんだよねぇ…あの無駄にプライドが高い所も可愛いし。あの鼻っ柱を折り曲げたくなっちゃうんだよねぇ…分かる、この気持ち?」
「分かりません…」
挙句にははあはあと呼吸を荒げていく始末。
「あぁ、もう堪らない。思い出したら今すぐあの子を可愛がってあげたくなっちゃうじゃない。どうしてくれるのさ」
サキトの彼に対する執着心は並々ならぬものを感じてはいたが、この反応はどこか変では無いだろうか。クロスレイは危険な何かを感じてしまった。
天使のような愛くるしさを印象付ける容姿にも関わらず、このように性的な欲求を満たしきれずに悶々としている顔をあからさまに見せられては相手もたまったものではないだろう。
…彼は逃げて正解だったのかもしれない。
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