上 下
105 / 278
本格的に

遠くに(2)

しおりを挟む
 一回。あやの入院先に志綾しあは行った。
 病室を覗くと窓から寂しそうに遠くを見ている綾がいた。
 「あ、志綾。」
 「こんにちは。」
 志綾に気づいた綾は頭を下げて挨拶した。
 「どうですか?体調の方は?」
 「いま落ち着いているわ」
 「よかったです。」
 「大家さんはどんな具合?」
 「お元気ですよ。綾さんが言った通り大家さんはみんなを笑顔にするお方ですね。」
 「えぇ。そうでしょう。」
 本当に嬉しそうな顔をして言う。
 「そういえば綾さん。今日、大家さんのところに行ったら白恵しろえと言うお方に会ったんですが・・・お知り合いですか?」
 「あぁ白恵君か・・・白恵君は兄みたいな存在。私と5歳さの子で。大家さんの息子さん。」
 「・・・白恵さんにだけでも言いませんか?」
 「言わないわ。」
 「綾さんがそう言うなら分かりました。」
 「それから、志綾。もうここには来ないで。貴方は綾なんだから。二人綾がいたらおかしいでしょう?貴方は私の変わり。ほら、早く帰って。綾。」
 「また、また来ますね」
 「もう。」
 綾は困った顔をした。でも笑顔を作って「来ちゃダメだからね」と言った。
 志綾が帰った後綾は窓まで立ち上がり帰る姿を見た。
 「ふふ。妹みたいな存在ね。」
 「なんだか嬉しそうですね。綾さん。」
 後ろから看護師さんが話しかけた。綾は「はい」と笑顔で返事をした。
 「私に妹みたいに可愛い存在が出来たんです。」
そう嬉しそうに呟いていた。とその時話を聞いていた看護師さんは志綾に言う。
 「綾さん、よく貴方のことを私に話していたんです。」
 聞いている志綾は看護師さんの手を取って「姉の側に最後までいてくれてありがとうございます。」と涙を流しながら笑顔を作って言う。
 綾は志綾が見舞いに来た五ヶ月後に亡くなった。
 大家はそのことを知らないまま志綾を綾だと思う。
 志綾は大家に申し訳なくて行くのを躊躇っていた。駿河音するがねのことがあり行く勇気が出た。だから五ヶ月ぶりに綾として大家に会いに行った。
 「大家さん。お久しぶりですね。」
 「ああそうだね。あやさん。」
 部屋に入って志綾丁寧に座った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

学園の天使は今日も嘘を吐く

まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」 家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

処理中です...