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2人が幸せになるために
息子が大事だから
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「都瀬くん。研究の手伝いをしてくれませんか?私では力及ばない。」
副所長を向いていないと言われた百々目は白斗に頭を下げた。
「えっ・・・無理だよ。実験体が実験に参加するってそんな・・話聞いたことないよ。」
「都瀬君。私からも頼みたい。」
「弥生さんまで・・なんで・・」
「都瀬くんのあの言葉を聞いて、私では無理だと感じました。どうか・・息子を雪を助けるのを手伝ってください。」
きっとこれは、研究員達だけで解決しないといけないこと。研究員・・篠秋信秋が起こした罪は決して許されるものではない。篠秋だけではない。その罪を見て見ぬ振りをした研究員達もまた、同等の罪を持っているはずだ。なら、白斗は手を出すべきではない。研究員達が実験体に誠心誠意で解決すべき案件だ。
でも・・・
「僕でいいならやります。僕の血を材料にしてるんだし・・僕もやりたい。」
そう、答えた。それが正解か不正解。まだわからない。けど・・きっと、きっと正解だと白斗は考える。
「雪さんにはいっぱい助けてもらったし、恩を返せたら嬉しい」
そう笑顔で答えた。
少し、昔話をしようと思う。
私、百々目雅。百々目雪の父親で研究員の副所長を務めている。
あれは、雪の体について知らされた時。その時はまだ研究員ではなく、外で会社員として働いていた。
秋が終わりかけていて、肌寒くなった季節の頃。男高の教頭とでも言うのだろうか・・校長の秘書と名乗った篠秋弥生から連絡があった。
『百々目雪について話があるので至急、男高に来てほしい』
と。雪が男高に入ってから初めての呼び出しで私は焦りが止まらなかった。
私は、校長室に案内され、目の前には篠秋信秋が座っていた。
「百々目さんかね?」
「はい」
まだそんなに寒くないはずなのに、手の先が冷えていた。嫌な予感とでも言うのだろうか・・。
「百々目雪について、話したいことがあってお呼びした。その前に、今から話すことは関係者以外には秘密だ。漏らすようなことがあったら大変なことになる。決して他言してはいけない。」
その言葉と共に篠秋弥生が私の前に一枚の紙を置いた。私は紙を取り、心の中で読んだ。
(聞いた話を外へ漏らすことを一切してはならない。
疑問があっても決して、質問は許可しない)
最後まで目を通す。下には名前を書く欄がある。
「分かったのなら署名してもらおう。」
横にペンが置かれる。私はペンを持つ。右手がガタガタ震えているのに気がついた。私は百々目雅と書いた。篠秋弥生が紙を回収し、篠秋信秋が私の前のソファに座った。
そこで、聞いたことは死ぬまで忘れられないことだった。
雪の身長が止まり、雪の年齢も止まり、歩けなくなった、それは研究の後遺症だと。
そう聞かされていまいちピンとこなかった。そんな私に、篠秋信秋は言う。
「会ってみるか?」
と。小学生になる前以来だから会いたくないわけがない。私は会いたいと言った。篠秋信秋が私を案内したのは男高の病院だった。病院に入った時、足の先までもが冷たくなったのを感じた。
私と篠秋信秋が止まった病室の名札に『百々目雪』と記されていた。病室を開けると・・ベットの端に座っている雪がいた。雪は篠秋信秋を見ると唾を飲み込んでいた気がする。私に気がついた雪は幼い子供のように泣いた。私は雪を抱きしめそう言うことかと納得した。雪に夢中だったため、いつの間にか篠秋信秋がいなくなっていたことに気が付かなかった。雪に何があったのか聞いた。でも、詳しくはわからないと言われてしまった。
会っていなかった期間が短く感じるほど、雪は縮んでしまった。懐かしむように雪は言う。
「こんな体になる前は160身長あったんだよ」
と。
「僕、好きな人がいたんだ。もうこんな体じゃ無理だけど。」
と。
私は隣で話を聞くだけしかできなかった。
雪が寝た後、私は篠秋信秋にもう一度会いに行った。
「・・篠秋信秋校長。私を研究員として雇ってください。」
雇ってくれるとは思っていなかった。でも、篠秋信秋は私を雇ってくれた。研究の知識などない私を。
あの時は考えもしなかったが、もしかしたらあの時の篠秋信秋にも後悔と言うものがあったのかもしれない。
私は息子を治すために・・研究員になった。私がこの手で息子を救いたいから
副所長を向いていないと言われた百々目は白斗に頭を下げた。
「えっ・・・無理だよ。実験体が実験に参加するってそんな・・話聞いたことないよ。」
「都瀬君。私からも頼みたい。」
「弥生さんまで・・なんで・・」
「都瀬くんのあの言葉を聞いて、私では無理だと感じました。どうか・・息子を雪を助けるのを手伝ってください。」
きっとこれは、研究員達だけで解決しないといけないこと。研究員・・篠秋信秋が起こした罪は決して許されるものではない。篠秋だけではない。その罪を見て見ぬ振りをした研究員達もまた、同等の罪を持っているはずだ。なら、白斗は手を出すべきではない。研究員達が実験体に誠心誠意で解決すべき案件だ。
でも・・・
「僕でいいならやります。僕の血を材料にしてるんだし・・僕もやりたい。」
そう、答えた。それが正解か不正解。まだわからない。けど・・きっと、きっと正解だと白斗は考える。
「雪さんにはいっぱい助けてもらったし、恩を返せたら嬉しい」
そう笑顔で答えた。
少し、昔話をしようと思う。
私、百々目雅。百々目雪の父親で研究員の副所長を務めている。
あれは、雪の体について知らされた時。その時はまだ研究員ではなく、外で会社員として働いていた。
秋が終わりかけていて、肌寒くなった季節の頃。男高の教頭とでも言うのだろうか・・校長の秘書と名乗った篠秋弥生から連絡があった。
『百々目雪について話があるので至急、男高に来てほしい』
と。雪が男高に入ってから初めての呼び出しで私は焦りが止まらなかった。
私は、校長室に案内され、目の前には篠秋信秋が座っていた。
「百々目さんかね?」
「はい」
まだそんなに寒くないはずなのに、手の先が冷えていた。嫌な予感とでも言うのだろうか・・。
「百々目雪について、話したいことがあってお呼びした。その前に、今から話すことは関係者以外には秘密だ。漏らすようなことがあったら大変なことになる。決して他言してはいけない。」
その言葉と共に篠秋弥生が私の前に一枚の紙を置いた。私は紙を取り、心の中で読んだ。
(聞いた話を外へ漏らすことを一切してはならない。
疑問があっても決して、質問は許可しない)
最後まで目を通す。下には名前を書く欄がある。
「分かったのなら署名してもらおう。」
横にペンが置かれる。私はペンを持つ。右手がガタガタ震えているのに気がついた。私は百々目雅と書いた。篠秋弥生が紙を回収し、篠秋信秋が私の前のソファに座った。
そこで、聞いたことは死ぬまで忘れられないことだった。
雪の身長が止まり、雪の年齢も止まり、歩けなくなった、それは研究の後遺症だと。
そう聞かされていまいちピンとこなかった。そんな私に、篠秋信秋は言う。
「会ってみるか?」
と。小学生になる前以来だから会いたくないわけがない。私は会いたいと言った。篠秋信秋が私を案内したのは男高の病院だった。病院に入った時、足の先までもが冷たくなったのを感じた。
私と篠秋信秋が止まった病室の名札に『百々目雪』と記されていた。病室を開けると・・ベットの端に座っている雪がいた。雪は篠秋信秋を見ると唾を飲み込んでいた気がする。私に気がついた雪は幼い子供のように泣いた。私は雪を抱きしめそう言うことかと納得した。雪に夢中だったため、いつの間にか篠秋信秋がいなくなっていたことに気が付かなかった。雪に何があったのか聞いた。でも、詳しくはわからないと言われてしまった。
会っていなかった期間が短く感じるほど、雪は縮んでしまった。懐かしむように雪は言う。
「こんな体になる前は160身長あったんだよ」
と。
「僕、好きな人がいたんだ。もうこんな体じゃ無理だけど。」
と。
私は隣で話を聞くだけしかできなかった。
雪が寝た後、私は篠秋信秋にもう一度会いに行った。
「・・篠秋信秋校長。私を研究員として雇ってください。」
雇ってくれるとは思っていなかった。でも、篠秋信秋は私を雇ってくれた。研究の知識などない私を。
あの時は考えもしなかったが、もしかしたらあの時の篠秋信秋にも後悔と言うものがあったのかもしれない。
私は息子を治すために・・研究員になった。私がこの手で息子を救いたいから
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