今から君を守るのに理由が必要ですか・・？（仮）

2人が幸せになるために

厳しい環境

　八重やえはスッキリしたような顔をしている。
　「・・弘人ひろとに後で連絡取ってみるよ。そこで曜日合わせよう。」
　「うん・・あ、でも弘人に僕が会いたいとは言わないで欲しいな。びっくりしないと思うけど・・びっくりさせたい。」
　「分かった。聞いてみるよ。」

　玄関でそんな話をし、八重は帰って行った。

　リビングに戻り、ソファに座る。ずっこけ座りのように腰をずらして座った。
　「はぁあぁ・・」
　ため息を漏らして頭を上に上げる。
　
　自分がしてきたことが正しいのかわからなくなる。
　そんな時はどんなことをすれば、気持ちを切り替えられるのか分からない。

　物寂しさを覚え、直也なおやはテレビをつけた。

　『ばい予定だった 鵺瀬やせ 夜丘やおか先生の小説が残念なことに発売未定と報告されました。鵺瀬夜丘先生の公式情報サイトに寄りますと『心身の体調、執筆ができなほどの環境にいるため長い間連載及び発売を休止いたします』とありました。私も鵺瀬先生の小説大好きだったんですけどね。みなさんはどうですか？』

　気軽につけた番組で聞き覚えのある名前が耳に入った。
　「鵺瀬夜丘・・あぁ。そっか。」
　その後のニュースは耳に入ってこなかった。執筆者が執筆できない環境。その言葉が直也自身の胸に鋭く刺さった。
　「俺が・・白斗はくとの唯一の娯楽さえも封じてしまったんだな。」

　小説を書くことは白斗にとってストレス発散でもあった。文字を書いてると何も考えなくて済む。
　あそこでは、小説を書くことなどできない。直也はまた涙が出そうになるのを堪えた。泣くことは出来ない。泣くのは白斗と一緒だと自分の中で決めていた。


















　研究員の1人がカップラーメンを啜りながらテレビを見ていた。いつもなら気にも留めなかったが今、やっていたニュースが耳に残った。
　「カップラーメンばかりだと体を壊しますよ。」
　テレビを見る時間を長めるため、研究員に話しかける。
　「やぁ、こんばんは梓あずさ様。」
　「こんばんはです。」

　研究員は近くの椅子を梓の前まで転がした。梓はスカートを折って椅子に座る。

　一緒になってテレビを見る。
　「珍しいね。どうしたの？」
　「さっきのニュースが気になって・・」
　「そっか・・知ってる？鵺瀬夜丘。」
　「いいえ。何か知ってるんですか？」
　「まぁ、でも執筆できない環境ってどんな感じなのか気になるね。」
　
　梓は白斗のいる部屋をチラッと確認した。