越えられない壁で僕らの幸せは・・・

綾瑪 東暢

文字の大きさ
上 下
53 / 281
進学

私だけを

しおりを挟む
 「物槨令ものかくれさ・・・しずくさん。今日は何を書いに来たんですか?」
 「服を見に来ました。」
 「服ですね!私、ショッピングモール初めてで教えてくれませんか?」
 「はい!」
 嬉しそうに頷く。それと同時にやっぱり疑問に思ってしまうことがある。

 志綾しあちゃんは男ではないのか
 
 と。

 その考えを一旦忘れようと頭を振る。
 「どこから行きましょうか」
 「おすすめの服屋があるからそこから行っても良いですか?」
 「もちろん。雫さんが行きたいところいましょう。荼泉とい様と雪都ゆきとさんも異論ないですか?」
 「俺は人混みが嫌だ」「大丈夫~」
 「荼泉様は頑張ってください。」
 雫に「行きましょう」と諭し三階にエレベーターで向かった。
 最初に入ったのは『桜花』と言う名前の服屋だった。
 「どうして花屋を連想させる店名なんでしょうか?」
 「あ、それはここにある服が全部花を染色とした服を取り扱ってるからなんです。」
 「なるほど・・・入ってみましょう。」
 桜花のお店に足を踏み入れた。
 「いらっしゃいませ」
 「うわぁ可愛いし綺麗なお店ですね。」
 「喜んでもらえて嬉しいです。」
 「志綾も何か買えば?」
 「そうですね・・・見て回りますね」
 「志綾ちゃん、見てください」
 雫に見せられたのは水色のワンピースだった。
 「色合いが素敵です。これを買いますか?」
 「うんん、今日は水色じゃなくて白色を探しに来たの。」
 「白色ですか?う~ん。私はあまり美的センスがある方ではないので・・・」
 周りを見渡しながら言う。
 「あ、雫さん、あの服はどうですか?白色で雫さんに合いそうです。」
 「可愛い」
 「試着してみますか?」
 突然店員さんに声をかけられた。志綾はビクッとなった。胸に手を置いて一呼吸ついた。
 「雫さん、試着してみましょう?ちなみにこれは私も持っていますのでお揃いですね」
 志綾が言うと目を輝かせて「しても良いですか」と店員さんに雫が言う。「どうぞ」と案内されて試着室に行った。
 数分後「着替え終わりました」と恐る恐るカーテンを開ける雫を見た志綾は「似合っています。うわぁ可愛い~。雫さん、可愛いです。」
 志綾のテンションと敬語が所々外れているのに疑問を持っていると「物槨令」と荼泉の声がした。
 「志綾が敬語を取る時は無意識で本心だと思う。だから志綾は物槨令のことを本当に可愛いと思ってるよ。」
 「・・・かなめ君は志綾ちゃんのことたくさん知っているね。」
 「まぁ、昔からの付き合いだから。」
 「昔から・・・」
 「物槨令?」
 「あ、そういえば雪都さん?どうしたんですか?いないみたいですが・・・」
 「あいつは子供の遊び場に行った。」
 「子供の遊び場?」
 「あいつは年齢と精神年齢がズレていて・・・取り敢えず、あいつを馬鹿にはするな。」
 説明がめんどくさいのかそう言い放つ。
 「雫さん!買ってきました!」
 荼泉様と話していると袋を持って駆け足で走ってきた。
 「え、どうしてですか?良いのに・・・」
 「私からのお礼的なものかな?」
 「お礼?」
 「うん!貰って、」
 「ありがとうございます」


 桜花を後にした後。色んなところを見て回った。


 私は・・・

 物槨令 雫は思う。

 私は・・・もう一人になりたくない。

 もう、知らないおじさんじゃなくて友達と言う志綾ちゃんと一緒にいたい。

 ・・・

  物槨令 雫の愛情は体というものを頼るしか貰えなかった。だが志綾は体じゃなくて本当に友達の愛情?友情をくれた。だから雫は志綾への友情が変になっていた。
 友達でいたい、たくさん話したい。

 一緒にいたい、ずっと一緒がいい。

 ・・・見ていたい、監視したい。
 
 ・・・捕まえたい、監禁したい。

 ・・・一緒に死んで欲しい。

 志綾への想いが強くなり、おじさんとの買い物も全てが苦しくなり、連絡が来ても返事をしなくなった。


 仕事と吹っ切れないでいた。

 志綾に買ってもらった服着れないでいた。

 「私の体は汚い。志綾ちゃんが買ってくれた服を来たら志綾ちゃんも汚れてしまう。」


 ねぇ、私だけを見て、私だけを

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

目標、それは

mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。 今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。 無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して―― 最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。 死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。 生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。 ※軽い性的表現あり 短編から長編に変更しています

六日の菖蒲

あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。 落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。 ▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。 ▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず) ▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。 ▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。 ▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。 ▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

サンタからの贈り物

未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。 ※別小説のセルフリメイクです。

処理中です...