今から君を守るのに理由が必要ですか・・?(仮)

綾瑪 東暢

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2人が幸せになるために

昔の日常なのに・・

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 初めて経験する日常ではないはずなのに、どこか慣れない感覚に襲われる。昔のように過ごせばいいのに、落ち着かない。

 「白斗はくと。落ち着かない?」

 ベットで目を開け天井を見ていると覗き込むあずさと目があった。今の梓は口調が違う。

 「姉さん?」

 小さい声で聞くと梓は頷く。今は姉弟の関係になった。梓も久しぶりなのか少し緊張している様子だった。

 「ごめん・・落ち着かないんだ。前と同じように過ごせばいいのに・・どう過ごせばいいのかわからなくなる。」
 梓は椅子に座り、白斗の話を真剣に聞く。

 「・・あの家が恋しいなぁ・・」

 白斗はここに来てから直也なおやと言う言葉を口にしてない。口にして仕舞えば、涙が出そうになってしまうのもある。恋しくなってしまう。

 「梓・・っ。白鳥しらとり。」
 白鳥は白斗の手を握る。

 「何もできない。姉を許してください。私はいつでも貴方の話し相手になります。」
 握る手に力を込める。私はここにいると白斗に必死に伝えるために。
 握り返すことはない。天井を見たまま「ありがとう」と呟いた。

 

 数分間。何も喋らずにただ、2人はそばにいた。そんな2人を割くようにノックの音がする。白鳥は立ち上がりドアに近づいた。白斗は起き上がり、椅子に座り直した。
 白斗を見て白鳥がドアを開ける。
 「失礼します。」
 白衣を着た職員が顔を見せる。
 「座ったら?」
 職員を見ながら白斗が言う。白鳥は白斗の隣に立つ。
 どこか職員が緊張している。
 「い、いえ・・。」
 緊張している職員は白斗と白鳥を交互に見た。一回咳払いをし、息を吸った。
 「お待たせしました。都瀬みやせ白斗様。白鳥梓様。準備が整いましたので・・・・っ・・ご案内します。」
 言うセリフを忘れたのか白斗のこれからのことを知っているのか目の前の職員は緊張と焦りが目に見えていた。

 白斗は「わかった。」と言い立ち上がった。

 「白鳥。また後でね。」
 「はい・・。」

 白鳥は無表情のまま頷いた。


 緊張が抜けない職員に白斗はついていく。

 「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。」
 歩きながら職員と会話しようと白斗は喋りかけた。喋りかけられるとは思っていなかったのか肩が跳ねた。
 「あ、あはい・・すみません。」

 白斗は喋りかけて欲しくなさそうな雰囲気に気がつき、少し距離を空けた。

 そんな歩いてはいない。目的の場所に着いたのか職員はポケットから小型の機械を出しドアを開けた。
 「どうぞ。お入りになってください。」

 白斗は中に入る。ここまでなのか職員は中には入らずドアが閉まった。白斗は後ろを見てお辞儀をした。
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