越えられない壁で僕らの幸せは・・・

向き合う時

今から

　「志綾しあ。今から追いかけるなんて言うなよ。」
　茶泉といが心配そうに肩に触れようとするが、志綾は避けるように振り返る。
　「茶泉様。流石にそんな無茶しませんよ。」
　苦笑いをして手を押さえる。
　「帰って、準備をしましょう。」
　「ああ。」
　「・・・茶泉様は家にいてもらいますからね」
　そう言って、そのまま校門を出る。
後から着いてきた夏なつは何もできずにただ校門を出て行く2人を見ていることしかできなかった。

　家に帰り、部屋に入った。スマホを取り出して駿河音するがねに電話をした。
　「唯央いお。今から言う女の子の居場所を探して欲しい。報酬は弾む、」
　電話に出た駿河音にそう言うが、唯央からの反応がない。
　「唯央？」
　「・・・」
　「唯央？」　
　駿河音は前々から不安定であったと志綾も気がついていた。でも、放置していた。
　使えないことに気がついた志綾は「家に後で行く」と言って電話を切った。
　「はぁ・・・」
　そう呟いて次に電話をかけたのは年髄ねずいだった。
　「もしもし。飛綾とあだ。お願いがある。今から言う女の子の居場所を教えてくれ。」
　「ごめんなさい。飛綾。今は調べることができない。」
　「何故だ？」
　「息子が、事故に遭って。今は一緒にいたいんだ。」
　年髄の口から息子と出たことに志綾はびっくりした。年髄の息子は志綾も当然知ってる。知らない間に何かあったのか、志綾は何も言わずに電話を切った。影かげは動いてくれるかもしれないだが電話はしなかった。

　「ついてない」
　
　一言呟いてスマホの位置情報を見る。物槨令ものかくれに無理矢理入れられたアプリ。近くの廃工場の場所が小さく点滅している。志綾は部屋を飛び出し、玄関の扉を開けようとした瞬間外から開いた。
　「夏さん。」
　夏がバックを三つ持って驚いた表情をしていた。
　「あ、バックありがとうございます。夏さんは茶泉様といてください。茶泉様は今、キッチンにいますから」　　
　そう言って玄関の門を通り過ぎようとした時夏が咄嗟に腕を掴んだ。　
　「怪我するなよ」
　本当は違うことを言おうとしていたことに志綾は気づかないふりをした。
　「はい！」と元気に言い。走って行ってしまった。