越えられない壁で僕らの幸せは・・・

番外編 （本編とは多分関係ない）

修学旅行:25

　「や、やめた方が。少なからず見てる人いると思うから」
　珍しく悠華ゆうかが口を出す。　
　「あぁ？何か文句あるの？」
　周りを気にした様子もなく傘澄かさすみは暴言を吐く。見越した志綾しあが立ち上がって
　「場所を変えましょうか。鎌崎かまさきさん。時間は大丈夫ですか？」
　「志綾とはなら何時間でお話ししていたいよ」
と引き攣った笑みを見せ言う。隣で話を聞いていた雫しずくは苛立ちがこもった手で志綾の手を握った。志綾は驚きはしたが顔に出さずただでそのままに握り返した。そこには優しさと「ありがとう」と言う気持ちが含まれている。
　「雪都ゆきとさん。お願いがあります。」
　「なにー？」
　「ここに残って先生に伝言をお願いします。」
　「うん、いいよー」
　「勝手をすることを許してください。学年が変わっても問題ありません。ただ私たちの言い訳もちゃんと聞いてから決めてほしいですと。覚えましたか？お願いします。」
　「はーい、了解。」
　「どこに行く気だ？」
　「流石にどこかのお店でお話は出来ないので宿泊していた場所に戻ろうと思います。まだ、先生達は泊まってるかもしれないので」
　「分かった、班員に抜けることを言ってから俺は行く。それまで話を始めるな。それから鎌崎かまさき。お前も仕事を終わらせてからにしろ。」
　「っ。」
　鎌崎は後ろを振り返る。急いでこっちに走ってくる人影。
　「傘澄！仕事はまだ終わってないですよ！」
　「ま、マネージャー！ご、ごめんなさい。」
　「全く、こんな髪にして。なに？なにがあったの？」
　「な、なにも。ただ知り合いを見つけて話し込んでただけで。この後まだ積もる話があるから話そうかなって、仕事が終わったらだよ？確か時間あったよね？」
　「・・・なら、今の、仕事を完璧にこなして来て。さっきみたいな失敗は許さないから。」
　「う、うん！」

　傘澄はそのまま撮影現場に戻る。マネージャーだけがこちらを見てお辞儀をして傘澄を追いかけた。

　「雫さん。巻き込んです・・

　雫を見て志綾は何も言えなくなってしまった。雫が泣いていた。何も言わず、志綾は雫を抱きしめた。
　「し、志綾ちゃん・・・」
　「巻き込んでしまいすみません。」
　「うんん。違うの。巻き込まれたことに泣いてるじゃなくて。志綾ちゃんに謝らせることができなかった。」

　志綾の体を雫が抱きしめる。志綾の方に顎を乗せて
　「ありがとう志綾ちゃん」