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そのよんじゅうはち
遭遇
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たまにはリシェにプレゼントをあげたい、とラスはバイトからの帰り道に雑貨屋にでも立ち寄ろうと考えていた。だが雑貨屋に行ったのはいいものの、彼の好みは未だによく分からないまま。
特別趣味らしいものも聞いたことがない。
特に好きな事と言えば読書位だろうか。
これから付き合っていくにつれて、少しずつ理解できるだろうが、いまだに彼は不思議なベールに包まれたままだった。
だがそれがいい、とラスは自分に言い聞かせて彼が好む物を歩きながら考え込んでいた。
「あれ?何でここに居るんだ?」
ある雑貨屋の前で立ち止まり、携帯を片手に検索していると不意に声がかかった。顔を上げると顔なじみの少女が近付いてくる。
「あれ、マルテロじゃん。今日出勤だっけ?」
「ううん、あたしは今日休みだよ」
やや派手に着飾っている少女は、ラスと同じバイト先のマルテロだった。シンプルなシャツと赤と黒のチェック柄のミニスカートを可愛く着こなし、あどけない顔にがっちりとメイクを施している。
顔に多めのそばかすがある事がコンプレックスで、常にそれを隠すかのようにメイクをしていた。
「遊びに来てるのか」
「そうそう。買い物もしたかったしね。んで、あんたは何してんのさ」
「プレゼントを考えてるんだよ」
ラスの発言に、マルテロはにやあっと笑うと誰に??と詰め寄って来た。やはり年頃なのかその手の話は気になるらしい。
「あれ、そういや付き合ってる人居るんだっけぇ?やるじゃん。画像持ってるんだろ?見せてよ」
やけに楽しそうに言いだす彼女に、ラスは若干照れながらそんなに画像持って無いよと返した。
「その相手はどこで知り合ったのさ?あんたの学校って男子校だよね?バイト先に来た事ある?紹介とか?」
「バイト先には来た事は無いなぁ。あまり出歩くタイプでもないし」
「じゃあどこで知り合うんだよ?あっ、もしかして合コンとか!?あんた見た目チャラいもんね」
どの姿で人の事を言うのか。
ラスは苦笑いしながら「そんなんじゃないよ」と返した。
マルテロはじゃあ誰なのさと更に問い詰めて来た。
「いやぁ…正直に言ったら引くかなあってさあ」
「何よ?まさか中学生とか言わないだろうね」
デレデレになりながらリシェの事を思い出す。れっきとした同性で同じ寮の部屋に住んでいるのだ。
最高の環境に居る充実感で顔が綻んでしまう。
「うんんんんっふ…同じ学校」
「へえ~、同じ学校なんだぁ。良かったじゃぁん…って、ええ!?」
自分で納得した言葉を言った後、頭の中でようやく理解した瞬間その内容に驚いた。
「さっきも聞いたけど男子校だよね?」
「そう…そうです」
にやにやするラスに、マルテロは「画像見せろ!」と手を突き出した。その相手の顔が非常に気になったのだ。
「ええ…どうしようかなぁああんんふっふふ」
「気色悪い笑いとかいらないから、どんな顔か見てみたい!」
あまりにもしつこいので観念したラスは、仕方無いなぁと嬉しそうに携帯の中のリシェの画像を探した。
どうせならとっておきの可愛い写真でも見せてやろう、と。
一方のマルテロは男子校なのにそこまでデレデレになる位の相手が居るものかと疑ってかかっていた。
絶対厳つい顔かなよなよしているタイプに違いない。
「ビビるなよぉ」
「ビビんないよ…あまり期待してないから」
ラスは携帯の中に入っていたリシェの画像をマルテロに見せた。彼女は過去にラスが盗撮したリシェが寝入っている画像を確認すると、しばらく無言を貫いていたが恐る恐るラスを見上げる。
そしてようやく口を開いた。
「…あんた誘拐してきたの?」
「あ…?」
「これ女だろ!?どこから持ってきたんだよ!」
渾身のお気に入り画像は完全に少女に見紛うものだった。しかもクマのぬいぐるみを抱いて寝ているといういかにもな画像。
「持って来てないって!!」
「こんなん男子校に居るかよ!」
頑として認めないマルテロ。
「居るんだってば!俺一緒の部屋なんだもん!」
信じられないという気持ちは分からなくもない。
「てかこれCGだろ!!」
挙句にはめちゃくちゃな事を言い出して来た。
「違うって!」
「ならさぁ、そいつ後であたしがシフト入ってる時に連れてきてよ!なら信じるから!!」
急に湧いて来た要求に、ラスはええっと驚いた。別にいいのだが、リシェが大人しく応じてくれるかどうか。
さすがにCGと言われればラスも黙ってはいられない。
「わ。分かったよ…先輩がいいって言ったら連れてきてやるよ」
「本当!?絶対だよ!そいつあたしがシフトインしてる時に連れてきてよ!?」
渋々答えたものの、余計なクエストが増えてしまったと内心がっかりしていた。
特別趣味らしいものも聞いたことがない。
特に好きな事と言えば読書位だろうか。
これから付き合っていくにつれて、少しずつ理解できるだろうが、いまだに彼は不思議なベールに包まれたままだった。
だがそれがいい、とラスは自分に言い聞かせて彼が好む物を歩きながら考え込んでいた。
「あれ?何でここに居るんだ?」
ある雑貨屋の前で立ち止まり、携帯を片手に検索していると不意に声がかかった。顔を上げると顔なじみの少女が近付いてくる。
「あれ、マルテロじゃん。今日出勤だっけ?」
「ううん、あたしは今日休みだよ」
やや派手に着飾っている少女は、ラスと同じバイト先のマルテロだった。シンプルなシャツと赤と黒のチェック柄のミニスカートを可愛く着こなし、あどけない顔にがっちりとメイクを施している。
顔に多めのそばかすがある事がコンプレックスで、常にそれを隠すかのようにメイクをしていた。
「遊びに来てるのか」
「そうそう。買い物もしたかったしね。んで、あんたは何してんのさ」
「プレゼントを考えてるんだよ」
ラスの発言に、マルテロはにやあっと笑うと誰に??と詰め寄って来た。やはり年頃なのかその手の話は気になるらしい。
「あれ、そういや付き合ってる人居るんだっけぇ?やるじゃん。画像持ってるんだろ?見せてよ」
やけに楽しそうに言いだす彼女に、ラスは若干照れながらそんなに画像持って無いよと返した。
「その相手はどこで知り合ったのさ?あんたの学校って男子校だよね?バイト先に来た事ある?紹介とか?」
「バイト先には来た事は無いなぁ。あまり出歩くタイプでもないし」
「じゃあどこで知り合うんだよ?あっ、もしかして合コンとか!?あんた見た目チャラいもんね」
どの姿で人の事を言うのか。
ラスは苦笑いしながら「そんなんじゃないよ」と返した。
マルテロはじゃあ誰なのさと更に問い詰めて来た。
「いやぁ…正直に言ったら引くかなあってさあ」
「何よ?まさか中学生とか言わないだろうね」
デレデレになりながらリシェの事を思い出す。れっきとした同性で同じ寮の部屋に住んでいるのだ。
最高の環境に居る充実感で顔が綻んでしまう。
「うんんんんっふ…同じ学校」
「へえ~、同じ学校なんだぁ。良かったじゃぁん…って、ええ!?」
自分で納得した言葉を言った後、頭の中でようやく理解した瞬間その内容に驚いた。
「さっきも聞いたけど男子校だよね?」
「そう…そうです」
にやにやするラスに、マルテロは「画像見せろ!」と手を突き出した。その相手の顔が非常に気になったのだ。
「ええ…どうしようかなぁああんんふっふふ」
「気色悪い笑いとかいらないから、どんな顔か見てみたい!」
あまりにもしつこいので観念したラスは、仕方無いなぁと嬉しそうに携帯の中のリシェの画像を探した。
どうせならとっておきの可愛い写真でも見せてやろう、と。
一方のマルテロは男子校なのにそこまでデレデレになる位の相手が居るものかと疑ってかかっていた。
絶対厳つい顔かなよなよしているタイプに違いない。
「ビビるなよぉ」
「ビビんないよ…あまり期待してないから」
ラスは携帯の中に入っていたリシェの画像をマルテロに見せた。彼女は過去にラスが盗撮したリシェが寝入っている画像を確認すると、しばらく無言を貫いていたが恐る恐るラスを見上げる。
そしてようやく口を開いた。
「…あんた誘拐してきたの?」
「あ…?」
「これ女だろ!?どこから持ってきたんだよ!」
渾身のお気に入り画像は完全に少女に見紛うものだった。しかもクマのぬいぐるみを抱いて寝ているといういかにもな画像。
「持って来てないって!!」
「こんなん男子校に居るかよ!」
頑として認めないマルテロ。
「居るんだってば!俺一緒の部屋なんだもん!」
信じられないという気持ちは分からなくもない。
「てかこれCGだろ!!」
挙句にはめちゃくちゃな事を言い出して来た。
「違うって!」
「ならさぁ、そいつ後であたしがシフト入ってる時に連れてきてよ!なら信じるから!!」
急に湧いて来た要求に、ラスはええっと驚いた。別にいいのだが、リシェが大人しく応じてくれるかどうか。
さすがにCGと言われればラスも黙ってはいられない。
「わ。分かったよ…先輩がいいって言ったら連れてきてやるよ」
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