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2人が幸せになるために

副所長

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 「なんとなく、感じるんだ。直也なおやが迎えに来てくれるって。だから僕はここで待つよ。」

 白斗はくとの目には昔の頃の表情が戻ってる。

 「そうか・・血の提供はどうする?」
 「・・僕はお父さんには健康でいて欲しい。健康でいるために僕の血が必要なら僕は構わない。それから・・百々目とどめさん?」
 白斗は百々目の方を見る。
 「何かな・・都瀬みやせくん。」
 「百々目さんはなんのために僕の血が必要なの?」
 「・・」
 それを説明していいのか、百々目は考える。実験体になんの実験をするのか教える研究員はいない。嫌がられるから、逃げられるから。

 「説明したらどうだ?」

 信秋のぶあきが百々目を見ながら言う。
 「・・」
 「何を渋ってる?がやったことも言えばいい。」
 「お祖父様・・」
 「・・」
 それでも百々目は言おうとしない。
 「百々目さん。僕の血が特殊なのは知ってる。でも、どんなふうに使われてるのか知らない。お父さんの健康のためって言うけど、何をしたら健康になるかまでは知らないの。でも、それは企業秘密?でもあると思うからずっと聞かなかった。・・・・そろそろ、本当のことが知りたいの。貴方だって、息子が今どんな思いで生活してるか知りたいでしょ?それと同じ。息子じゃないけど・・僕も僕自身の血が何に使われてるのか知りたい・・」

 そう言われて百々目は息を吐く。

 「・・話しますよ・・ただ白斗様。一つだけ約束してほしいことがあります。」
 「なに?」
 「血を提供を続けてください。」
 「とど・・」
 叫ぼうとしたあずさを制止する。
 「約束・・。血を提供するの僕なのに、貴方が約束を結ぼうとするの?」
 嫌味などではない、これはただ疑問に思ったこと。
 「・・百々目さん。その約束を飲むから、僕からも一つこれは約束じゃなくて・・お願いなんだけど・・僕はこの施設から逃げない。だから自由にさせて。」

 「・・わかりました。」
 「じゃあ、約束ね。話して。」


 百々目は白斗にゆきのことを話す。もちろん、信秋のしたことも含めて。近くで聞いていた弥生やよいは静かに泣き、研究員は後ろを向く。梓は白斗を抱きしめたまま静かに話を聞いていた。

 「・・百々目さんは雪さんの体を元に戻しただけってことだね。それは、どれぐらいの血が必要なの?」
 「現時点でまだ、何も作れていません。」
 「それはなんで?」 
 「研究員の知識量が足りないためです。」
 「どうするつもりなの?」
 「外の力を借りようと思っています。今、1人協力を仰いでいるのですが・・まだ返事がない状態です。」
 「・・もし、その状態が続くようなら、どうするの?」
 「今の知識量で一つだけでも作ってみようと思っています。」
 「失敗したら?」
 「外の別の研究員に協力を・・・」
 「それは・・?」
 「・・・・完成するまでです。」
 「ね、何子供みたいなこと言ってるの?」

 白斗は足を組む。梓は離れ、白斗の後ろに立った。
 「完成するまで?それはいつ?いつになったら僕は貴方に血を提供しなくて済むの?」
 「・・それはっ・・」
 「完成するか根拠がないのに・・なんで無計画なの?」
 「・・・」
 「別に僕の血はいくらでも提供する。でも、血にも限度があるの・・知ってるでしょ?僕が死ぬまで血を取る気?」
 「そんなことは・・」
 「でも、そう言うことだよね?・・協力を仰いでるのって誰?」
 「柳面やなめ水環すわ研究員です。」
 「柳面・・・あぁあの・・柳面医薬品会社の・・」
 「そうです・・。」
 「・・お父さんは研究に参加しないの?」
 「わしは・・」
 「お父さんが『老化進行抑制剤』を作ったのなら『老化進行剤』だって作れるんじゃない?」
 「・・誰にも言ったことがなかったんだが」
 「都瀬君。」
 ここで、弥生が近くに来る。
 「特殊な薬を考えてるのは私。お祖父様はそれを見て調合してるだけだから、だから私が手伝うよ。」
 「・・そう、なら完成図が見えてきそうだったらまた僕に言って。百々目さん、副所長向いてないよ。」

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