越えられない壁で僕らの幸せは・・・

綾瑪 東暢

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進学

安心して

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 朝早く秋松あきまつ
 「秋松君は取り敢えず客間を使ってください。」
 「うん・・・」
 「どうかしましたか?」
 「いや、いいのかなと少し」
 「良いんですよ。だって・・・君のお父さんを殺したのは僕だ。」
 秋松はなんって言ったのか聞こえなかった。
 「・・・ありがとう」
 「荷物の整理が出来たら一階に降りて朝ご飯にしましょう。お母様とお父様が待ってますから。」
 「桜川さくらがわさんは?」
 「筒夏つつなさんは朝練があるみたいで先に行きました。」
 「朝練?」
 「筒夏さん、もう私の使いじゃなくなったので部活に入ったみたいです。剣道だったかな。」
 「どんな経緯があったか知らないけど桜川はどんなことがあってもつなぎの使いだよ」
 「え」
 「桜川自身が使いを辞めたいとは言ってないんだろう?」
 「はい、私が辞めさせました。」
 「繋の使いだと思っていなかったら俺が謝りに来た時に咄嗟につなぎの前に出ないだろ?」
 「・・・確かにそうですね」
 「うん、まぁそう言うことだ。繋は先に下に降りてて、後から行くから」
 「はい」
 秋松に言われて志綾しあは部屋を出て一階に降りた。
 秋松は壁に寄り掛かる。
 「どこまで優しいんだよ・・・」
 泣きたくないのに涙が出る。志綾の優しさが傷を抉ってくる。


 少しして秋松が降りて来た。
 「おはようございます・・・」
 少し緊張した様子で挨拶する。
 「おはようございます」「おはよう」
 「さぁ、朝ご飯にしましょう。夏輝斗君は嫌いな、苦手な物ありますか?」
 「い、いえ、なんでも食べれます。あ、強いて言えば、酢が苦手です。」
 「お、分かる。わかるぞ」
 新聞を読んでいたかおるが共感する。
 「夏輝斗君、安心してこの家のみんな酢が苦手だからあまり出てこないですよ」
 茅鶴ちづるが皿を並べながら言う。
 「お母様、今日はなんだか豪華ですね」
 「フフ、夏輝斗君に食べて貰いたくて頑張っちゃったんです。」
 「じゃあ、私は秋松君にお礼を言わないとですね。」
 「・・・」
 家族団欒。秋松は見ていて寂しくなった。元々寂しがり屋だった秋松にはとても目を塞ぎたい思いだった。
 「秋松君。一緒に食べましょう。」
 そんな秋松を気遣って志綾が箸を渡して来る。受け取って茶碗をもって一口一口食べいると美味しくて、それでもって懐かしくてご飯に雫が落ちる。 
 「美味しい、美味しいです。」
 「ふふ、良かったです。」
 「私も」
 四人で朝ご飯を食べた。


 今日は秋松の祖父母の家に行く予定なので二人で家を出る。
 「あ、志綾様~」
 家を出て敷地内を出た瞬間に雪都ゆきとにあった。
 「雪都さん、おはようございます。今日は荼泉とい様と一緒じゃないんですね。」
 「ん?いるよ」
 するとかなめ家の敷地内からヒョコと出て来た。
 「おはようございます」
 「おはよう。・・・志綾、そいつ」
 「あれ?荼泉様。覚えていませんか?秋松 夏輝斗君ですよ」
 「覚えてる。俺が言いたいのはどうしてそいつがいるのかだ」
 「アハハ、今日はこれから行かないと行けないところがあるので説明は明日で良いですか?」
 「何を言っているんだ?行くに決まっている。」
 「え、来るんですか?」
 「何か問題が?」
 志飛は秋松の方を見て助けを求める。見ないでくれと思いながら頭を掻いて秋松が荼泉を見る。
 「俺の祖父母の家に行くんだ。」
 「志綾もか?」
 「・・・うん」
 「なら、俺も行く。」
 「荼泉様・・・それは」
 「繋。良いよ。要は多分、繋が心配なんだよ」
 「・・・秋松君が良いなら」
 三人で祖父母の家に行くことになった・・・
 「?要、そいつも来るのか?」
 秋松が後ろの雪都を指差して言う。
 「雪都、今日はなしになった。近所の子供達と遊んでこい。」
 「はーい~」
 雪都は走ってどこかに行ってしまった。
 「なんだか幼い子供みたいだな」
 「雪都、あいつは要 雪都だ。孤児育ちで産んだ母親が雪都がお腹にいる時にサプリに似た薬を大量接種して雪都は精神年齢がずれてしまったんだ。」
 「・・・そんなんだな。」
 少しだけ気まずい雰囲気になったが電車に乗り継ぎ祖父母の家を目指した。
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