今から君を守るのに理由が必要ですか・・?(仮)

綾瑪 東暢

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2人が幸せになるために

篠秋信秋の体

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 「あずさ。僕が研究室にいない間、お父さんの体調は?」

 まだ朝になりきれていない3時ごろ。3人は車の中で揺れている。
 「あまりよくないの。」
 「そっか・・無理させちゃったな。」
 「梓。白斗はくと。戻ったらお前たちは元に戻る。梓は姉であり、白斗に付き従うメイドであり、執事。それは変わらない。」
 「・・・わかっています。」

 梓は少し悲しそうな声で敬語に戻す。

 「・・白斗。改めて、男高校長篠秋しのあき信秋のぶあきを救うために協力を申し込みたい。」

 両膝に手を置き頭を下げた。この情景を見たことがある。前にいる人は違ったけど、そうだ・・白斗が引き取られて研究室に行く時
 『都瀬みやせ白斗はくと様。校長篠秋信秋を助けるために協力を申し込む。』
と言われた。あの時の白斗は心も体も幼かったから・・選択肢などないようなものだった。大人の圧に怯えて断ることなんってできなかった。でも今は違う。今から断ることだってできる。それでも、白斗はあの時と同じ答えを返す。

 「僕でよければ・・協力させてください。」


 たくさん感謝の言葉を並べられた。人生でこんなにも感謝される日が来るとは思わなかった。あの時の白斗が断らなかったから、白斗は直也に会えた。そして幸せになれた。

 なら、今日のこの返答もきっと大正解だ。










 






 白斗が戻ると聞いた時、篠秋信秋は眉間に皺を寄せる。

 
 校長机に数枚の紙が置いてある。I枚目の紙には『女高校長の交代の関すること』2枚目の紙には『篠秋信秋様の健康診断』3枚目の紙には『最高人と連絡がつかない件』

 篠秋は頭を抑える。解決しようにも解決できない。そこにさらに白斗が戻ってくるとなると仕事が増える。篠秋の体を治すためだとは知らない。
 篠秋はもう、そらそろやめてもいいと思っていた。死なない体・・死ににくい体にしたのは自分だ。自分で自分を実験体にした。

 でももう、世代交代をした方がいいと篠秋は考えている。創立からずっと校長として在籍していた。男高のことなら篠秋以外によく知っている人などいない。男高がどれだけの人を犠牲に成り立っているのかも知っている。でもその犠牲も篠秋が辞めるのと同時にやめようと思っている。

 国が満足するほどの子供は作った。男女差が埋まるように工夫もした。一定数の子供には英才教育を施した。やることはやった。これでいい。篠秋にやれることは全てやったつもりだ。
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