今から君を守るのに理由が必要ですか・・?(仮)

綾瑪 東暢

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2人が幸せになるために

息の苦しい場所

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 白斗はくとの家の自動ドアの前(自動ドアが開かない距離)で棒立ちをしている。

 「相変わらず朝が早いね。」

 そこに眠そうな顔をした研究員が声をかけた。
 「おはようございます。」
 「ん、おはよう。」

 研究員はコップを持ち、口に近づけ、壁に寄りかかる。
 「中入らないの?」
 「・・・入りますよ。はいります・・」
 「ふぅーん。」
 
 研究員はじーっと見ているだけ。
 「・・み、見ないでください。」
 「いつ入るのか気になる。」
 「・・・・あと、あと少しだけここにいたいです。」
 
 見るなと言われたが、研究員は見ることをやめない。

 「あ、あの・・」
 今度は研究員に話しかける。
 「ん?」
 「あなたは、ここに入ったことがありますか?」
 「あるよ。数回。白斗様が来る前に」
 「・・ここは居心地良さそうでした?」
 「いいと思うよ。ここは特別製のもので作った家だから。」
 一口口に含み、飲み込んでから続ける。
 「あずさ様の家は居心地悪かった?同じ製品で作っているんだけど。」
 「・・良かったです。空気も。」
 「空気?」
 「い、いえ・・」
 梓はまた自動ドアの奥を見る。
 「梓様は息苦しかった?」
 そんな質問が来ると思っていなかった梓は驚いた顔を隠さずにゆっくりと振り向く。
 「あの家の空気が息苦しいと感じるのは特殊な薬を服用していた人だけ。ただの職員、私なんかは全然。そう言われた時・・白斗様は強いんだなぁって思った。」

 職員は棚にコップを置き腕を伸ばす。梓の隣に並ぶ。

 「特殊な薬には白斗様の血が使われる。それがどんなに恐ろしいことか・・私達も考えないと」

 そう言葉を残し、コップを持って隣の部屋に消えて行った。

 


 梓は自動ドアを見て深呼吸をする。そして一歩踏み出し自動ドアが開く。

 電気をつけ、寝室のドアをゆっくり開ける。

 「おはよう。」
 
 「!!!!」

 梓はびっくりして転びそうになった。寝ていると思っていた。

 「・・起きていたんだ・・」
 「うん、出ようと思ったんだけど、梓。白衣の姉さんと話してるから。」
 「白衣の姉さん?」
 「梓と喋っていた人だよ。名前は知らない。でもみんなそう呼んでた。昔、この家の外で過ごしていた時。ここの研究員達の中に女性はあの人しかいないから。」
 白斗はベットに座りながら話す。
 「採血?」
 「うん」
 「じゃあ、今は6時前ってことか・・。」

 白斗は寝室を出て真ん中のベットに座る。

 「梓。早速。」

 梓はまだ寝室の扉の前でぼけっとしていた。
 「梓。」
 2度呼ばれ、ハッとする。
 「ごめん。」
 「うんん。梓は疲れが溜まってるよね・・ごめん、僕ばっか楽して・・」
 「白斗の仕事はこれ、私の仕事はこれってだけ。疲れてないよ。少しだけ考え事。」
 「・・無理しないで梓。」

 白斗の気遣いが少し胸を抉る。

 
 















 家を出た梓はまた数回咳き込む。そんな梓の頬に冷たいペットボトルが触れた。
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