41 / 101
そのよんじゅう
花占い
しおりを挟む
寮に向かう最中だったラスは、おもむろに地面に生えていた花で花占いを始めていた。リシェはその様子を無表情で見つめている。
頰を赤らめながらこちらをちらりと見た後、彼は呟くように開始していた。
「こっち見るな、気色悪い」
可愛い顔で毒を吐き散らかすリシェですら愛しい。気持ち悪いと罵倒されようが、ラスは全くのノーダメージだった。
「もう、先輩はロマンのカケラも無いんだから。好きな相手が俺の事をどう思っているのかとか気になるじゃないですか」
そんなもの必要無いとリシェは返す。
「先輩は自分からなかなか言おうとしないし…それなら気休めとはいえ、占いで試してみようかなーとか」
そんなチャラい姿をして何を言うのか。
リシェは黙ったままラスが似合わぬ花占いをするのを眺めていた。
「先輩は俺の事が好き、嫌い、好き、嫌い…」
「そんなものに頼らなくても俺はお前の事を心底気持ち悪いと思ってるぞ。満足したか?」
「気持ち悪いとかじゃなくて!!好きか嫌いか、ですよ!!」
物凄く必死な剣幕で叫んだ。
青年になりかけの十八歳に近い男が、ぶちぶちと花占いなどする様子は異様に見えてしまう。リシェは黙って冷めた目を向けた。
おかしいと思っていないあたり、ラスはどこかしら変なのだ。
「好き…嫌い…好き…嫌い」
「女子みたいな奴だな」
「先輩が俺の気持ちになかなか向き合ってくれないからですよ。だからこうして気持ちの慰めっていうか?ほらぁ、あるじゃないですかそういうの…」
「女々しい奴は嫌いだ」
「恋すると弱気にもなりますよ!!恋するウサギなんですよ!!」
言いながらぷちぷちと占いを続けていく。
「はあ…」
こいつから逃れたいが、絶対彼は追いかけてくるタイプだ。
ようやく残りが数枚。好き、嫌いを続けていけば、残る一枚で嫌いが確定になる。ラスはその事に気付き、手が止まった。
そしてリシェの方を見る。
「…先輩っ!!!」
「え!?何だ?」
「…何で口元笑ってるんですか!!」
知らないうちに顔に出していたのか。
リシェは慌てて口を押さえ、「し、知らない」と返す。
何故かにやついてしまった。ほれ見ろ、と。
ラスは半泣きになりつつ、最後の茎で「好き!!」と強がりを言い出した。
「お前っ!!最後は無効だろう!!」
顔を真っ赤にし、リシェは抗議した。こんな事がまかり通るとでもいうのかと。しかしラスは首を振りながら「無効じゃないです!」と開き直りを見せる。
気休めでも好きだと思われたいのだ。
「先輩は俺の事が好き!!」
「ふざけるな!!それはズルをした結果だろう!!」
「それならっ…それなら、先輩もやってみて下さいよ!!これで納得しますから!!」
ラスにせがまれ、リシェは舌打ちしながら枯れている花をむしり取った。
「もう枯れてますよそれ…」
カサカサし、茶色く変化している花を手にするリシェは「うるさいな」と言った。
「まだ綺麗な花を毟るなんて外道がやる事だ」
…遠回しに外道だと言われているような気がする。
リシェはその枯れた花を鷲掴みにすると、それを頭から抜いた。
「嫌い」
パラパラと粉状になって落下する花を、ラスはがああんとショックを受けた様子で眺める。
「いや、だめですよそれ!!いきなり嫌いから始まるし占いにもなってないですもん!!普通は好きから始めますよ!?だめです、無効です先輩っ!!先輩は俺の事が好きで決定です!!」
前向き過ぎるラスは、半ば強引に話を決定付けてしまう。
リシェは面倒臭そうに「じゃあいいよ何でも」とうんざりしたように唸っていた。
頰を赤らめながらこちらをちらりと見た後、彼は呟くように開始していた。
「こっち見るな、気色悪い」
可愛い顔で毒を吐き散らかすリシェですら愛しい。気持ち悪いと罵倒されようが、ラスは全くのノーダメージだった。
「もう、先輩はロマンのカケラも無いんだから。好きな相手が俺の事をどう思っているのかとか気になるじゃないですか」
そんなもの必要無いとリシェは返す。
「先輩は自分からなかなか言おうとしないし…それなら気休めとはいえ、占いで試してみようかなーとか」
そんなチャラい姿をして何を言うのか。
リシェは黙ったままラスが似合わぬ花占いをするのを眺めていた。
「先輩は俺の事が好き、嫌い、好き、嫌い…」
「そんなものに頼らなくても俺はお前の事を心底気持ち悪いと思ってるぞ。満足したか?」
「気持ち悪いとかじゃなくて!!好きか嫌いか、ですよ!!」
物凄く必死な剣幕で叫んだ。
青年になりかけの十八歳に近い男が、ぶちぶちと花占いなどする様子は異様に見えてしまう。リシェは黙って冷めた目を向けた。
おかしいと思っていないあたり、ラスはどこかしら変なのだ。
「好き…嫌い…好き…嫌い」
「女子みたいな奴だな」
「先輩が俺の気持ちになかなか向き合ってくれないからですよ。だからこうして気持ちの慰めっていうか?ほらぁ、あるじゃないですかそういうの…」
「女々しい奴は嫌いだ」
「恋すると弱気にもなりますよ!!恋するウサギなんですよ!!」
言いながらぷちぷちと占いを続けていく。
「はあ…」
こいつから逃れたいが、絶対彼は追いかけてくるタイプだ。
ようやく残りが数枚。好き、嫌いを続けていけば、残る一枚で嫌いが確定になる。ラスはその事に気付き、手が止まった。
そしてリシェの方を見る。
「…先輩っ!!!」
「え!?何だ?」
「…何で口元笑ってるんですか!!」
知らないうちに顔に出していたのか。
リシェは慌てて口を押さえ、「し、知らない」と返す。
何故かにやついてしまった。ほれ見ろ、と。
ラスは半泣きになりつつ、最後の茎で「好き!!」と強がりを言い出した。
「お前っ!!最後は無効だろう!!」
顔を真っ赤にし、リシェは抗議した。こんな事がまかり通るとでもいうのかと。しかしラスは首を振りながら「無効じゃないです!」と開き直りを見せる。
気休めでも好きだと思われたいのだ。
「先輩は俺の事が好き!!」
「ふざけるな!!それはズルをした結果だろう!!」
「それならっ…それなら、先輩もやってみて下さいよ!!これで納得しますから!!」
ラスにせがまれ、リシェは舌打ちしながら枯れている花をむしり取った。
「もう枯れてますよそれ…」
カサカサし、茶色く変化している花を手にするリシェは「うるさいな」と言った。
「まだ綺麗な花を毟るなんて外道がやる事だ」
…遠回しに外道だと言われているような気がする。
リシェはその枯れた花を鷲掴みにすると、それを頭から抜いた。
「嫌い」
パラパラと粉状になって落下する花を、ラスはがああんとショックを受けた様子で眺める。
「いや、だめですよそれ!!いきなり嫌いから始まるし占いにもなってないですもん!!普通は好きから始めますよ!?だめです、無効です先輩っ!!先輩は俺の事が好きで決定です!!」
前向き過ぎるラスは、半ば強引に話を決定付けてしまう。
リシェは面倒臭そうに「じゃあいいよ何でも」とうんざりしたように唸っていた。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
純白のレゾン
雨水林檎
BL
《日常系BL風味義理親子(もしくは兄弟)な物語》
この関係は出会った時からだと、数えてみればもう十年余。
親子のようにもしくは兄弟のようなささいな理由を含めて、少しの雑音を聴きながら今日も二人でただ生きています。


僕の王子様
くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。
無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。
そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。
見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。
元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。
※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
早く惚れてよ、怖がりナツ
ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。
このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。
そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。
一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて…
那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。
ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩
《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる