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2人が幸せになるために
白斗を想う人
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家に戻った私と弘人。直木さんのあの時の顔が忘れられない。あの質問をあの時、かけるべきではなかった。今になりとても後悔している。
「智姉。」
弘人が私の座っていた椅子の向かい側に座る。
「・・弘人。」
なんって声をかけるべきか悩んでいる弘人を前に弱音を吐きそうになった。
「智姉。都瀬は色んな人に好かれてるみたいだな。帰ってくることを望んでいる家族がいて・・少し羨ましい。」
弘人がそう言う。私も「そうだね・・」と小さい声で呟いた。
家族。決して向こうから帰って来て欲しいなんって言われない。あの人達は子供が欲しかったのではなく、この学校に子供を入れたと言う名声だけが欲しかった。両親の愛情など、私達は味わっていない。両親の私利私欲のために産み落とされた。ただの道具。
そんな私達に都瀬くんは輝いて見える。
都瀬くんのように帰って来て喜んでくれる家族が欲しかった。
都瀬くんのように愛してくれる人が欲しかった。
絶対に叶わない願い。それでも他人と人を比べてしまうのはしょうがない・・。
弘人だってわかっているはずだ。言ったところで叶わないと。
「・・・・弘人。私は、私は弘人が帰って来たら嬉しいからね。」
その言葉がどれだけ弘人に届いたかはわからない。弘人は笑顔を作り「ありがとう」とだけ言った。
私と弘人が見た直木さんの顔には、寂しさと悔しさが滲んでいた。泣いていなかった。でもどこか泣きそうな目をしていた。あの時、引き留めていなかったら直木さんは1人で泣けていたのかもしれない。私が涙を流す機会を無くしてしまった・・そんな思いが心の隅に強く残っている。
泣かない。泣いてはいけない。泣くのは俺ではなく、あの役目を引き受けた白斗なのだから。ここで俺が泣いてしまったら、白斗に合わせる顔がない。
俺は白斗の兄であり、家族。俺はただ遠くで直也が白斗を迎えに行くのを見ていればいい。俺に白斗を迎えに行く資格も権利も義務も・・そして、道理もない。
寂しいと嘆くのは俺の役目ではない。俺の役目はただ、白斗が願うことをするだけ。それだけのためにここにいる。それが俺の与えられた役目。
白斗の世話をするのは梓
白斗の我儘を叶えるのは俺
それが篠秋信秋に命じられたこと。
俺は白斗が言うのならなんだってする。なんだってしよう。それが白斗と信秋との約束だから。
「智姉。」
弘人が私の座っていた椅子の向かい側に座る。
「・・弘人。」
なんって声をかけるべきか悩んでいる弘人を前に弱音を吐きそうになった。
「智姉。都瀬は色んな人に好かれてるみたいだな。帰ってくることを望んでいる家族がいて・・少し羨ましい。」
弘人がそう言う。私も「そうだね・・」と小さい声で呟いた。
家族。決して向こうから帰って来て欲しいなんって言われない。あの人達は子供が欲しかったのではなく、この学校に子供を入れたと言う名声だけが欲しかった。両親の愛情など、私達は味わっていない。両親の私利私欲のために産み落とされた。ただの道具。
そんな私達に都瀬くんは輝いて見える。
都瀬くんのように帰って来て喜んでくれる家族が欲しかった。
都瀬くんのように愛してくれる人が欲しかった。
絶対に叶わない願い。それでも他人と人を比べてしまうのはしょうがない・・。
弘人だってわかっているはずだ。言ったところで叶わないと。
「・・・・弘人。私は、私は弘人が帰って来たら嬉しいからね。」
その言葉がどれだけ弘人に届いたかはわからない。弘人は笑顔を作り「ありがとう」とだけ言った。
私と弘人が見た直木さんの顔には、寂しさと悔しさが滲んでいた。泣いていなかった。でもどこか泣きそうな目をしていた。あの時、引き留めていなかったら直木さんは1人で泣けていたのかもしれない。私が涙を流す機会を無くしてしまった・・そんな思いが心の隅に強く残っている。
泣かない。泣いてはいけない。泣くのは俺ではなく、あの役目を引き受けた白斗なのだから。ここで俺が泣いてしまったら、白斗に合わせる顔がない。
俺は白斗の兄であり、家族。俺はただ遠くで直也が白斗を迎えに行くのを見ていればいい。俺に白斗を迎えに行く資格も権利も義務も・・そして、道理もない。
寂しいと嘆くのは俺の役目ではない。俺の役目はただ、白斗が願うことをするだけ。それだけのためにここにいる。それが俺の与えられた役目。
白斗の世話をするのは梓
白斗の我儘を叶えるのは俺
それが篠秋信秋に命じられたこと。
俺は白斗が言うのならなんだってする。なんだってしよう。それが白斗と信秋との約束だから。
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