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2人が幸せになるために
待っている人がいるから
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テレビをつけると、大々的に『鵺瀬夜丘先生復活か!?』とテロップに書いてあった。直也はその言葉になんとなくつけたが、つい見入ってしまった。
事情までは教えてくれなかったが、12月31日に発売予定だとニュースキャスターが言う。直也は鵺瀬夜丘の公式サイトを開いていた。そこにはotomoという名前の人がお知らせと書いて投稿されていた。
『未発売だった小説が12月31日予定で発売されます。予定なので変わり次第またお知らせいたします。』
そのコメントには様々な反応があった。
『わーい、待ってました』『書けない状態ってなんだったんだ?』『また発売できないとか聞きたくないよー』『戻ってきたー』
直也は今、白斗がどんな状況なのかわからない。これは素直に喜んでいいことなのだろうか。そうスマホを弄っているとガチャガチャと勝手にドアを開けている音がする。玄関に行く前にドアが開き、リビングに来た。
「直木さん・・合鍵渡しましたっけ?」
「お前が落ち込んでる時に机に落ちてあった白斗の鍵を拝借した。それより・・ついてこい。」
聞き捨てならないことを聞いたが、直木が肩で息をしていた。相当焦っていることに気がついて詰めるのをやめた。外に出ると車が停めてあった。乗れと言われ、直也は乗る。
運転手がいて直也は軽く会釈をして椅子に座った。直木も乗り向かい側に座る。
「どこに行くんです?」
「白斗のとこ」
「えっ、もう俺行っていいんですか?」
「・・・いや、会うの梓。白斗とはまだ会わせられない。でも、いい機会だと俺は思う。一回、白斗が暮らしている場所を見てみるといい。」
それ以上何も言わない。直也も特に言うことがないので沈黙のまま目的まで車で揺れた。
「つきました。」
「降りろ。ありがとう。お昼過ぎに戻ってくる。」
「わかりました。」
地面に足をつける。
「ここは・・・」
「研究室本部だ。」
「本部・・」
「行くぞ」
説明もほどほどに直木は先を歩く。
研究室を歩くと色んな研究員にすれ違う。毎回「直木さんお疲れ様です」と喋りかけられる直木は鬱陶しそうだった。
直木はある部屋で止まる。
「直木さん?」
直木の名前を呼ぶと直木は静かに指を指す。
そこには誰かと何かを話している白斗がいた。そこに行こうとした直也を直木が止めた。
「見るだけだ。行くぞ。」
直木は白斗から目を逸らし、右曲がった。直也も悔しそうな顔をして直木について行く。
2人が来た部屋には梓がもう座って待っていた。
「久しぶり。直木、直也さん。」
「梓。」
座ってと2人に諭す。
「で、なんのようだ?」
「白斗が見たいと思って」
直木がガタンっと立ち上がる。
「直木。嘘よ。座って」
「ちっ」
イライラした様子でドカッと座る。
「白斗のこと気になってると思うから・・まずは報告。」
「まずはってことはまだ他に何にがあるのか?」
「落ち着いて。話すから。」
梓ははぁと息を吐く。
「まずね、白斗はお父様と・・・篠秋信秋と百々目雅に血を提供している。」
「血を提供?」
直也が質問すると梓が微妙な顔をして
「それは・・実験内容だから詳しくは話せない。ごめんなさい。」
「・・」
納得はできないけど、しょうがないと気持ちを切り替えた。切り替えたけど、百々目という名字が次に引っかかった。
「百々目・・もしかして雪君の」
「知っているのね・・百々目雪の父親。」
「それで?」
直木が話を早めようとする。
「それで、本当はあの部屋にいる決まりなんだけど、」
あの部屋で直木は理解したみたいだが、直也は理解が追いついていない。
「白斗が血を提供する代わり?に自由にしてほしいって願った・・だから、今の白斗はこの施設で自由。2人が白斗を心配する必要がないって言いたかっただけ。」
「それだけなのか?」
「あとね・・白斗が直也さんに『待ってるから』だって」
梓は微笑む。直也は下を向き
「ありがとうございます!」
とお礼を言った。
帰り際、また白斗を見かけた。梓を見つけた白斗が直也の横を通り過ぎる。直也は振り向かず、施設を出た。
事情までは教えてくれなかったが、12月31日に発売予定だとニュースキャスターが言う。直也は鵺瀬夜丘の公式サイトを開いていた。そこにはotomoという名前の人がお知らせと書いて投稿されていた。
『未発売だった小説が12月31日予定で発売されます。予定なので変わり次第またお知らせいたします。』
そのコメントには様々な反応があった。
『わーい、待ってました』『書けない状態ってなんだったんだ?』『また発売できないとか聞きたくないよー』『戻ってきたー』
直也は今、白斗がどんな状況なのかわからない。これは素直に喜んでいいことなのだろうか。そうスマホを弄っているとガチャガチャと勝手にドアを開けている音がする。玄関に行く前にドアが開き、リビングに来た。
「直木さん・・合鍵渡しましたっけ?」
「お前が落ち込んでる時に机に落ちてあった白斗の鍵を拝借した。それより・・ついてこい。」
聞き捨てならないことを聞いたが、直木が肩で息をしていた。相当焦っていることに気がついて詰めるのをやめた。外に出ると車が停めてあった。乗れと言われ、直也は乗る。
運転手がいて直也は軽く会釈をして椅子に座った。直木も乗り向かい側に座る。
「どこに行くんです?」
「白斗のとこ」
「えっ、もう俺行っていいんですか?」
「・・・いや、会うの梓。白斗とはまだ会わせられない。でも、いい機会だと俺は思う。一回、白斗が暮らしている場所を見てみるといい。」
それ以上何も言わない。直也も特に言うことがないので沈黙のまま目的まで車で揺れた。
「つきました。」
「降りろ。ありがとう。お昼過ぎに戻ってくる。」
「わかりました。」
地面に足をつける。
「ここは・・・」
「研究室本部だ。」
「本部・・」
「行くぞ」
説明もほどほどに直木は先を歩く。
研究室を歩くと色んな研究員にすれ違う。毎回「直木さんお疲れ様です」と喋りかけられる直木は鬱陶しそうだった。
直木はある部屋で止まる。
「直木さん?」
直木の名前を呼ぶと直木は静かに指を指す。
そこには誰かと何かを話している白斗がいた。そこに行こうとした直也を直木が止めた。
「見るだけだ。行くぞ。」
直木は白斗から目を逸らし、右曲がった。直也も悔しそうな顔をして直木について行く。
2人が来た部屋には梓がもう座って待っていた。
「久しぶり。直木、直也さん。」
「梓。」
座ってと2人に諭す。
「で、なんのようだ?」
「白斗が見たいと思って」
直木がガタンっと立ち上がる。
「直木。嘘よ。座って」
「ちっ」
イライラした様子でドカッと座る。
「白斗のこと気になってると思うから・・まずは報告。」
「まずはってことはまだ他に何にがあるのか?」
「落ち着いて。話すから。」
梓ははぁと息を吐く。
「まずね、白斗はお父様と・・・篠秋信秋と百々目雅に血を提供している。」
「血を提供?」
直也が質問すると梓が微妙な顔をして
「それは・・実験内容だから詳しくは話せない。ごめんなさい。」
「・・」
納得はできないけど、しょうがないと気持ちを切り替えた。切り替えたけど、百々目という名字が次に引っかかった。
「百々目・・もしかして雪君の」
「知っているのね・・百々目雪の父親。」
「それで?」
直木が話を早めようとする。
「それで、本当はあの部屋にいる決まりなんだけど、」
あの部屋で直木は理解したみたいだが、直也は理解が追いついていない。
「白斗が血を提供する代わり?に自由にしてほしいって願った・・だから、今の白斗はこの施設で自由。2人が白斗を心配する必要がないって言いたかっただけ。」
「それだけなのか?」
「あとね・・白斗が直也さんに『待ってるから』だって」
梓は微笑む。直也は下を向き
「ありがとうございます!」
とお礼を言った。
帰り際、また白斗を見かけた。梓を見つけた白斗が直也の横を通り過ぎる。直也は振り向かず、施設を出た。
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