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そのにじゅうきゅう
バレてはいけない
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なんだ、意外に夢中じゃんとゲームの真っ最中であるノーチェに対し、キリルは冷やかし始める。昼休みの最中、珍しくラスも一緒なのでノーチェは更にご機嫌だった。
四人固まって一ヶ所に集まり、各々昼ご飯をとっている。ラスが教室内に留まる理由は、体育の授業中に足を挫いたからだった。
あらかじめリシェから強引にアカウントを聞き出した通話アプリ内にて今日は屋上に行けない旨のメッセージを送り、寂しいかどうかを聞き出そうとするが全く返事は無い。
既読はついているのに。
リシェはマメに返事をするタイプではないのは分かっていたが、たまには反応が欲しい。かと言って、あの変わり者の彼の兄の時のように変なスタンプを連打されるのも嫌だった。
「レベル上げ手伝ってやろっか?」
ニヤニヤしつつ、ネカマプレイをフルに楽しむ『♬マミマミ♬』ことベルンハルドは自分の携帯電話を取り出した。
しかしノーチェは拒否する。
「いいよぉ。俺、のんびりやるのが合ってるしさ。それにお前のキャラと一緒に居たら変な奴ら寄ってきそう」
「何だよ、一緒に居れば俺の取り巻きからアイテム沢山貰えるぞ」
「その思考が既に怖ぇよ…」
ベルンハルドの乞食思考な言葉にキリルは呆れた。
「でもお前、ひたすらチャットしてねぇか?フレ居るの?」
指の動きを見ながらベルンハルドはノーチェに問う。
「うん。ゲームやっててもチャットしかしてないんだ」
「へぇ…まあ、会話だけでも楽しめるしな。どんな奴よ?」
「外見は可愛いな。でも中身男みたいだ、俺って言ってるし」
三人の会話を聞きながら、ラスはリシェからの返事を待ち続けていた。彼がどこかで変な奴に絡まれていないか、それだけが心配で仕方ない。
足の怪我さえ無ければすぐにでもリシェの近くに駆け寄って優しく抱き締めてあげられるのに。
「はあ…」
ラスは頭をかくりと下げた。
ノーチェはそれを見て、むうっと頬を膨らませる。
「ラス」
「ん?」
「そんなにあの一年の奴に会いたい訳ぇ?あんな生意気な性格で顔だけの奴にさあ」
生意気な顔だけの奴。否定は出来ないかもしれないが、きつい言い方に少しだけカチンとしつつ「そりゃ」としょげる。
「先輩、ああ見えて変な奴に絡まれやすいし」
「そこまで絡まれやすいならあしらうのも慣れてるでしょ?心配し過ぎだよ」
心配症だなあ、とノーチェはゲームの画面に再び目を向けた。キリルとベルンハルドも彼のゲーム画面を覗き込む。
チャットで会話をしている最中、キリルはそういやさとノーチェに話を切り出した。
「ユーザーネーム何よ?」
「んっ?」
どうやら画面には名前が確認出来ないらしく、ふと疑問を感じたようだ。ノーチェは適当に名前付けたからなあと恥ずかしそうに頭を掻く。
捨て垢みたいな名前にしちゃったよ、と。
ラスは仲間の様子を見ながら、自分の携帯電話の画面とも睨めっこしていた。
「そんなに変な名前かよ?俺なんておっさん受け狙ったような名前にしたのに」
「だよな、マミマミ」
さらりとディスるキリルに、ベルンハルドは「名前言うなよ!!」と怒りだした。
理由は単にネカマプレイをしているのを知られたくないかららしい。もしかしたらクラス内にも存在するかもしれない。
ゲームアイテムを他のプレイヤーから貢がせていると知られたら大変だ。炎上するに違いない。
「バレたら怖いんだから!」
「いや、絶対バレるわ」
「俺はいいんだよ、とりあえず!ノーチェのアカウント名教えろって」
もう、とノーチェは困った表情を二人に向けた後、恥ずかしそうに名前を呟いた。
「肉食の赤フン」
「何その名前、キモいな」
肉食の赤フン。
…赤フン!?
その名前を耳にして頭の中で理解した瞬間、ラスは「はあっ!?」と体を起こしガタリと椅子から立ち上がった。三人はわっ、と声を上げてこちらを見る。
ノーチェはラスに「な、何?」と困惑した。いきなり勝手に驚かれ、何事かと動揺してしまう。
ラスは冷や汗がじっとりと湧いてくるのを感じた。
リシェから聞いたチャット内の赤フンとの会話の内容と微妙にリンクしているなとは思っていたが、まさかこんなに近い場所で赤フンと遭遇していたとは。
しかも彼が唯一嫌っているリシェとは知らずにゲーム内で仲良く会話しているなんて。
俺、赤フンとは仲良くなれそうな気がすると言っていたリシェの嬉しそうな顔を思い出した。
だが現実の世界では、彼は一方的に敵視してくるノーチェと仲が良い訳では無い。むしろ逆だ。
こんな偶然があるとは誰が思うだろう。
「どした、ラス?」
動揺するラスに、キリルは不思議そうに問いかけた。
「あ…あぅう、な、何でも無い…」
ラスは再び椅子にへたり込むようにして着席した。
これは実際お互いの正体を知れば大変こじれてしまうのではないかと危惧する。ネットでは仲が良いのに、リアルでは仲良く無い相手同士だなんて誰が予想出来ただろう。
…内緒にしなければ。
先輩とノーチェのゲーム内の平和の為に。
絶対知られてはいけないぞ…とラスは謎の使命感に燃え始めていた。
四人固まって一ヶ所に集まり、各々昼ご飯をとっている。ラスが教室内に留まる理由は、体育の授業中に足を挫いたからだった。
あらかじめリシェから強引にアカウントを聞き出した通話アプリ内にて今日は屋上に行けない旨のメッセージを送り、寂しいかどうかを聞き出そうとするが全く返事は無い。
既読はついているのに。
リシェはマメに返事をするタイプではないのは分かっていたが、たまには反応が欲しい。かと言って、あの変わり者の彼の兄の時のように変なスタンプを連打されるのも嫌だった。
「レベル上げ手伝ってやろっか?」
ニヤニヤしつつ、ネカマプレイをフルに楽しむ『♬マミマミ♬』ことベルンハルドは自分の携帯電話を取り出した。
しかしノーチェは拒否する。
「いいよぉ。俺、のんびりやるのが合ってるしさ。それにお前のキャラと一緒に居たら変な奴ら寄ってきそう」
「何だよ、一緒に居れば俺の取り巻きからアイテム沢山貰えるぞ」
「その思考が既に怖ぇよ…」
ベルンハルドの乞食思考な言葉にキリルは呆れた。
「でもお前、ひたすらチャットしてねぇか?フレ居るの?」
指の動きを見ながらベルンハルドはノーチェに問う。
「うん。ゲームやっててもチャットしかしてないんだ」
「へぇ…まあ、会話だけでも楽しめるしな。どんな奴よ?」
「外見は可愛いな。でも中身男みたいだ、俺って言ってるし」
三人の会話を聞きながら、ラスはリシェからの返事を待ち続けていた。彼がどこかで変な奴に絡まれていないか、それだけが心配で仕方ない。
足の怪我さえ無ければすぐにでもリシェの近くに駆け寄って優しく抱き締めてあげられるのに。
「はあ…」
ラスは頭をかくりと下げた。
ノーチェはそれを見て、むうっと頬を膨らませる。
「ラス」
「ん?」
「そんなにあの一年の奴に会いたい訳ぇ?あんな生意気な性格で顔だけの奴にさあ」
生意気な顔だけの奴。否定は出来ないかもしれないが、きつい言い方に少しだけカチンとしつつ「そりゃ」としょげる。
「先輩、ああ見えて変な奴に絡まれやすいし」
「そこまで絡まれやすいならあしらうのも慣れてるでしょ?心配し過ぎだよ」
心配症だなあ、とノーチェはゲームの画面に再び目を向けた。キリルとベルンハルドも彼のゲーム画面を覗き込む。
チャットで会話をしている最中、キリルはそういやさとノーチェに話を切り出した。
「ユーザーネーム何よ?」
「んっ?」
どうやら画面には名前が確認出来ないらしく、ふと疑問を感じたようだ。ノーチェは適当に名前付けたからなあと恥ずかしそうに頭を掻く。
捨て垢みたいな名前にしちゃったよ、と。
ラスは仲間の様子を見ながら、自分の携帯電話の画面とも睨めっこしていた。
「そんなに変な名前かよ?俺なんておっさん受け狙ったような名前にしたのに」
「だよな、マミマミ」
さらりとディスるキリルに、ベルンハルドは「名前言うなよ!!」と怒りだした。
理由は単にネカマプレイをしているのを知られたくないかららしい。もしかしたらクラス内にも存在するかもしれない。
ゲームアイテムを他のプレイヤーから貢がせていると知られたら大変だ。炎上するに違いない。
「バレたら怖いんだから!」
「いや、絶対バレるわ」
「俺はいいんだよ、とりあえず!ノーチェのアカウント名教えろって」
もう、とノーチェは困った表情を二人に向けた後、恥ずかしそうに名前を呟いた。
「肉食の赤フン」
「何その名前、キモいな」
肉食の赤フン。
…赤フン!?
その名前を耳にして頭の中で理解した瞬間、ラスは「はあっ!?」と体を起こしガタリと椅子から立ち上がった。三人はわっ、と声を上げてこちらを見る。
ノーチェはラスに「な、何?」と困惑した。いきなり勝手に驚かれ、何事かと動揺してしまう。
ラスは冷や汗がじっとりと湧いてくるのを感じた。
リシェから聞いたチャット内の赤フンとの会話の内容と微妙にリンクしているなとは思っていたが、まさかこんなに近い場所で赤フンと遭遇していたとは。
しかも彼が唯一嫌っているリシェとは知らずにゲーム内で仲良く会話しているなんて。
俺、赤フンとは仲良くなれそうな気がすると言っていたリシェの嬉しそうな顔を思い出した。
だが現実の世界では、彼は一方的に敵視してくるノーチェと仲が良い訳では無い。むしろ逆だ。
こんな偶然があるとは誰が思うだろう。
「どした、ラス?」
動揺するラスに、キリルは不思議そうに問いかけた。
「あ…あぅう、な、何でも無い…」
ラスは再び椅子にへたり込むようにして着席した。
これは実際お互いの正体を知れば大変こじれてしまうのではないかと危惧する。ネットでは仲が良いのに、リアルでは仲良く無い相手同士だなんて誰が予想出来ただろう。
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