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第一章 初心者冒険者編
15話 新たなる一歩
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“元”天環の騎士団のメルクーアと話しをするシルトたち。
団長のことを心配しているメルクーアは、王国屈指の騎士とは思えない、普通の女性のように見えた。
こういうレベルに達している人間でも、他の人と何も変わらないんだなと三人は実感させられた。
「まあ、私のことはこれぐらいで!」
メルクーアはシンミリとした雰囲気を変えるために明るく努めている。
「あなたたちはこの後どうする予定なの?」
「そうですね……一応依頼は達成したことになったので、アンファングの街にある冒険者ギルドへ向かうつもりです。俺たちは何もやってないですけど」
「まだそんなこと言ってるの? あなたたちのおかげでこの村は大事無く済んだのよ。胸を張りなさい!」
「そうですね……」
やはり、シルト、ロゼ、リヒトの三人は今回の依頼において、自分たちの不甲斐なさを払拭することが出来ないようだ。
いくらメルクーアや村人から称賛や感謝をされても、自分たちの力不足は自分たちが一番分かっているということなのだろう。
「最初から強い人間なんていないわ」
「……え?」
三人の様子を見かねたメルクーアは違う方法で三人を激励することにした。
「あなたたちは確かに弱いかもしれない。ゴブリンの軍勢に手も足も出なかったのは事実だもの」
「……」
「でもね、あなたたちは必ず強くなるわ。この私が保証する。だって、あなたたちは自分の実力をよく分かっているもの。世の中にはね、自分の力を過信して無謀に命を散らす人もいれば、自分の才能に胡坐をかいて人を見下すことしかできないような残念な人もいる。でもあなたたちは、今の自分たちにできる最大限のことをしようと努力をしたし、誰かのために頑張ることが出来る優しい心を持ってる。そういう人には必ず結果と支持者が後をついてくるわ」
そう言ってメルクーアは三人に笑いかける。
最初から強い人間はいない、今の自分にできることをする、その言葉が三人の心に深く染み込んでいく。
今の自分にできることは、終わってしまった過去を悔やむことではなく、過去の自分を糧にして未来へつなげることである、と。
「メルクーアさん!」
「どうしたの?」
「ありがとうございました! 俺たち、一歩前に進めそうです!」
「そう。頑張ってね! 応援してるわ、あなたたちのこと」
メルクーアからの激励の言葉で、三人は自分たちの心の指針を見つけることができた。
今後、どんな困難が立ちはだかろうとも、どうしたらいいのか分からず先が見えなくなっても、迷わずに進むことができるだろう。
今の自分にできることをする、それを心の奥に秘めて。
「それから、あなたたちに一つだけ聞きたいことがあるんだけど……」
爽やかな表情を浮かべる三人にメルクーアが問い掛ける。
「何ですか?」
「あなたたちが使っている武器は、わざとそれを使っているの?」
「武器……ですか? 確かに、おんぼろの武器ですけど俺たち愛用の武器なんです!」
「愛用?」
「はい! 冒険者になるまでずっとこの武器を使って修行してたんです!」
「私たちの育ての親、師匠にあたる人が、自分たちでお金を稼いで武器を買い替えるまではその武器を使いなさい、っておっしゃったんです!」
「そうだったの……大事な思い出が詰まった武器だったのね」
三人は幼いころからとある人の下で生活をしていた。
その人は三人にいろいろなことを教えてくれた。
武器の扱い方もその中の一つだ。
そして、武器の修行にあたって、冒険者として依頼をこなしお金を稼ぐまではこの武器を使いなさい、と教えたのだ。
三人はその教えを守って現在の武器を使い続けているのだ。
「ずいぶんと厳しいお師匠様ね」
「そうですか? 確かに厳しいときもあったけど優しい方でしたよ! なあ?」
「ええ。剣や槍の扱いにも長けていたし、魔法も一流だった。とても尊敬できる方です!」
「分からないことは丁寧に教えてくれる優しい師匠です!」
「信頼しているのね。厳しいのも愛情ゆえってことかしらね」
「……?」
「単刀直入に言うわね。あなたたちの武器、呪われてるわよ。」
「「「……えー!!!」」」
メルクーアからの突然の宣告に驚愕する三人。
武器が呪われていると言われればそういう反応になるのも仕方がないことだろう。
「呪われてる!? 何かの間違いじゃないんですか!?」
「そうですよ! 私たち体に異常なんてないですよ!?」
「僕だって元気ですよ!? 呪いなんて……」
「嘘じゃないわよ。私も鑑定士ではないから、ちゃんとしたことまでは分からないけど、あなたたちの武器は間違いなく呪われてるわ」
「そんな……」
三人はあからさまに落胆を示した。
今まで信頼していた師匠に裏切られたと考えているのだろう。
「悲観しないの! さっきも言ったけど愛情ゆえのことだと思うわ!」
「愛情?」
「あなたたちに力を蓄えてもらいたかったんでしょうね。冒険で命を落とさないように。あなたたちの武器に掛かっている呪いは、おそらく身体能力や魔力を制限するものだと思うわ。例えば、魔力量を半減するとか、筋力を低減するとか。今までその武器で困難を乗り越えてきたのなら、あなたたち武器を買い替えたら一皮も二皮もむけるかもしれないわね!」
三人は武器に込められた師匠からのメッセージに感銘を受けた。
そこまで自分たちのことを思ってくれていたのかと。
そして、三人は師匠からの思いに感動しながらも、武器の買い替えを決意するのだった。
団長のことを心配しているメルクーアは、王国屈指の騎士とは思えない、普通の女性のように見えた。
こういうレベルに達している人間でも、他の人と何も変わらないんだなと三人は実感させられた。
「まあ、私のことはこれぐらいで!」
メルクーアはシンミリとした雰囲気を変えるために明るく努めている。
「あなたたちはこの後どうする予定なの?」
「そうですね……一応依頼は達成したことになったので、アンファングの街にある冒険者ギルドへ向かうつもりです。俺たちは何もやってないですけど」
「まだそんなこと言ってるの? あなたたちのおかげでこの村は大事無く済んだのよ。胸を張りなさい!」
「そうですね……」
やはり、シルト、ロゼ、リヒトの三人は今回の依頼において、自分たちの不甲斐なさを払拭することが出来ないようだ。
いくらメルクーアや村人から称賛や感謝をされても、自分たちの力不足は自分たちが一番分かっているということなのだろう。
「最初から強い人間なんていないわ」
「……え?」
三人の様子を見かねたメルクーアは違う方法で三人を激励することにした。
「あなたたちは確かに弱いかもしれない。ゴブリンの軍勢に手も足も出なかったのは事実だもの」
「……」
「でもね、あなたたちは必ず強くなるわ。この私が保証する。だって、あなたたちは自分の実力をよく分かっているもの。世の中にはね、自分の力を過信して無謀に命を散らす人もいれば、自分の才能に胡坐をかいて人を見下すことしかできないような残念な人もいる。でもあなたたちは、今の自分たちにできる最大限のことをしようと努力をしたし、誰かのために頑張ることが出来る優しい心を持ってる。そういう人には必ず結果と支持者が後をついてくるわ」
そう言ってメルクーアは三人に笑いかける。
最初から強い人間はいない、今の自分にできることをする、その言葉が三人の心に深く染み込んでいく。
今の自分にできることは、終わってしまった過去を悔やむことではなく、過去の自分を糧にして未来へつなげることである、と。
「メルクーアさん!」
「どうしたの?」
「ありがとうございました! 俺たち、一歩前に進めそうです!」
「そう。頑張ってね! 応援してるわ、あなたたちのこと」
メルクーアからの激励の言葉で、三人は自分たちの心の指針を見つけることができた。
今後、どんな困難が立ちはだかろうとも、どうしたらいいのか分からず先が見えなくなっても、迷わずに進むことができるだろう。
今の自分にできることをする、それを心の奥に秘めて。
「それから、あなたたちに一つだけ聞きたいことがあるんだけど……」
爽やかな表情を浮かべる三人にメルクーアが問い掛ける。
「何ですか?」
「あなたたちが使っている武器は、わざとそれを使っているの?」
「武器……ですか? 確かに、おんぼろの武器ですけど俺たち愛用の武器なんです!」
「愛用?」
「はい! 冒険者になるまでずっとこの武器を使って修行してたんです!」
「私たちの育ての親、師匠にあたる人が、自分たちでお金を稼いで武器を買い替えるまではその武器を使いなさい、っておっしゃったんです!」
「そうだったの……大事な思い出が詰まった武器だったのね」
三人は幼いころからとある人の下で生活をしていた。
その人は三人にいろいろなことを教えてくれた。
武器の扱い方もその中の一つだ。
そして、武器の修行にあたって、冒険者として依頼をこなしお金を稼ぐまではこの武器を使いなさい、と教えたのだ。
三人はその教えを守って現在の武器を使い続けているのだ。
「ずいぶんと厳しいお師匠様ね」
「そうですか? 確かに厳しいときもあったけど優しい方でしたよ! なあ?」
「ええ。剣や槍の扱いにも長けていたし、魔法も一流だった。とても尊敬できる方です!」
「分からないことは丁寧に教えてくれる優しい師匠です!」
「信頼しているのね。厳しいのも愛情ゆえってことかしらね」
「……?」
「単刀直入に言うわね。あなたたちの武器、呪われてるわよ。」
「「「……えー!!!」」」
メルクーアからの突然の宣告に驚愕する三人。
武器が呪われていると言われればそういう反応になるのも仕方がないことだろう。
「呪われてる!? 何かの間違いじゃないんですか!?」
「そうですよ! 私たち体に異常なんてないですよ!?」
「僕だって元気ですよ!? 呪いなんて……」
「嘘じゃないわよ。私も鑑定士ではないから、ちゃんとしたことまでは分からないけど、あなたたちの武器は間違いなく呪われてるわ」
「そんな……」
三人はあからさまに落胆を示した。
今まで信頼していた師匠に裏切られたと考えているのだろう。
「悲観しないの! さっきも言ったけど愛情ゆえのことだと思うわ!」
「愛情?」
「あなたたちに力を蓄えてもらいたかったんでしょうね。冒険で命を落とさないように。あなたたちの武器に掛かっている呪いは、おそらく身体能力や魔力を制限するものだと思うわ。例えば、魔力量を半減するとか、筋力を低減するとか。今までその武器で困難を乗り越えてきたのなら、あなたたち武器を買い替えたら一皮も二皮もむけるかもしれないわね!」
三人は武器に込められた師匠からのメッセージに感銘を受けた。
そこまで自分たちのことを思ってくれていたのかと。
そして、三人は師匠からの思いに感動しながらも、武器の買い替えを決意するのだった。
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