越えられない壁で僕らの幸せは・・・

綾瑪 東暢

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向き合う時

2人を守るために:3

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 「千冬せんと。こっちも正直に話すから千冬も正直に話して。」 
 その言葉に千冬はなんのこと?と疑問を持つ。筒夏つつなはため息をついて、
 「はぁ・・」
 「筒夏。僕はあいつのこと知ってるから大丈夫。」
 隣に座っているのは志飛しとだ。
 
 「・・・志飛様?」
 「わかるか。」
 「はい。」
 「ん?2人って知り合い?」
 筒夏は頭を抑えながらんんん?と唸る。
 「顔を合わせたのは初めてだ。」
 「顔?」
 「志飛様とはよく、電話していたんだ。」

 綾子あやこがいないことで敬語が外れている。

 「末寺まつじ千冬。いつ、おかしいと思った?」
 「・・つなぎの跡取りは志飛様だって聞いてた、その時から少しだけあれ?とは思ったよ。だって志飛様は男だから。でも、志飛様から男って聞かされただけだから、もしかしたら女だけど男って言ってるのかもしれないってそう思うようにしたんだ。でも、志綾様と喋った時、志飛様の声に聞こえたんだ。会話するだけなら女性の声に聞こえる。でも、よく聞くと志飛様の声にしか聞こえなくなった。だから、おかしいなって聞きたいって思った。」

 千冬は苦笑いをして「ごめんね」と言う。
 
 「謝る必要はない・・。僕は産まれは男だ。だが、育ちは女。」

 千冬と電話を始めたのは小学生の時。不登校になり、話す相手が欲しかった。そんな時に話し相手になってくれたのが末寺千冬だった。千冬の前では男でいられた。話せる時間は短かったけど、志飛の中で千冬との会話だけがあの時の希望だった。

 「それは、繋の跡取りになるため?」
 「あぁ。」
 「そっか・・・」

 千冬は目をつぶる。まつ毛が長く、綺麗な目をしている。

 「千冬は綾子に行ってないみたいだな。」
 「えっ・・」

 目をつぶっていた千冬が目を開ける。

 「志飛?」
 筒夏が志飛を見る。
 「筒夏にも行ってないのか?」
 「・・・筒夏にも言ってない。」
 「だから、正直に話してか・・」
 「志飛?」

 意味がわからないと筒夏は志飛を見る。
 
 「筒夏。最初の正直に話してってどう言う意味で言ったんだ?」
 「それは・・・」
 「筒夏。気づいているんだろ。千冬が自分にずっと隠し事をしているって。それをどうにか自分から言って欲しかったから出た言葉だろ?」

 「・・・」
 「つーちゃん。志飛様。」
 「どうなんだ?千冬。」

 目の前の千冬は手を握る。少し震えている気がする。

 「志飛様。志飛様にとってとの秘密は簡単にバラしても良いものなのですね。」


 一人称が、言葉遣いが・・・変わった。
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