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そのじゅうはち

今年の目標(欲望)

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「何だかんだで明けましたよ、先輩」
 ある日の昼下がり。
 ラスは神妙な顔つきで読書をしているリシェに告げた。
「?…何の話だ?」
「まあそれはそうとして…こう、最初なので目標をね、立てたいと思うんですよ」
 きょとんとした顔でラスを見上げ、そうなのかと返す。
「そうですよ!だから俺の今年の目標、聞いてくれますか?」
 また変な事を言い出したぞ…と面倒そうなリシェ。
 いそいそとそんな彼の前に向かい合って座ると、ラスは読書を止めて自分を見るリシェの顔を優しく両手で包み込んだ。
「何故わざわざ向き合う必要がある?」
「それは…ほら、先輩の将来に関わる事だし…」
「結婚して下さいとかじゃないだろうな」
 お前はワンパターン過ぎるんだと眉を寄せると、ラスはうぬぬと返す言葉を失った。
 ほら見ろ、と少しドヤるリシェ。あまりにも一緒に居過ぎてラスの言いたい事が段々と理解して来たようだ。
「だ、だって他に何かありますか!」
「叶いそうにも無い事を目標にするな」
「叶いますよ!!何ですか最初から叶わないとかって!」
 ふにょりと軽くリシェの柔らかな頰を抓る。それでもリシェは全く動じずに無表情のままで「何でそう言い切れるんだ」と問う。
 自分は全くそのようなつもりは無い。考えた事も無い。
 逆にラスが勝手に盛り上がっているだけなのだ。
 滑らかなリシェの頰をすりすりと撫で、にっこりと無邪気な笑みを零すラスは「だって」と話しだした。
「最初に会った時より先輩、俺と仲良くなってきたから」
「………」
 そりゃ慣れてきたから当然だ、と口答えをするリシェ。
「じゃあ…そうだなあ、結婚はまだ無理だけど…何を目標にしようかなあ。先輩ったら照れ屋だし…うーん」
 もにゅもにゅと頰を弄られているリシェは、無言のままで手を離してくれないものかとラスを見上げていた。
 しばらくすると、彼はぱっと表情を明るくする。
「じ、じゃあこれはどうですかね!?先輩とエッチ出来る関係になりたいとか…!」
 めちゃくちゃ名案だと言わんばかりの彼に対し、リシェは一旦頭を後ろへ引いた後に思いっきり顎に向けて激しく頭突きをした。
 ごつりと鈍い音がする。
「痛ぁああっ!せ、先輩!何するんですか!」
 折角いい目標だと思ったのに!と痛みに少し涙を滲ませてラスは喚いた。
 その一方で、リシェは怒りながら突っ込む。
「だから無理な事を目標にするな!!」
「無理じゃないもん!!」
「いや、無理だ!!無理無理、絶対無理!!」
「だってキスはしたじゃないですか!可能性はあるでしょう!」
「自惚れるな!無理なものは無理だ!」
 ラスは自分の可能性を訴えを主張し、リシェはその主張をばっさりと切り捨てていく。
「ふざけるなよ!」
「ふざけてないです!先輩だって満更でも無いでしょう!」
 二人の無理じゃない、無理だというやるだけ無駄な言い合いは、この先夕方近くまで続いていた。
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