上 下
19 / 278
決意

志綾、本心

しおりを挟む
 今日も、志綾しあは休む。もう一週間は学校に来ていない。
 「ねぇ、志綾。何があったのかだけでも教えてください。」
 ドアの前で茅鶴ちづるが言う。
 「ねぇ、志綾。」
 「・・・・お母様。入って来てください。」
 「良いのですか?」
 「はい。」
 茅鶴は扉を開ける。
 「!志綾。」
 志綾の顔はやつれていた。
 「お母様。もう、学校行きたくない。私、お母様の約束破ってしまった。ごめんなさい。ごめんなさい。」
 「志綾・・・全部。全部。私のせいです。私に貴方が背負っているもの全部押し付けてください。私のせいだと、言ってください。」
 「お母様のせいではありません。でも、でも、お母様、聞いてくださいますか?もう溜め込んでおくのは心が苦しいのです。聞いてください。」
 「良いですよ。何時間でも聞いてあげます。」
 志綾は茅鶴に泣きながら学校で何があったのか喋った。
 喋った後、疲れてしまったのか倒れるように眠りに入ってしまった。茅鶴は布団をかけて頭を撫でてから部屋の外に出た。
 「大丈夫?茅鶴。」
 「大丈夫です。」
 「これから行くの?」
 「行って来ます。かなめ家に」
 「着いていこうか?」
 「いいえ、かおる様はお仕事に専念してください。」
 「分かった。あとで聞かせてね」
 「分かっていますよ。」
 薫は仕事に出て行き茅鶴は要家に行く準備を始めた。
 「よし、」
 

 「当主様。」
 「なんだ?」
 「茅鶴様が来ました。当主様にお話があるみたいです。」
 「通せ、」
 「どうぞ、茅鶴様。」
 「おはようございます。」
 「・・・」
 「申し上げたいことがあります。」
 「・・・」
 「私の娘、つなぎ 志綾に家庭教師を付けさせて、学校を辞めたいと考えています。」
 「理由を聞こう。」
 「・・・ふぅ、はい。理由は学校の方でいじめに合い。精神的にも病んでしまい。もう一週間も学校を休んでいます。私としても志綾の精神面を直すのに専念したくお願いしています。」
 「小学校は義務教育だが?」
 「えぇ、知っています。ですが、要家と繋家に国のルールが当てはまると?」
 「何が言いたい?」
 「ここ数年、当主様はご自身の使いや繋家の使いを使い何人の人を殺めて来ていますか?こんなことが国にバレたらどうするおつもりですか?」
 「・・・茅鶴様。他人事と思われているみたいだが、繋家も同じだがな、」
 「えぇ、知っていますとも、ですが、一番に罪が重いのは両家の当主である。貴方様ではないですか?」
 「・・・」
 「話が逸れてしまいました。それで志綾の件考えてくださいますか?国のルールなど私達には通用しないので」
 「考える必要などない。好きにすれば良い。だが、中学は通え、そして高校もだ。その辺は俺にも、お前らにも世間の目が厳しくなるからな。」
 「ありがとうございます。失礼します。」
 「少し待て、」
 「当主様?」
 「時咲とさお茶を持ってこい。」
 「分かりました。」
 そばで聞いていた時咲は出て行った。
 「茅鶴様。少しお願いが、」
 「何でしょうか?」
 「時咲を外に出してくれ、」
 「え?」
 「時咲はあまり外に出たがらないから気分転換にでも姉である茅鶴様にお願いしているんだ。」
 「・・・えぇ、分かりました。ですが意外です。」
 「・・・」
 「では、これで失礼します。」
 「ああ、」
 お辞儀をして茅鶴は部屋を出た。キッチンに向かい
 「時咲。」 
 「姉様!」
 「次のお休みの日、一緒に出かけませんか?」
 「姉様とお出かけですか?行きます。」
 「良かったです。では時咲。また、」
 「姉様。お茶・・・」
 「二人で飲んでください。」
 
 家に帰って来た茅鶴は志綾の部屋に行く。まだ可愛らしい寝息を立てながら寝ていた。よほど疲れていたみたいだ。もしかしたら寝れていなかったのかもしれない。

 「貴方を男として産んでしまってごめんなさい。」


 志綾の頬に雫が落ちた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

サポ

BL
 185.95.32ジムで追い込んでは男を漁る谷口啓太。元はノンケで大学の頃に喰われノンケしてたはずがいつの間にか尺犬に仕込まれたラグビー部上がり。  自分よりマッチョな男に使われるのも好きだが年下の細身やぼて腹の親父に使われるのも好きな変態に。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

学園の天使は今日も嘘を吐く

まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」 家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

処理中です...