今から君を守るのに理由が必要ですか・・?(仮)

綾瑪 東暢

文字の大きさ
上 下
461 / 550
2人が幸せになるために

大事な材料

しおりを挟む
 真ん中のベットに座る。袖を捲ったのを見て、白斗はくとの二の腕あたりに駆血帯をつけた。刺入部位に消毒をする。装置についている針を持ち、あずさは慎重に刺した。規定の量を取る。白斗は顔を逸らし、目をつぶっていた。
 「終わったよ。お疲れ様。指先に痺れはある?」
 「うんん、ないよ。」
 「良かった。」

 白斗は装置に興味があるのか、じーっと見る。
 「白斗。」
 小さく笑いながらそんな白斗に声をかける。
 「血が取れるだけでそれ以外なにも起きないよ。」
 「え、あ、そうなの。てっきり運ばれるものだと。」
 「針を刺すだけで自動で取ってくれる装置。取ったら私が研究室に届けに行くの。」
 「そっか・・。」

 白斗は手を上に上げて伸びる。そしてあくびをした。ここに、時計はない。
 「何時だろう。」
 「うーん、ここ時計がなくて困るね。」
 「多分、感覚的に20時かな。」
 「寝る?白斗。」
 「うん、することないし、うーん~」
 「じゃあ、私は帰るね。」
 「帰る?」
 「ここは白斗の家だから。私は隣。何かあったらここにある」

 梓は自動ドアのところに行く。壁を押すと横の壁が開いた。小さな空洞には一つのボタンがあった。
 「このボタンを押せば、私を呼ぶことができるよ。何かあったら呼んで。朝6時前に一回、お昼12時過ぎに一回。夜19時に一回。採血に来るからね。」
 「うん、ありがとう。」
 「じゃあ、白斗。おやすみ」
 「うん、おやすみ。梓。」

 寝室に入った白斗を見て電気を全て消した。

 「いい夢見てね。」






 自動ドア、中からは白斗以外の人を感知し、開くドア。梓は外に出た。1回、2回。咳き込んだ。

 「お疲れ様。」
 
 額に汗をかいていた梓の目の前に、白衣のポケットに手を突っ込んでいる研究員が来た。

 「お、お久しぶりです。百々目とどめ副所長。」

 息を落ち着かせながら目の前の百々目と呼ばれた男へ顔をあげる。

 「そこの部屋はどうだった?」
 「・・とても息苦しい。」
 「そっか。よく、夕飯食べて採血まで耐えたね。」
 「・・副所長。白斗を殺すつもりですか?」
 「そんなことしないよ。」
 「・・副所長。信じますよ。」
 「信じてほしいな。だって彼が死んでしまったら、自分のを助けられなくなる。それはダメだ。」
 「年齢と体が止まった少年か。」
 白鳥が目の前の男の目を見ながら一言呟く。
 「それは皮肉で行っているのかな?その言葉は彼にも当てはまると思うよ。」
 
 百々目は後ろの部屋を見る。

 
 「お互い大変だね。白鳥。」
 「・・貴方に作れるのですか?『小さくなった体、止まった年齢を進める薬』を。」
 「そうだね・・今回は外の研究員の力も借りるから、1人じゃ無理だね。」
 「外・・」
 「1人、すごい研究員が外にいるんだよ。まだ説得中なんだが・・あ、申し訳ない。長話が過ぎたね。」

 百々目は腕時計を確認する。

 「副所長。白斗の血を無駄にしないでくださいね。」

 その言葉に百々目は白鳥に背中を向けて

 「善処するよ。」

と言って手を振る。


 そのまま百々目がいなくなるのを待った。

 白鳥は思いっきり息を吐く。
 「・・・貴方の、貴方の言葉は信じてみようと思います。百々目副所長。」







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

なんで俺の周りはイケメン高身長が多いんだ!!!!

柑橘
BL
王道詰め合わせ。 ジャンルをお確かめの上お進み下さい。 7/7以降、サブストーリー(土谷虹の隣は決まってる!!!!)を公開しました!!読んでいただけると嬉しいです! ※目線が度々変わります。 ※登場人物の紹介が途中から増えるかもです。 ※火曜日20:00  金曜日19:00  日曜日17:00更新

越えられない壁で僕らの幸せは・・・

綾瑪 東暢
BL
 繋家に産まれた繋 志飛(つなぎ しと)は男だった。残念なことに繋家に男は不要だった。両親は初めての子供だと言うことで志飛を女として育てることにし繋 志綾(つなぎ しあ)と名前を変えた。  繋家と違って女を不要としている要家。要家とはお隣同士の家であり両家の決まりで必ず繋家と要家の子供同士は結婚しないといけなかった。  それは伝統で昔からやって来ていること。誰も変えることの出来ない伝統。  要家の三男として要 荼泉(かなめ とい)が産まれた。  この流れで行くと荼泉と志綾は結婚することになる。が、どっちらも男。  伝統を守り、性別を隠しながら結婚するのか、伝統を破り、性別を明かして追い出されるか・・・

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

処理中です...