越えられない壁で僕らの幸せは・・・

本格的に

宮南瀬の罰

　宮南瀬みやせ　英斗えいとは自ら要かなめ家で働くことを選んだ。
　英斗は高校を卒業してすぐに付き合っていた人と結婚をし子供を作った。だかお金がない。
　そこで誰かが言っていた『要家で働けば安定した生活が送れる』を思い出した。
　英斗はすぐさま要家を尋ねた。

　「初めまして宮南瀬と言います。噂を聞きましてここで働きたいと思いまして」
　この時はまだ黒凪くなが当主になったばかりで側には黒凪の父親で元当主もいた。
　「凪なぎ。お前が決めろ」
　「は、はい・・・え～と・・」
　「凪。変われ。そんな遅いと舐められるぞ」
　「すみません」
　「宮南瀬と言ったな。」
　「はい」
　「ここで働く理由は？」
　「お金に困っていまして」
　「本来、ここで働くものは我々が選び信頼があるものと決めている。お前は我々に何をして信頼を見せてくれる？」
　黒凪、薫の父親要　黒こく。
　今は遠い田舎の方でゆっくり体を休めている。
　
　「私は医療学を専門に高校を卒業しました。もしよろしければ、私を要様と繋様両家の治療班として雇ってもらえれば成果を出しましょう。」
　「そうか・・・凪。どうする？」
　「わ、私ですか？私は・・・是非お願いしたいと思いす。」
　「凪が言うならそうしよう。両家の家の当主はもうお前だからな」

　宮南瀬には十五年間医者として勤めてもらうことになった。十五年経って辞めたければ辞めれば良い、続けるなら続ければ良いと言うことになった。

　英斗は高額な給料を毎月家族に送っていた。
　十五年間妻と娘には会えない。電話と手紙を送ることは可能だった。
　でも、電話も手紙も監視されるためほとんど自由がない。これも信頼されていない証拠なのかもしれない。
　五年が経ったある日、当主様に呼び出された。
　「もう五年の月日が経った。私は、お前を信用しようと思う。だが約束がある。家のことを周りに言うな。言ったらわかるな？」
　「はい」
　この時はもう側に黒の姿はなかった。もう威厳のないあの頃の凪の姿はなく黒凪の姿だった。
　「お前の監視の目も外してやる。だがお前の家族に会えるのは十五年経って辞めた時だけだ。だからあと十年頑張れ」
　「・・・はい」
　

　この時の宮南瀬は早く辞めたいと思っていた。妻に、娘に会いたいとお金は十分、貯まった。あとは家族全員で過ごすだけ、娘の成長をそばで見られないのがとても悔しかった。

　だから志飛しとを脅し、体の関係に迫ったのは惨めな自分を叩き直して欲しかった、ほんの甘えだった。
　まさか仕事を手伝えと言われるとは思ってもいなかった。

　要家の仕事は辞められた。だが志飛の仕事は辞められない二度と。これは宮南瀬の罰だ。

　妻を裏切る行為に走ったこと

　志飛に嫌われる行為をしたこと

　自分の惨めさを受け入れることが出来なかったこと

　それらを全て合わせた罰だ。