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向き合う時
私は(4)
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突然変わった物槨令に戸惑おう。
「雫さん?どうしたんですか?」
「どうしたって何?」
「・・・雫さん。私はその質問に答えられません。」
「なんで?」
「それはっ」
志綾は困る。今まで2人の人に同じ質問をされた。葉椿と南恵。その2人には同じことを言った。でも、物槨令には何故かその言葉が出て来ない。
「だって・・・だって」
物槨令は志綾の答えを待つ。時間は刻一刻と過ぎていく。それは志綾を急かす凶器になる。
「早くっ早く答えなければ」
何秒、何分経ったのだろうか。志綾が考えていると。膝に乗っていた氷が静かに目を開けた。
「と、とー?」
「・・・私はっ」
氷が起きたことに志綾はまだ気がついていない。声も聞こえていない。
「し、雫さん、このお話はまた今度にしましょう?ねぇ?」
「ダメだよ。志綾ちゃん。志綾ちゃんは男?女?どっちになりたいの?」
氷は心の中で頷いた。今の状況を全て理解した。氷は起き上がった。志綾はびっくりして「氷。起きたのか」と志飛が出てきた。でも、すぐに志綾に戻る。
「氷さん。良かったです。氷さん。雫さんに謝ってください。謝れば、今回のこと、学校側、両親に秘密にしておきます。雫さんにも言って聞かせますから。」
なんとかこの状況を切り抜けたい志綾は氷にそう諭す。
「とー・・・志飛。」
氷は志綾の方を向く。
「氷さん・・・なんで?」
「志飛。雫に言っておいた方がいいんじゃない?」
「何を言っているんですか?氷さん。」
「そのさ。心から信頼していない人は敬語を使うみたいな、その考えて方やめたら?」
「こ、氷さ、ん・・・それはどう言うことでしょうか?」
どこか氷とはかけ離れた喋り方と口調。
「志飛。お前、本当は男になりたいんでしょう?・・・なりたいんじゃなくて・・・男に戻りたいか。」
その氷の言葉に志綾は涙を流す。
「いいえ。そんなこと、私は今もこれから女性です。」
急いで涙を拭う。それでも止まらない。
「志飛。」
氷が志綾の腕を掴んで拭うのを辞めさせる。
これは本来、茶泉の役割だ。
でも、いま、目の前にいるのは氷だ。氷と物槨令だけだ。
「志綾ちゃん。私は、どんな志綾ちゃんでも大好きだから。無理してる志綾ちゃんを見たくないの。だから、教えて。志綾ちゃんはどっち?」
最後の、物槨令の最後の言葉に志綾の涙はもう止まらない。
「私は」
「雫さん?どうしたんですか?」
「どうしたって何?」
「・・・雫さん。私はその質問に答えられません。」
「なんで?」
「それはっ」
志綾は困る。今まで2人の人に同じ質問をされた。葉椿と南恵。その2人には同じことを言った。でも、物槨令には何故かその言葉が出て来ない。
「だって・・・だって」
物槨令は志綾の答えを待つ。時間は刻一刻と過ぎていく。それは志綾を急かす凶器になる。
「早くっ早く答えなければ」
何秒、何分経ったのだろうか。志綾が考えていると。膝に乗っていた氷が静かに目を開けた。
「と、とー?」
「・・・私はっ」
氷が起きたことに志綾はまだ気がついていない。声も聞こえていない。
「し、雫さん、このお話はまた今度にしましょう?ねぇ?」
「ダメだよ。志綾ちゃん。志綾ちゃんは男?女?どっちになりたいの?」
氷は心の中で頷いた。今の状況を全て理解した。氷は起き上がった。志綾はびっくりして「氷。起きたのか」と志飛が出てきた。でも、すぐに志綾に戻る。
「氷さん。良かったです。氷さん。雫さんに謝ってください。謝れば、今回のこと、学校側、両親に秘密にしておきます。雫さんにも言って聞かせますから。」
なんとかこの状況を切り抜けたい志綾は氷にそう諭す。
「とー・・・志飛。」
氷は志綾の方を向く。
「氷さん・・・なんで?」
「志飛。雫に言っておいた方がいいんじゃない?」
「何を言っているんですか?氷さん。」
「そのさ。心から信頼していない人は敬語を使うみたいな、その考えて方やめたら?」
「こ、氷さ、ん・・・それはどう言うことでしょうか?」
どこか氷とはかけ離れた喋り方と口調。
「志飛。お前、本当は男になりたいんでしょう?・・・なりたいんじゃなくて・・・男に戻りたいか。」
その氷の言葉に志綾は涙を流す。
「いいえ。そんなこと、私は今もこれから女性です。」
急いで涙を拭う。それでも止まらない。
「志飛。」
氷が志綾の腕を掴んで拭うのを辞めさせる。
これは本来、茶泉の役割だ。
でも、いま、目の前にいるのは氷だ。氷と物槨令だけだ。
「志綾ちゃん。私は、どんな志綾ちゃんでも大好きだから。無理してる志綾ちゃんを見たくないの。だから、教えて。志綾ちゃんはどっち?」
最後の、物槨令の最後の言葉に志綾の涙はもう止まらない。
「私は」
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