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そのさんじゅうきゅう
新たな悩み
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ぐぬぬ、とラスは呻いていた。
最愛のリシェからたまに出てくる話題…ネット上の友達の事について頭を悩ませていたのだ。
ゲーム進行はそっちのけで、ひたすら話し込んでいるというらしいそのゲーム内フレンド、肉食の赤フン。その赤フンというのが自分の友人のノーチェなのだと発覚してから、ラスはハラハラして仕方無かった。
ノーチェはリシェに対して激しい敵対心を持っていて、彼がそのような態度を見せるが故にリシェも反射的に嫌な反応を見せているのだ。
ネット上では友人なのに、リアルの世界では非常に険悪だとは誰が想像出来ただろう。
…あまりにも近過ぎる為に、お互いの正体が発覚でもしたら。ノーチェは余計怒り狂いそうだし、リシェはショックを受けてしまいそうだ。それを思えば、どうしようと悩んでしまう。
これは自分だけで悩む問題ではない。かと言って、他の仲間と共有するとなれば…スティレンは確実に話にならないだろう。別に俺に関係無いし、バレたらバレたでいいんじゃない?とか言いそうだ。全く役に立たないだろう。
ではキリルとベルンハルドしか居ない。
ただ、ベルンハルドはそのゲームの廃プレーヤーだ。しかも他人に媚を売ってアイテムを頂戴するという所業を繰り返し、悪い意味で有名。確実におかしげな方向に話が行きそうな気がする。
…それならばライトユーザーであるキリル。
彼ならまだ常識的な印象を受けた。
「んあ?何だって?」
呼び出しを食らったキリルは、ラスの浮かない顔とその話の内容に眉を寄せていた。
「だから、相談なんだよ。俺一人じゃ抱え込めない」
「そんな重いやつ、俺だって抱え込めないよ」
「いいから聞いてくれよー!!先輩とノーチェの事なんだってば!」
キリルは面倒そうに茶髪頭を掻き、それからラスに向けて手の平を向けて突き出す。
「お茶奢ってくれよ。喉渇いた」
「もう」
ラスは大人しく近くの自販機でお茶の紙パックを買うと、キリルに渡した。いい具合に冷たくなったパックにストローを差し込みながら、彼はラスに「で、何だよ」と問う。
教室から出て、廊下から外の景色を眺める。
いつもと変わらぬ風景を目の当たりにしながら、ラスは「ノーチェが変な名前でゲームしてるだろ?」と話を切り出した。
「ああ、肉食の赤フンな」
口にすればする程意味不明な名前だ。何故そんな名前にしてしまったのたろう。
「先輩もそのゲームしてるんだよ」
「先輩?…ああ、あの小さいのか。てかめちゃくちゃ紛らわしいからそれどうにかならないの?年下なんだろ?」
どうにかしろと言われても、ラスにとってはリシェは先輩以外の何者でもないので修正する気にはなれない。
まあまあと言いながらラスは続けた。
「その赤フンと先輩、ゲーム内では悩み相談する仲になっちゃったんだよ」
その言葉に、お茶をストローで啜っていたキリルはふうん…と言いながら返事をしていたが、意味を頭に浸透させた後でぐるっとこちらを勢い良く見た。
「はああああ!?」
反応がやや遅かったがやはり驚くだろう。
「え!?じ…じゃあ、ノーチェとその先輩とやらはこっちではめちゃくちゃ仲が悪いのにゲーム内じゃ仲いい訳?」
「お…おう…そう、そうなんだ。良かった、理解してくれて…だから困ったんだよぉ」
「こんな近い所で繋がるとか凄げぇな!」
妙に嬉しそうな顔をするのは何故なのだろう。
ラスは頭を抱えながら「お互いまだ分かってないからさ」と唸った。
「お互いの正体を知ったらどうしようって。ノーチェはあの通りだろ?先輩は先輩でショックできっとベッドの上で布団被って丸まってしまうよ…」
「その先輩のゲームのキャラ名は何ていうんだよ?」
キリルは絶望感に苛まれているラスに対して問う。
んん?とラスは顔を上げ、リシェのゲームのキャラ名を答えた。
「そのままだよ。りしぇって言うんだ」
その回答に、キリルは顔をさあっと蒼白にする。
「え…!?ちょっと待てよ、何で本名使ってんの…?」
「ええ…!?」
名前なんて特にこだわっていなかったから、普通に名付けていたのだ。そうか、なるほど。と呑気に思っていたが、これはさすがに宜しくないらしい。
だが今更変更するのもかえって怪しく思われそうだ。
「むしろノーチェも良く気付かないもんだな。鈍いのかな…」
これではバレるのも時間の問題だよ、とキリルが指摘すると、ラスは泣きそうな顔をした。どうしよう、と。
「このまま放置すりゃいいんじゃないの?今まで気づかなかったんだからさあ」
そういう問題なの…?と肩を落とす。
どうか二人がどこまでも鈍いままでいますように。
ラスはそう願わずにはいられなかった。
最愛のリシェからたまに出てくる話題…ネット上の友達の事について頭を悩ませていたのだ。
ゲーム進行はそっちのけで、ひたすら話し込んでいるというらしいそのゲーム内フレンド、肉食の赤フン。その赤フンというのが自分の友人のノーチェなのだと発覚してから、ラスはハラハラして仕方無かった。
ノーチェはリシェに対して激しい敵対心を持っていて、彼がそのような態度を見せるが故にリシェも反射的に嫌な反応を見せているのだ。
ネット上では友人なのに、リアルの世界では非常に険悪だとは誰が想像出来ただろう。
…あまりにも近過ぎる為に、お互いの正体が発覚でもしたら。ノーチェは余計怒り狂いそうだし、リシェはショックを受けてしまいそうだ。それを思えば、どうしようと悩んでしまう。
これは自分だけで悩む問題ではない。かと言って、他の仲間と共有するとなれば…スティレンは確実に話にならないだろう。別に俺に関係無いし、バレたらバレたでいいんじゃない?とか言いそうだ。全く役に立たないだろう。
ではキリルとベルンハルドしか居ない。
ただ、ベルンハルドはそのゲームの廃プレーヤーだ。しかも他人に媚を売ってアイテムを頂戴するという所業を繰り返し、悪い意味で有名。確実におかしげな方向に話が行きそうな気がする。
…それならばライトユーザーであるキリル。
彼ならまだ常識的な印象を受けた。
「んあ?何だって?」
呼び出しを食らったキリルは、ラスの浮かない顔とその話の内容に眉を寄せていた。
「だから、相談なんだよ。俺一人じゃ抱え込めない」
「そんな重いやつ、俺だって抱え込めないよ」
「いいから聞いてくれよー!!先輩とノーチェの事なんだってば!」
キリルは面倒そうに茶髪頭を掻き、それからラスに向けて手の平を向けて突き出す。
「お茶奢ってくれよ。喉渇いた」
「もう」
ラスは大人しく近くの自販機でお茶の紙パックを買うと、キリルに渡した。いい具合に冷たくなったパックにストローを差し込みながら、彼はラスに「で、何だよ」と問う。
教室から出て、廊下から外の景色を眺める。
いつもと変わらぬ風景を目の当たりにしながら、ラスは「ノーチェが変な名前でゲームしてるだろ?」と話を切り出した。
「ああ、肉食の赤フンな」
口にすればする程意味不明な名前だ。何故そんな名前にしてしまったのたろう。
「先輩もそのゲームしてるんだよ」
「先輩?…ああ、あの小さいのか。てかめちゃくちゃ紛らわしいからそれどうにかならないの?年下なんだろ?」
どうにかしろと言われても、ラスにとってはリシェは先輩以外の何者でもないので修正する気にはなれない。
まあまあと言いながらラスは続けた。
「その赤フンと先輩、ゲーム内では悩み相談する仲になっちゃったんだよ」
その言葉に、お茶をストローで啜っていたキリルはふうん…と言いながら返事をしていたが、意味を頭に浸透させた後でぐるっとこちらを勢い良く見た。
「はああああ!?」
反応がやや遅かったがやはり驚くだろう。
「え!?じ…じゃあ、ノーチェとその先輩とやらはこっちではめちゃくちゃ仲が悪いのにゲーム内じゃ仲いい訳?」
「お…おう…そう、そうなんだ。良かった、理解してくれて…だから困ったんだよぉ」
「こんな近い所で繋がるとか凄げぇな!」
妙に嬉しそうな顔をするのは何故なのだろう。
ラスは頭を抱えながら「お互いまだ分かってないからさ」と唸った。
「お互いの正体を知ったらどうしようって。ノーチェはあの通りだろ?先輩は先輩でショックできっとベッドの上で布団被って丸まってしまうよ…」
「その先輩のゲームのキャラ名は何ていうんだよ?」
キリルは絶望感に苛まれているラスに対して問う。
んん?とラスは顔を上げ、リシェのゲームのキャラ名を答えた。
「そのままだよ。りしぇって言うんだ」
その回答に、キリルは顔をさあっと蒼白にする。
「え…!?ちょっと待てよ、何で本名使ってんの…?」
「ええ…!?」
名前なんて特にこだわっていなかったから、普通に名付けていたのだ。そうか、なるほど。と呑気に思っていたが、これはさすがに宜しくないらしい。
だが今更変更するのもかえって怪しく思われそうだ。
「むしろノーチェも良く気付かないもんだな。鈍いのかな…」
これではバレるのも時間の問題だよ、とキリルが指摘すると、ラスは泣きそうな顔をした。どうしよう、と。
「このまま放置すりゃいいんじゃないの?今まで気づかなかったんだからさあ」
そういう問題なの…?と肩を落とす。
どうか二人がどこまでも鈍いままでいますように。
ラスはそう願わずにはいられなかった。
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