今から君を守るのに理由が必要ですか・・?(仮)

綾瑪 東暢

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2人が幸せになるために

出会ってしまった

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 特に行く当てもなく、施設をぶらつく。正直に「白斗はくとに会いに来た」と言えば、こんな暇つぶしをする必要がない。多くの時間を白斗と過ごすことができた。俺は嘘つきだ。自分にも、白斗にも嘘をつきまくってる。そんな自分が嫌になる。もう学生と言われる年齢じゃない俺がこんな悩みをもつなんてとても恥ずかしい。恥ずかしくて、誰にも言えない。言ってしまえば笑われてしまう。研究員に戻りたいっ。


 直木なおきは白斗のことを考えようとしても、どうしても自分のことを考えてしまう。白斗のことを考えればいいと分かってるのに・・思考が、言うことを聞かない。


 ずっと、ずっと頭から抜けてくれないことがある。それは家族のこと。家族は白斗とあずさ、そしてボスだって分かってるのに、何故かあの人達のことを思ってしまう。直也なおやと過ごした期間は長くはない。それなのに、いつの間にか白斗と接するような態度になっていた。それが嫌で、直也の家に行くのを辞めた。直也は、白斗と違って弟ではない。なのに・・、直也と合わない期間が空くと寂しくなっている自分がいる。おかしい。自分がおかしくて、何もかも手につかない。



 
 考え過ぎて、前が見えていないかった。小さな段差に躓いてしまった。
 「あっ・・」

 咄嗟に目をつぶる。それでも痛みはこない。恐る恐る目を開けると抱きしめられていた。
 「あぶなっ・・後ちょっとで顔から水の中に入るところだったよ。」
 その声はわからない。でも、どこか聞いたことのあるような声だった。

 「ありがとうございます。」
 そう言って手を離してもらった。
 「気をつけて歩いて。」
 
 直木はお辞儀をし、辺りを見る。いつの間にか、白斗の部屋の近くの噴水まで来ていた。

 「えっーと、見ない顔なんですが・・誰ですか?」

 直木が改めて助けてくれた人と向き直る。
 
 「八代やしろ真斗まさと。」
 「・・八代・・・」
 「君は?」
 「篠秋直木です。」
 「何か悩み事かな?」
 「いえ、気にしないでください。大したことないので」
 「そうかな・・」
 「はい・・では、これで。」

 直木は真斗の横を通り過ぎた。真斗から直木が見えない物陰で息を吐く。

 「はぁぁあ・・・真斗って・・白斗の父親・・・なんでこんなところに・・・」


 直木も真斗のことを知っていた。聞いていた印象と全然違い、別人のように感じた。
 
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