今から君を守るのに理由が必要ですか・・?(仮)

綾瑪 東暢

文字の大きさ
上 下
513 / 550
2人が幸せになるために

あの時言いたかった本当の言葉

しおりを挟む
 あの時は言えなかった、言う資格なんて無かった。今だって言う機会はない。それでもあの時の自分が報われるなら、白白に言いたい。

 『私は白斗はくとのそばにいるから』

 
 私は待機れず崩れ落ちる。白白が私のそばまで来てくれた。白白の前では泣きたく無かった。でも、泣くしか無かった。

 「ごめん、ごめん白白。私は思い出して欲しかっただけ。ごめん」

 私は白白に縋り付く。白白は何も言わずに私の背中を優しくさする。
 私は白白の胸で泣く。こんなに泣いたのはいつぶりだろうか。それぐらい大泣きだった。





















 「落ち着いた?」
 「うん・・カッコつけていようと思ったのに・・最近ボロがすごい出る・・」

 椅子に座り、温かい飲み物を飲む。目元が少し赤くなっている委御。数秒間隔で鼻を啜る音がする。

 「委御。ごめんね。思い出さなくて。さっきの言葉って」
 「あの時の私と白白の会話。」
 「覚えてるんだね」
 「そりゃあ、あれは私の一番の思い出だから。」
 
 「ね、委御。」
 「ん?」
 
 コップに口をつけながら反応し、一口の飲む。
 「委御は僕が1人で思い出すのを望んでるのは分かってる・・でも、そろそろ聞いてもいいかな?いつ、僕は委御と会ったの?」

 聞かれることが分かっていたのか、それとも委御が話そうと思っていたのか、委御はニコッと笑ってコップを机に置いた。

 「いいよ。」

 委御は長話だからと、2人はベットに並んで座る。

 委御は白斗の手を握って、あの時のことを話す。
















 話終わった委御は白斗の顔を覗き込んだ。
 「ど・・・」

 「どう?」と聞こうとした委御だったが、白斗の表情を見て言葉が止まった。

 泣いてはいなかった。でも泣いたあとがあった。
 「・・・ごめんっ・・・ごめん。委御。」

 委御は何を話し、何をしたのかを事細かく白斗に話した。

 「ごめん・・・委御が細かく話してくれたおかげで、想像はできた・・でも・・・思い出せない・・・」

 白斗はこれでも小説家だ。考えて想像することは容易に出来る。だからこそ、委御に申し訳なさがある。

 「ごめんっ・・・ごめんね。委御。」

 委御は白斗を抱きしめる。

 「もう、もういいよ。もう・・・ありがとう。思い出そうとしてくれて。ありがとう・・私の話を聞いてくれて。ありがとう・・」

 委御の思い出して欲しい気持ちは変わらない。変わらないけど、ここに白斗がいるならそれでいいと・・委御は思った。

 (いつか、いつか・・思い出してくれればきっと、今の私は報われる。今じゃなくていい。)


 「ありがとう。白斗。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

なんで俺の周りはイケメン高身長が多いんだ!!!!

柑橘
BL
王道詰め合わせ。 ジャンルをお確かめの上お進み下さい。 7/7以降、サブストーリー(土谷虹の隣は決まってる!!!!)を公開しました!!読んでいただけると嬉しいです! ※目線が度々変わります。 ※登場人物の紹介が途中から増えるかもです。 ※火曜日20:00  金曜日19:00  日曜日17:00更新

越えられない壁で僕らの幸せは・・・

綾瑪 東暢
BL
 繋家に産まれた繋 志飛(つなぎ しと)は男だった。残念なことに繋家に男は不要だった。両親は初めての子供だと言うことで志飛を女として育てることにし繋 志綾(つなぎ しあ)と名前を変えた。  繋家と違って女を不要としている要家。要家とはお隣同士の家であり両家の決まりで必ず繋家と要家の子供同士は結婚しないといけなかった。  それは伝統で昔からやって来ていること。誰も変えることの出来ない伝統。  要家の三男として要 荼泉(かなめ とい)が産まれた。  この流れで行くと荼泉と志綾は結婚することになる。が、どっちらも男。  伝統を守り、性別を隠しながら結婚するのか、伝統を破り、性別を明かして追い出されるか・・・

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

嫌われものの僕について…

相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。 だか、ある日事態は急変する 主人公が暗いです

処理中です...