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そのじゅうご
変態極まりない、更に変態的な変質者
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「さあ、やってきました!先輩といちゃいちゃしたくなる周期、第二弾です!」
またか…とリシェはにこにこしながら再び言い出してきたラスをうんざりしながら注目した。昼休みの屋上では他の生徒達も食事後の休憩を楽しんでいる最中。
スティレンも毎回毎回よくやるよと呆れながら、紙パックのアセロラドリンクを吸い込んでいた。
「こないだ紛らわしい事しといて、まだやる気なの?」
「あれはマッサージ!誤解したのはそっちだろー?」
何を想像したのかなー?と悪戯っぽい表情で突っ込まれたスティレンは、顔をかあっと真っ赤にしてしまった。
「まっ…紛らわし過ぎるんだよ!!あれはっ!!」
大体マッサージを施されたリシェもやけに色気のある発言をするから混乱するんだ、と怒りだす。
まあ、確かにそそられる喘ぎだったなあとラスはあの時の事を反芻する。
「先輩はマッサージに弱い事が分かりました」
「………」
再び両手をわきわきさせてくるラスを見るなり、リシェは眉を寄せながらじりじり後ろへ退いた。もうやらなくてもいいと言いながら。
マッサージをされると気持ちいいのだがくすぐったいのもあって全身が脱力してしまうのだ。前回も施された後、ふにゃふにゃに骨抜きされた状態で何度も頰やら唇やらに軽めのキスの嵐に見舞われてしまい、好き放題に人を弄るなと喚いてしまった。
ただでさえ構われるのが苦手なのに。
「もう変態だよね、変態。お前に近付いてくる奴って、全員変態属性の人間しか居ないねリシェ」
小馬鹿にしたようなスティレンは、ハッと笑いながら言った。
「その中にお前も含まれているぞ。お前は一体何を言っているんだ?自分だけがまともだと思っていたら大間違いだぞ」
日に日にリシェの毒舌が酷くなっていくのは、同時に周囲の人間が変態色に染まっていく為なのだろうか。
一緒くたにされたスティレンにしては、たまったものではないだろう。むかあっときたらしく、「っはあぁああああ!?」と反論の狼煙を上げる。
「俺も変態と同じだって!?冗談じゃないよ、何でこの世界一美しくて真面目で、センスも抜群なこの俺がおかしげな奴らと仲良く肩を並べなきゃならないのさ!?お前、目腐ってるんじゃないの!?」
また始まったよー、とラスは背後からリシェをそっと抱き締める。どさくさに紛れて抱き着くな!と怒りながら身を捩るリシェ。
こいつが一番の変態である。
うぐうぐと呻いてラスの腕から逃れようとするが、蛸の足のようにくっついてなかなか取れない。
「…てか、俺よりこいつだろ変態なの!何リシェにべたべたとひっついてるのさ、磁石みたいに!!」
「俺は先輩が好きなだけだもん。こうして常に先輩の感触と匂いを感じたいの!恋するってこういう事だと思う!」
「恋するってか…あんたのしてる事ってあれでしょ、人様の脱いだ服をひたすら嗅いでるのと同じだろ!!」
「ええ…」
自分の腕の中で蠢くリシェの横顔をちらりと見た後、ラスは「同じかな…」と疑問符を投げかける。
「同じだよ!!あんた以上に変態なんて居ないと思うけどね!!」
ラスの中で暴れているリシェのポケットから、ハンカチが落下した。風に煽られ、軽い素材のハンカチはふわりと舞い上がって持ち主から離れてしまう。
ああっ、とリシェはハンカチを取り戻そうとラスの腕から離れたその時。
コツンコツンと生徒達の靴の音ではない足音がした。
「あっ」
靴音が一旦止まる。リシェは飛ばされたハンカチがその靴音の主の足元に引っかかったのを確認すると、無事に拾われた事に安堵しながら顔を上へと向けた。
スーツに真っ白い白衣姿の青年。
「こんにちは、リシェ。ここでお会いするなんて運命でしょうか?」
「あ…ロシュ、さま」
言いながらリシェは何故様付けをしてしまうのだろうかと思わずにはいられなかった。謎の癖がついているのだ。
保健医ロシュはハンカチの主がリシェだと知ると、その美しく端正な顔を笑みに変えた。その瞬間。
「ええええっ!?何、何してるんですか!?」
彼はおもむろにそのハンカチを大切そうに両手で持ち、いきなり嗅ぎ始めてしまう。
リシェはがああんとショックを受けた。
「だ、だってあなたの匂いがこもった所有物ですよ!?これを嗅がずにはいられますか!!」
「や、やめて下さい!!何で俺!?」
「私は慢性的なリシェ不足なんです!!むしろこれを下さい!!代わりに何かをお渡ししますから!!」
ロシュはリシェのハンカチを胸元に押し付けながら懇願する。
リシェの目には、ロシュは教師の姿をした変質者にしか見えなくなっていた。
「いっ、いらないです!!もうハンカチあげます!だから俺の前から居なくなって下さい、怖いから!!」
「そんな、リシェ!!居なくなれだなんて!」
「だって怖過ぎるんだ、人様のハンカチをいきなり嗅ぐなんて!!お願いだからやめて下さい、ロシュ様!」
うわーんと泣き出すリシェ。
二人のやり取りを見ていたラスとスティレンは、突然沸いてきたハイレベルなマニアに呆気に取られてしまう。
しばらく様子を眺めていたが、スティレンは不意に口を突いて言葉を放った。
「ねぇ、ラス。あんたのしてる事はあれと同じなんだよ。分かる?」
分かった?このド変態、と。
スティレンに指摘されたラスは、心底嫌そうな顔であいつと一緒にしないでよ…と反論した。
またか…とリシェはにこにこしながら再び言い出してきたラスをうんざりしながら注目した。昼休みの屋上では他の生徒達も食事後の休憩を楽しんでいる最中。
スティレンも毎回毎回よくやるよと呆れながら、紙パックのアセロラドリンクを吸い込んでいた。
「こないだ紛らわしい事しといて、まだやる気なの?」
「あれはマッサージ!誤解したのはそっちだろー?」
何を想像したのかなー?と悪戯っぽい表情で突っ込まれたスティレンは、顔をかあっと真っ赤にしてしまった。
「まっ…紛らわし過ぎるんだよ!!あれはっ!!」
大体マッサージを施されたリシェもやけに色気のある発言をするから混乱するんだ、と怒りだす。
まあ、確かにそそられる喘ぎだったなあとラスはあの時の事を反芻する。
「先輩はマッサージに弱い事が分かりました」
「………」
再び両手をわきわきさせてくるラスを見るなり、リシェは眉を寄せながらじりじり後ろへ退いた。もうやらなくてもいいと言いながら。
マッサージをされると気持ちいいのだがくすぐったいのもあって全身が脱力してしまうのだ。前回も施された後、ふにゃふにゃに骨抜きされた状態で何度も頰やら唇やらに軽めのキスの嵐に見舞われてしまい、好き放題に人を弄るなと喚いてしまった。
ただでさえ構われるのが苦手なのに。
「もう変態だよね、変態。お前に近付いてくる奴って、全員変態属性の人間しか居ないねリシェ」
小馬鹿にしたようなスティレンは、ハッと笑いながら言った。
「その中にお前も含まれているぞ。お前は一体何を言っているんだ?自分だけがまともだと思っていたら大間違いだぞ」
日に日にリシェの毒舌が酷くなっていくのは、同時に周囲の人間が変態色に染まっていく為なのだろうか。
一緒くたにされたスティレンにしては、たまったものではないだろう。むかあっときたらしく、「っはあぁああああ!?」と反論の狼煙を上げる。
「俺も変態と同じだって!?冗談じゃないよ、何でこの世界一美しくて真面目で、センスも抜群なこの俺がおかしげな奴らと仲良く肩を並べなきゃならないのさ!?お前、目腐ってるんじゃないの!?」
また始まったよー、とラスは背後からリシェをそっと抱き締める。どさくさに紛れて抱き着くな!と怒りながら身を捩るリシェ。
こいつが一番の変態である。
うぐうぐと呻いてラスの腕から逃れようとするが、蛸の足のようにくっついてなかなか取れない。
「…てか、俺よりこいつだろ変態なの!何リシェにべたべたとひっついてるのさ、磁石みたいに!!」
「俺は先輩が好きなだけだもん。こうして常に先輩の感触と匂いを感じたいの!恋するってこういう事だと思う!」
「恋するってか…あんたのしてる事ってあれでしょ、人様の脱いだ服をひたすら嗅いでるのと同じだろ!!」
「ええ…」
自分の腕の中で蠢くリシェの横顔をちらりと見た後、ラスは「同じかな…」と疑問符を投げかける。
「同じだよ!!あんた以上に変態なんて居ないと思うけどね!!」
ラスの中で暴れているリシェのポケットから、ハンカチが落下した。風に煽られ、軽い素材のハンカチはふわりと舞い上がって持ち主から離れてしまう。
ああっ、とリシェはハンカチを取り戻そうとラスの腕から離れたその時。
コツンコツンと生徒達の靴の音ではない足音がした。
「あっ」
靴音が一旦止まる。リシェは飛ばされたハンカチがその靴音の主の足元に引っかかったのを確認すると、無事に拾われた事に安堵しながら顔を上へと向けた。
スーツに真っ白い白衣姿の青年。
「こんにちは、リシェ。ここでお会いするなんて運命でしょうか?」
「あ…ロシュ、さま」
言いながらリシェは何故様付けをしてしまうのだろうかと思わずにはいられなかった。謎の癖がついているのだ。
保健医ロシュはハンカチの主がリシェだと知ると、その美しく端正な顔を笑みに変えた。その瞬間。
「ええええっ!?何、何してるんですか!?」
彼はおもむろにそのハンカチを大切そうに両手で持ち、いきなり嗅ぎ始めてしまう。
リシェはがああんとショックを受けた。
「だ、だってあなたの匂いがこもった所有物ですよ!?これを嗅がずにはいられますか!!」
「や、やめて下さい!!何で俺!?」
「私は慢性的なリシェ不足なんです!!むしろこれを下さい!!代わりに何かをお渡ししますから!!」
ロシュはリシェのハンカチを胸元に押し付けながら懇願する。
リシェの目には、ロシュは教師の姿をした変質者にしか見えなくなっていた。
「いっ、いらないです!!もうハンカチあげます!だから俺の前から居なくなって下さい、怖いから!!」
「そんな、リシェ!!居なくなれだなんて!」
「だって怖過ぎるんだ、人様のハンカチをいきなり嗅ぐなんて!!お願いだからやめて下さい、ロシュ様!」
うわーんと泣き出すリシェ。
二人のやり取りを見ていたラスとスティレンは、突然沸いてきたハイレベルなマニアに呆気に取られてしまう。
しばらく様子を眺めていたが、スティレンは不意に口を突いて言葉を放った。
「ねぇ、ラス。あんたのしてる事はあれと同じなんだよ。分かる?」
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