今から君を守るのに理由が必要ですか・・？（仮）

2人が幸せになるために

お互いただの人間のはずなのに

　「ね、その血。頂戴。」
　「・・拒否させてもらいます。」

　急に人が変わったように口調が悪くなる。

　「こんな研究所なんかより、私に血をくれた方が最良だと思わない？」
　「思いません。貴方はどこの誰ですか？」

　決して笑える場面ではないはず、それなのに目の前の人間は笑う。技と笑い声を上げる。

　「アズアズ。」

　そう呼ばれた瞬間、梓あずさは目の前にいる人間が誰なのか気がついた。気が付いたとともになんとしても白斗はくとの血が入った入れ物は渡してはいけないと手に力を込める。

　「ここで何をしているんですか？貴方は今、ここにいるべきじゃない。」
　
　「それを決めるのはお前じゃない。私のいるべき場所を決めるのは白白だ。」
　「・・・なぜ、私のところに来たのですか？白斗のところに行きたいのなら行けばいい。」
　「ね、アズアズ。覚えてる？」
　「何がですか？」
　「じゃあさ、昔話をしよう。その話が終わったら改めてその血を私にくれるか考えて。」
　「何が起ころうと私はこの箱を貴方に渡すことはありません。」
　「まぁまぁ、考えが変わるかもよ。」
　「・・・」


　目の前の人間・・荻てき委御すお。どうやって場所を知り、入ったのかはわからない。

　委御は楽しそうに昔話を始めた。








　　　　










　梓は言葉に出ないほどの怒りに襲われた。その怒りは委御に対してじゃない。

　委御以外の人間全てに対しての怒り

　
　何も言えなくなった梓は床に座り込んだ。その際、血の入った入れ物は梓の隣に置かれた。

　「あれあれ？アズアズ？どーちゃったの？」
　
　口角を上げる。悪魔のような顔をしている。

　「どうしてっ。どうしてですか！？」

　その問に委御は答えない。委御はただただ笑顔で梓を見下ろすだけ。

　「なんでっ。なんでそんなっ。」

　梓は委御を見る。見たところで何も変わるはずはない。委御は優しく言う
　『梓は何も悪くない。嘘をついた研究員と白斗が悪い』
と。その言葉に梓は涙を流し始めた。

　委御の昔話があっていたのかはわからない。それでも梓にとって、その昔話は残酷過ぎた。梓の記憶とは違う、昔の話。梓の中に委御はいない。だけど委御の中に梓はいた。


　「人間なのに・・同じ人間なのに・・どうしてっ。私だけこんなに悲しいの？」