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そのごじゅうに
無茶振りスティレンと涙腺崩壊のリシェ
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「とにかく」
間髪入れずスティレンはぐすぐす泣いていたリシェに言う。
こちらのリシェは涙腺が緩い。
柔らかい印象を与えそうな垂れ目で、まるで見下すような目線を投げつけながら命令するかの如くはっきり喋り続けた。
「お前は黙って俺の近くに居ればいいんだよ。単独でうろつかれたら別の変態が寄り付きやすいんだから。油断も隙もありゃしない」
スティレンの発言を受け、リシェは物凄く馬鹿にされた気分に陥ってしまった。まるで自分が悪いみたいではないか、と。
自分は何も悪い事はしていないのに。
「俺のせいじゃない」
えっくえっくと喉を引きつらせながら彼は呟いていた。
「ふん。…どうでもいいよ、そんなの。お前には俺が居るんだから余計なものはいらないっての。お前は俺だけに甘えればいいんだよ。分かった?」
「分かりたくもない」
リシェはスティレンの発言を思いっきり否定する。泣きながら。
反論されてイラッときたのか、スティレンはリシェの両側の頰を指でぐにょりと摘むと「はぁああああ~!?」と怒り出した。
ぐににに、と力強く引っ張られた。
「いひゃい!!いひゃ…!」
余計リシェは泣き喚く。
「はにゃせ!!」
「俺に反抗するからこうなるのさ!」
一体何様なのだろうか。
引っ張ってくる手を引き離そうともがくリシェは、スティレンを見上げてやめろと叫んでいた。他者から見れば、美少年の戯れに見えなくもないが本人達は殺伐とした会話を繰り広げている。
なかなか離してくれないスティレンの手から逃れようとリシェはぽこぽこと彼の腕を叩いていた。
「反抗するんじゃないよ、リシェのくせに!!」
「ほはへはひっはるはら!!(お前が引っ張るから!!)」
最終的には全く言葉にならず、変な言葉になってしまう。
「ちいっ、何て生意気なんだろうね!!」
散々引っ張っていたくせに、最後にきつく引いて離す。うええ、とリシェは痛む頰を押さえながらしゃがんだ。
「決めた。決めたよ、バカリシェ」
「……?」
腫れた顔を両手で包み込み、何かを決めたような従兄弟を見上げる。今度は何を言い出す気なのかと。
スティレンはへたりと床に座り込んだリシェを見下ろすと、何故か得意げに続ける。
「これからは俺がお前の恋人になってあげる。お前は迫られると断れない優柔不断の根暗だからね。こうしてはっきり跳ねつけられる俺が居ないとダメなんだよ。それに美しいし」
何故またそこで自分を褒め称えるのか。
リシェは彼の一方的な言葉に「嫌だ!!」と叫ぶ。
「お前なんかと付き合ったらこの世の終わりだと思う!!」
お前なんか、と強調するあたりリシェはとにかくスティレンと深く関わるのが嫌なようだ。
確かに付き合うのが難しいタイプの彼についていくのは至難の業である。普通の人間は間違いなく彼の面倒臭い性格についていけず逃げるだろう。
リシェも従兄弟だから仕方無く付き合っているだけである。
「この世の終わりだって!?失礼な奴だね、普通は土下座して有難がるでしょ!?この俺が付き合ってあげるって言ってるのさ!そこは三つ指ついて有難うございますでしょ!?」
どこまでもめちゃくちゃな事を言うスティレンに対し、リシェは「本気で有難くもないし嬉しくない!!」と泣き喚きながら訴えていた。
間髪入れずスティレンはぐすぐす泣いていたリシェに言う。
こちらのリシェは涙腺が緩い。
柔らかい印象を与えそうな垂れ目で、まるで見下すような目線を投げつけながら命令するかの如くはっきり喋り続けた。
「お前は黙って俺の近くに居ればいいんだよ。単独でうろつかれたら別の変態が寄り付きやすいんだから。油断も隙もありゃしない」
スティレンの発言を受け、リシェは物凄く馬鹿にされた気分に陥ってしまった。まるで自分が悪いみたいではないか、と。
自分は何も悪い事はしていないのに。
「俺のせいじゃない」
えっくえっくと喉を引きつらせながら彼は呟いていた。
「ふん。…どうでもいいよ、そんなの。お前には俺が居るんだから余計なものはいらないっての。お前は俺だけに甘えればいいんだよ。分かった?」
「分かりたくもない」
リシェはスティレンの発言を思いっきり否定する。泣きながら。
反論されてイラッときたのか、スティレンはリシェの両側の頰を指でぐにょりと摘むと「はぁああああ~!?」と怒り出した。
ぐににに、と力強く引っ張られた。
「いひゃい!!いひゃ…!」
余計リシェは泣き喚く。
「はにゃせ!!」
「俺に反抗するからこうなるのさ!」
一体何様なのだろうか。
引っ張ってくる手を引き離そうともがくリシェは、スティレンを見上げてやめろと叫んでいた。他者から見れば、美少年の戯れに見えなくもないが本人達は殺伐とした会話を繰り広げている。
なかなか離してくれないスティレンの手から逃れようとリシェはぽこぽこと彼の腕を叩いていた。
「反抗するんじゃないよ、リシェのくせに!!」
「ほはへはひっはるはら!!(お前が引っ張るから!!)」
最終的には全く言葉にならず、変な言葉になってしまう。
「ちいっ、何て生意気なんだろうね!!」
散々引っ張っていたくせに、最後にきつく引いて離す。うええ、とリシェは痛む頰を押さえながらしゃがんだ。
「決めた。決めたよ、バカリシェ」
「……?」
腫れた顔を両手で包み込み、何かを決めたような従兄弟を見上げる。今度は何を言い出す気なのかと。
スティレンはへたりと床に座り込んだリシェを見下ろすと、何故か得意げに続ける。
「これからは俺がお前の恋人になってあげる。お前は迫られると断れない優柔不断の根暗だからね。こうしてはっきり跳ねつけられる俺が居ないとダメなんだよ。それに美しいし」
何故またそこで自分を褒め称えるのか。
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「お前なんかと付き合ったらこの世の終わりだと思う!!」
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確かに付き合うのが難しいタイプの彼についていくのは至難の業である。普通の人間は間違いなく彼の面倒臭い性格についていけず逃げるだろう。
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「この世の終わりだって!?失礼な奴だね、普通は土下座して有難がるでしょ!?この俺が付き合ってあげるって言ってるのさ!そこは三つ指ついて有難うございますでしょ!?」
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