越えられない壁で僕らの幸せは・・・

綾瑪 東暢

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向き合う時

手強くなる依頼

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 年髄ねずいが過去を振り返っていると急に「うわっ」と声を上げた。
 「かげ。驚かさないで」
 「・・・」
 「影、今日は早いな。」
 「・・・」
 「相変わらず、俺とは喋りたくないんだな。」
 「・・・」
 「喋りたくないなら脅かさないでくれるかな?」
 「・・・」
 影はそっぽを向いて年髄から離れた。2人は別々で違うことをする。
 住所の場所は3人の隠れ家的なところだった。
 年髄は机を整理してファイルに紙を挟んでいた。
 影はパソコンに向かい何か難しいことをしていた。

 「お待たせしました。」
 
 そこに声が響いた。
 「飛綾とあ。」
 「年髄さん。それと影は・・・」
 影に近づいてパソコンを覗く。
 「また会社のシステムに侵入しているのか・・・さすがだな」
 「飛綾、影。始めよう。」
 影は立ち上がって年髄がいる机に向かう。影を見てから飛綾もソファに座った。

 「とー、しー」
 影が紙をペラペラ仰ぎながら渡す。
 「そう言うところ影。飛綾がいる時しか喋らない。はぁ。」
 「僕は影のこと可愛いと感じる。」
 「とー。これ、目通しておいて・・いつか依頼するかもだから」
 「分かった。で、年髄さんの方は?」
 「俺のはこれ。前に一回情報収集してもらった奴のところ。」
 「子供がなんちゃらっていう?」
 「そう。子供をネットで売っている女性」
 「葉椿はつばか。」
 「しー、それはまだ依頼しないと言ってだはずだ。」
 「予定が変わったんだ。明日の夜中、もしかすると売っているところを見れるかもしれない」
 「じゃあその証拠をカメラに収めればいいってことか?」
 「違う。全力で阻止するだ。葉椿は災厄、殺しても良い。」
 「葉椿をか・・・」
 「とー?」
 「嫌なんでもいない。」
 数時間、3人は資料をまとめたり話し合ったりしていた。
 

 「とー。」
 影が飛綾を呼ぶ。
 「影?」 
 「とー、明日しーのやつより先にこれやってもらいたい。これは午前中でもできるやつだから・・・よろしく」
 「影。一応言っておくが・・僕受験生だから」
 「知ってる。でもとーなら楽勝でしょう?」
 「受験を舐めない方がいい。」
 「でも、これはやってもらわないと」
 紙を受け取って目を通す。
 「これは」
 「?」
 「難易度が高いな」
 紙書いてあった依頼は『刑務所に侵入して捕まってる大犯罪者を出す』こと。ただし誰も殺してはならない。
 「しかも、これ午前中にやらない方が・・・」
 「いや、午前中の方が警備体制は少ない」
 「本当か?」
 「情報収集はしーより得意。」
 「・・・」
 「?とー?」
 「懐かしいなぁと」
 「懐かしい?」
 「僕も昔ある人としーちゃん、とーくんと呼び合っていたから感慨深いな」
 「しーちゃんは飛綾?とーくんは・・・茶泉とい?」
 「そう」
 「影はなぜ俺たちのことそう呼び始めたんだっけ?」
 近くに来て言う年髄。
 「・・・しーはねーの方が良かった?」
 「そんなことはない。ただ気になっただけだ」
 「うーん?考えたことない。今の今まで。特に意味はない。」
 「初対面で名乗った時からこう呼んでいたから影にとって名前は重要ではないのかもな」
 「名前はただの文字。」 
 「世間的には名前は文字ではなく大切な人格の一部らしい。」
 「でも、実際とーはたくさん偽名を作ってるから本来の名前意味ない」
 「偽名を作るのは悪いことなのかもしれないな。」
 「2人はなにを語っているんだ。名前は大切だよ。俺が、私が存在する証になるからね。俺はここにいるだって」
 「でもさ・・・
 「まだ続けるのか」
 「でもさ・・・ここにいる証明をしたところで誰にするの?」
 「今日はやけに饒舌だな。誰か・・・うーん。周りの誰かに?」
 「周りの誰かって?」
 「そうだな、友人に?」 
 「友人に証明するの?ここにいる!って」
 「影!」
 「影・・・年髄さんが困ってる。」
 「まったく・・・影、名前は?」
 「影。」
 「本名」
 「秘密。」
 「そう言うことだ。」
 「??」
 「俺は名前を知りたい。でも影は言いたくない。でも、影はここにいるだろ?影と名乗ってだからここにいる証明ができる。俺が飛綾に『ここに影がいる。から影は生きてる』と言えば飛綾も影が誰か知ってるから頷けるだろ?名前が分からなければ『ここに名前の分からないやつがいる。だからそいつは生きてる』っ言っても誰を指しているかわからない。もしかしたら影を指していっているのかもしれない。でも名前を言わないから誰かわからない。ここにいる証明にならないだろ?」
 「難しいな。名前は」
 「家族から貰った宝物だと思えば良い。家族から」
 年髄は影の目を見たから1人頷いた。
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