越えられない壁で僕らの幸せは・・・

綾瑪 東暢

文字の大きさ
上 下
132 / 281
向き合う時

二学期

しおりを挟む
 「おはようございます。今日から二学期が始まります。受験生として行動するべきことを考えてください」
 副担任の先生が担任に変わって言う。 
 「それから、志綾しあさん。後で職員室に来てください。」
 「あ、はい!」
 「志綾様何かしたの~?」
 「きっと志綾ちゃんを褒めると思いますよ。」
 二学期から物槨令ものかくれが戻って来た。
 志綾とは気まずくはならなかった。
 学校側ももう良いだろうということで物槨令を許した。
 「いやきっと昔に何かやらかしたこと怒られるんだな」
 荼泉といが頷きながら呟く。
 
 荼泉とも喋るようになった。
 「・・・・」
 「コラっ!そこの3人。静かにしなさい。」
 副担任が3人を指差して言う。
 「先生~。なんで志綾様を呼んだんですか~?」
 「あなた達には関係ありません。続けますよ。」
 雪都ゆきとにきっぱり言って視線を他の生徒に移した。
 志綾は斜め後ろを向く。後ろには手をさすっている夏輝斗かきとが無言で副担任を見ている。物槨令が志綾の肩をちょんちょんする。
 「志綾ちゃん。志綾ちゃん。」
 小声で喋りかけて来た物槨令に合わせて志綾も小声で喋った。
 「どうしましたか?」
 「職員室ついててもいい?」
 「いいですけど・・・何かありますか?」
 「そういうわけじゃないけど、一緒にいたいから」
 「分りました。一緒に行きましよう。」
 「わーい!しあちゃん、優しい。」
 「あーしずくさんー声が」
 「もう一度言う!そこうるさいぞ!何回言わせればすんだ!」
 「わわーごめんなさい」
 

 朝のホームルームが終わり志綾と雫は、教室を出て職員室に向かった。終始志綾は夏輝斗のことを見ていたが、雫に「志綾ちゃん早く行こう。」と言われて「はい」と声を上げて夏輝斗から視線を外した。

 職員室で言われたのは「昔に私のふりをして生徒の家に行ったことどうして言ってくれなかったんですか?」ということだった。すべての事情を話せなかったが、概ね話した。副担任は少しだけ納得したのかすぐに帰してくれた。教室に戻って夏輝斗の方を見てみると姿がなかった茶泉に聞いてみても「悪い、見てなかった」と雪都に聞いてみても「ごめんね~僕寝てた~」と。誰も夏輝斗を見ていなかった。

 トイレとかにでも行ってるのかと勝手に想像して、雫と席に着いた。

 だが、一限経っても夏輝斗は帰ってこなかった。探しに行こうと思ったが、荼泉に止められた。
 「どうしてですか?荼泉様。」
 「夏輝斗とは仲直りできてないんだろう?」
 「はい・・・あと筒夏つつなさんとも・・・」
 「夏輝斗とは離れたほうがいい。何が起こるか分からないからな」

 茶泉様がそんなこと言うと思わなかった。ただ追いかける気になれなかったのもまた事実だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

物語のその後

キサラギムツキ
BL
勇者パーティーの賢者が、たった1つ望んだものは……… 1話受け視点。2話攻め視点。 2日に分けて投稿予約済み ほぼバッドエンドよりのメリバ

目標、それは

mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。 今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。 無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して―― 最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。 死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。 生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。 ※軽い性的表現あり 短編から長編に変更しています

代わりでいいから

氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。 不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。 ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。 他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

処理中です...