26 / 101
そのにじゅうご
退化していく求愛方法
しおりを挟む
リシェを職員室から出した後、オーギュスティンは彼を追いかけようと目論むロシュの首根っこをしっかり掴む。
うぎゃああ!と喚く同僚相手に、オーギュスティンは「止めなさい」と強い口調で引き止めた。
「あなたは性犯罪者になりたいんですか」
人聞きの悪い、とロシュは呻く。
「わっ…私はリシェにしか興味がありません!」
「誰もあなたの好みなんか聞いてませんよ!」
彼を放牧すれば、悪い事しか起こらない事は誰よりもオーギュスティンが深く知っていた。その優男風を装った甘いマスクで誰でもたぶらかしてしまう悪い大人なのだ。
しかも彼は自分で自分の魅力を熟知していて、それを十分利用しようとするから余計タチが悪い。
ある程度時間稼ぎをした後に、ようやくオーギュスティンはロシュから手を離す。
「ああ、もう…折角リシェの姿を間近に見れるチャンスだったのに」
残念がるロシュ。
リシェが遠いこちら側の世界は、ロシュにとって苦行のようだ。手を伸ばせばすぐに抱き締められる元の世界が恋しくなる程に。
「あの子はあなたの何なんですか?単なる悪戯目的ならば私は全力で彼を守りますからね」
オーギュスティンの中ではロシュは相当な危険人物だ。
警戒する彼にうんざりするような目を向けた後、当のロシュは溜息混じりに「あなたに言ってもねぇ」とぼやく。
「私とあの子は運命共同体なのです(向こうの世界では)。リシェはこちら側では全く気付いていないのですよ、私がいかに重要な存在だという事に。どうやら記憶が無いみたいなので思い出して貰わないと」
いつになく真剣そのもので語るロシュだったが、対するオーギュスティンは怪訝そうな表情でこちらを見ると、まるで見下げ果てた様子を剥き出しにして「…は?」とだけ口にする。
かなりドン引きしている。
「頭大丈夫ですか?」
「私は至って平常ですよ」
「運命共同体って…まだ子供相手に何を変な妄想を」
「妄想ではありませんよ!私は真剣にそう思っているんです。こちらの世界でも、私はあの子と一緒に添い遂げる予定ですからね!実際に私は来るべき時の為に結婚応援雑誌を定期購読しています」
…ドヤ顔で変な事を誇らしげに言わなくてもいい。
オーギュスティンは稀に発生する偏頭痛に襲われてしまった。
「あなたはリシェと結婚する気ですか…」
「当たり前じゃないですか」
「いや、やめて下さい。ほんと、やめて」
ただでさえ職業柄色んな問題を抱えているのに、余計な問題を発生させて欲しくない。ううっとオーギュスティンは呻いた。
大体リシェはロシュの事など何とも思っていない所か、逆に怖がっているではないか。そんな相手を良く運命共同体だとか言えるものだ。勘違いも甚だしい。
ロシュの変態っぷりは昔から良く知ってはいたが、まさかここまで電波を発生させるとは思わなかった。自分の童貞を奪っただけでは飽き足らず、その魔の手はまだ何も知らないリシェにまで伸ばそうとしてくるとは。
あんな情けない気持ちをリシェに味わって欲しくない。
「あなたの変態的な色魔っぷりは昔から知ってましたが、流石にこの辺りで止めなければならないみたいですね」
「?」
とにかく。
この気になった相手をどうにかして食い止めないと。
オーギュスティンはロシュに対してメラメラと心の中で炎を燃やしだした。
「私は全力でリシェをあなたから守り抜きます」
「な…何ですか、邪魔する気ですか?私とリシェの仲を裂こうとするなんて!」
「自分の大切な生徒を変質者から守る事のどこが悪いんです!いいですか、今後あの子に手を出そうと動いたら私は通報しますからね!!」
宣言され、ロシュはそんなあとショックを受ける。
これでは余計リシェが遠いではないかと。
「それなら、私は正攻法で交換日記から始めますよ!それなら構わないでしょう!?」
古典的だが仕方あるまい。交換日記ならば清いはずだ。
しかしオーギュスティンは却下!と突っぱねる。
「そういう意味ではありません!!あなたが最初からいやらしい気持ちであの子に近付こうとしているのがダメなのです!!」
ううっと行き詰まるロシュ。
「こっ…」
「?」
必死の様子を見せ、彼はオーギュスティンに訴える。
渾身の叫びは職員室内に響き渡った。
「別に交換日記位っ…いいじゃないですかぁ…っ!」
…毎日何の話を書いて交換するのか。
だからそういう問題じゃないとオーギュスティンは頭を抱えてしまった。
うぎゃああ!と喚く同僚相手に、オーギュスティンは「止めなさい」と強い口調で引き止めた。
「あなたは性犯罪者になりたいんですか」
人聞きの悪い、とロシュは呻く。
「わっ…私はリシェにしか興味がありません!」
「誰もあなたの好みなんか聞いてませんよ!」
彼を放牧すれば、悪い事しか起こらない事は誰よりもオーギュスティンが深く知っていた。その優男風を装った甘いマスクで誰でもたぶらかしてしまう悪い大人なのだ。
しかも彼は自分で自分の魅力を熟知していて、それを十分利用しようとするから余計タチが悪い。
ある程度時間稼ぎをした後に、ようやくオーギュスティンはロシュから手を離す。
「ああ、もう…折角リシェの姿を間近に見れるチャンスだったのに」
残念がるロシュ。
リシェが遠いこちら側の世界は、ロシュにとって苦行のようだ。手を伸ばせばすぐに抱き締められる元の世界が恋しくなる程に。
「あの子はあなたの何なんですか?単なる悪戯目的ならば私は全力で彼を守りますからね」
オーギュスティンの中ではロシュは相当な危険人物だ。
警戒する彼にうんざりするような目を向けた後、当のロシュは溜息混じりに「あなたに言ってもねぇ」とぼやく。
「私とあの子は運命共同体なのです(向こうの世界では)。リシェはこちら側では全く気付いていないのですよ、私がいかに重要な存在だという事に。どうやら記憶が無いみたいなので思い出して貰わないと」
いつになく真剣そのもので語るロシュだったが、対するオーギュスティンは怪訝そうな表情でこちらを見ると、まるで見下げ果てた様子を剥き出しにして「…は?」とだけ口にする。
かなりドン引きしている。
「頭大丈夫ですか?」
「私は至って平常ですよ」
「運命共同体って…まだ子供相手に何を変な妄想を」
「妄想ではありませんよ!私は真剣にそう思っているんです。こちらの世界でも、私はあの子と一緒に添い遂げる予定ですからね!実際に私は来るべき時の為に結婚応援雑誌を定期購読しています」
…ドヤ顔で変な事を誇らしげに言わなくてもいい。
オーギュスティンは稀に発生する偏頭痛に襲われてしまった。
「あなたはリシェと結婚する気ですか…」
「当たり前じゃないですか」
「いや、やめて下さい。ほんと、やめて」
ただでさえ職業柄色んな問題を抱えているのに、余計な問題を発生させて欲しくない。ううっとオーギュスティンは呻いた。
大体リシェはロシュの事など何とも思っていない所か、逆に怖がっているではないか。そんな相手を良く運命共同体だとか言えるものだ。勘違いも甚だしい。
ロシュの変態っぷりは昔から良く知ってはいたが、まさかここまで電波を発生させるとは思わなかった。自分の童貞を奪っただけでは飽き足らず、その魔の手はまだ何も知らないリシェにまで伸ばそうとしてくるとは。
あんな情けない気持ちをリシェに味わって欲しくない。
「あなたの変態的な色魔っぷりは昔から知ってましたが、流石にこの辺りで止めなければならないみたいですね」
「?」
とにかく。
この気になった相手をどうにかして食い止めないと。
オーギュスティンはロシュに対してメラメラと心の中で炎を燃やしだした。
「私は全力でリシェをあなたから守り抜きます」
「な…何ですか、邪魔する気ですか?私とリシェの仲を裂こうとするなんて!」
「自分の大切な生徒を変質者から守る事のどこが悪いんです!いいですか、今後あの子に手を出そうと動いたら私は通報しますからね!!」
宣言され、ロシュはそんなあとショックを受ける。
これでは余計リシェが遠いではないかと。
「それなら、私は正攻法で交換日記から始めますよ!それなら構わないでしょう!?」
古典的だが仕方あるまい。交換日記ならば清いはずだ。
しかしオーギュスティンは却下!と突っぱねる。
「そういう意味ではありません!!あなたが最初からいやらしい気持ちであの子に近付こうとしているのがダメなのです!!」
ううっと行き詰まるロシュ。
「こっ…」
「?」
必死の様子を見せ、彼はオーギュスティンに訴える。
渾身の叫びは職員室内に響き渡った。
「別に交換日記位っ…いいじゃないですかぁ…っ!」
…毎日何の話を書いて交換するのか。
だからそういう問題じゃないとオーギュスティンは頭を抱えてしまった。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
ショタだらけのシェアハウス
ichiko
BL
魔法が存在する平行世界の日本に生きるおっさん。魔法が一つしか使えないために職にも就けず生活は破綻寸前だった。そんな彼を不憫に思った神様が彼を魔法が存在しないパラレルワールドの日本に転移させる。転移した先はショタっ子だけのシェアハウスだった。
猫が崇拝される人間の世界で猫獣人の俺って…
えの
BL
森の中に住む猫獣人ミルル。朝起きると知らない森の中に変わっていた。はて?でも気にしない!!のほほんと過ごしていると1人の少年に出会い…。中途半端かもしれませんが一応完結です。妊娠という言葉が出てきますが、妊娠はしません。
転生して勇者を倒すために育てられた俺が、いつの間にか勇者の恋人になっている話
ぶんぐ
BL
俺は、平凡なサラリーマンだったはずだ…しかしある日突然、自分が前世プレイしていたゲームの世界の悪役に転生していることに気が付いた!
勇者を裏切り倒される悪役のカイ…俺は、そんな最期は嫌だった。
俺はシナリオを変えるべく、勇者を助けることを決意するが──勇者のアランがなぜか俺に話しかけてくるんだが……
溺愛美形勇者×ツンデレ裏切り者剣士(元平凡リーマン)
※現時点でR-18シーンの予定はありませんが、今後追加する可能性があります。
※拙い文章ですが、お付き合い頂ければ幸いです。
転生したらBLゲームの攻略キャラになってたんですけど!
朝比奈歩
BL
ーーある日目覚めたら、おれはおれの『最推し』になっていた?!
腐男子だった主人公は、生まれ変わったら生前プレイしていたBLゲームの「攻略対象」に転生してしまった。
そのBLゲームとは、本来人気ダンスヴォーカルグループのマネージャーになってメンバーと恋愛していく『君は最推し!』。
主人公、凛は色々な問題に巻き込まれながらも、メンバー皆に愛されながらその問題に立ち向かっていく!
表紙イラストは入相むみ様に描いていただきました!
R-18作品は別で分けてあります。
※この物語はフィクションです。
ある日、人気俳優の弟になりました。
樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
転生したので異世界でショタコンライフを堪能します
のりたまご飯
BL
30歳ショタコンだった俺は、駅のホームで気を失い、そのまま電車に撥ねられあっけなく死んだ。
けど、目が覚めるとそこは知らない天井...、どこかで見たことのある転生系アニメのようなシチュエーション。
どうやら俺は転生してしまったようだ。
元の世界で極度のショタコンだった俺は、ショタとして異世界で新たな人生を歩む!!!
ショタ最高!ショタは世界を救う!!!
ショタコンによるショタコンのためのBLコメディ小説であーる!!!
総長の彼氏が俺にだけ優しい
桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、
関東で最強の暴走族の総長。
みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。
そんな日常を描いた話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる