上 下
16 / 50

その16 第6話

しおりを挟む
 「この間はごめんね。お給料気持ちサービスしてます。エステも受けさせてもらったし。」

 今日はお給料日。封筒には、確かに思っていた以上の金額が入っている。僕は領収書にサインして橘さんに渡した。



 「すっごい良かった~。遥さんにスクールのことだけじゃなくって、子育てのことまできいてもらっちゃった。今度から自腹で行かせてもらうからね。そうそう、ハイ・キャッスルって離乳食までやってるのね、びっくりしたわ。」

「女の人の人生に必要なことは殆んどやってますよ。」

「華蓮にはもうちょっと先なのにサンプルもたくさんくださって。千早くんからもお礼言っておいてね。あ、スープのサンプルももらったんだけど、同じの榎本さんにもあげたんだってね。めちゃくちゃ喜んでたよ。」

 「ほんとですか?」

 榎本さんの名前に思わずときめく。



 「もらってすぐ飲んだんだって。ここでの匂いが忘れられなかったらしいよ。気に入っていくつかスーパー回ったらしいんだけど、ゲットできなかったからまた売ってるところ聞いておいてって言われてたんだった。」

 「あ・・。」

 お店に出るのは来週の水曜からだ。正確な日付を伝えておけばよかったなあ。



でもスーパー回ったって、独身なのかな?

本日二度目のときめき。



いやいや、独身とは限らない。既婚者で奥さんも働いていればスーパーのひとつやふたつ行くのは当たり前。



 「発売、来週の水曜からなんです。せっかく買おうとしてくださったのにごめんなさい、って伝えていただけますか?あっ、もしよければ僕が社員価格でお渡しできますからっていうのも。榎本さんがOKなら田所さんに預けてもいいでしょうか。」

 「いいと思うよ。榎本さんと田所さんに話してみる。夕凪にもありがとうね。喜んでた。私、定価払うからケースで欲しいな。」

 相変わらずお弁当を食べる時間はまちまちだけど、付けたスープは残すことなく飲んでくれている。

 そして橘さんにわざわざ感想を言ってくれてるのだから、本当にそう思ってくれていると信じたい。

 嬉しさと同時に安心感が胸に広がっていく。



 子供にあったかいご飯を食べさせることが出来たお母さんは、こんな気持ちなのかな。



って僕の方が年下だけど。



 そして今日からは第6話。



 “自分が変わっていくことを実感した芹那は、今まであまり身の入らなかった勉強にも積極的に取り組むようになる。全く決まっていなかった進路も、自分の身体が変わってきたことから健康に関することを学べる大学を受験することに決め、塾で資料を探す。そのことをテイラーに告げると、とても喜んでくれたものの、自分に教えられることはもうない気がすると言われてしまう。お金をもらっていることもあり、レッスンはそろそろ最後にしたほうがいいのではと言うテイラーに対し、芹那は思わず、好きな人が振り向いてくれるまで継続してほしいとお願いする。テイラーのアドバイスが途切れてしまうことで、今の自分史上最高の状態が終わってしまう気がしたからだ。”



 ゆんちゃんも言っていたように、連載開始時には全く冴えなかった芹那。

 その時の『月刊リコリス』を引っ張り出して比べるまでもなく、芹那は別人みたいに変わっている。

 全体的にシャープになり、目に力が宿って来た。少し猫背だった姿勢も今ではピンと背筋を伸ばし、歩き方も綺麗。目標を見つけて、頑張っている姿は美しい。とっても魅力的だ。



 そして、それが分かるように描けるくれあセンセイの画力は、しみじみ素晴らしい。



 僕、スクールに潜り込ませてもらおうかな。



同じ時期に失恋したのに、いつの間にか芹那は僕のずっと前にいる気がして、むずむずしてきた。



アプリにはまだ触れないけど、次の機会に備えて準備するのはあり、だよね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王子様と魔法は取り扱いが難しい

南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。 特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。 ※濃縮版

帝国皇子のお婿さんになりました

クリム
BL
 帝国の皇太子エリファス・ロータスとの婚姻を神殿で誓った瞬間、ハルシオン・アスターは自分の前世を思い出す。普通の日本人主婦だったことを。  そして『白い結婚』だったはずの婚姻後、皇太子の寝室に呼ばれることになり、ハルシオンはひた隠しにして来た事実に直面する。王族の姫が19歳まで独身を貫いたこと、その真実が暴かれると、出自の小王国は滅ぼされかねない。 「それなら皇太子殿下に一服盛りますかね、主様」 「そうだね、クーちゃん。ついでに血袋で寝台を汚してなんちゃって既成事実を」 「では、盛って服を乱して、血を……主様、これ……いや、まさかやる気ですか?」 「うん、クーちゃん」 「クーちゃんではありません、クー・チャンです。あ、主様、やめてください!」  これは隣国の帝国皇太子に嫁いだ小王国の『姫君』のお話。

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

子悪党令息の息子として生まれました

菟圃(うさぎはたけ)
BL
悪役に好かれていますがどうやって逃げられますか!? ネヴィレントとラグザンドの間に生まれたホロとイディのお話。 「お父様とお母様本当に仲がいいね」 「良すぎて目の毒だ」 ーーーーーーーーーーー 「僕達の子ども達本当に可愛い!!」 「ゆっくりと見守って上げよう」 偶にネヴィレントとラグザンドも出てきます。

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

溺愛

papiko
BL
長い間、地下に名目上の幽閉、実際は監禁されていたルートベルト。今年で20年目になる檻の中での生活。――――――――ついに動き出す。 ※やってないです。 ※オメガバースではないです。 【リクエストがあれば執筆します。】

処理中です...