今から君を守るのに理由が必要ですか・・？（仮）

真実

消えた笑み

　「僕には夕姫ゆうひめを犠牲にする方法しか解決策を出せない・・。ごめん。ごめんね。」

　白斗は下を向いて手を握る。

　「白斗様。もう大丈夫。大丈夫だから。」

　夕姫がしゃがみ白斗のおでこに自分のおでこを合わせようとする。自然に2人は目が合う。

　「あの子との約束があるから。しょうがない。俺は分かってる。俺がこの世で1番白斗様のこと分かっているのだから。」

　夕姫は白斗の目元に指を当て涙を拭う。

　おでこを離して白斗の赤くなっている鼻を見る。イタズラ心から夕姫は白斗の鼻を軽く摘んだ。
　「俺のことは気にしないで」
そう言って鼻から手を離す。小さく「かわいっ」と。

　「ゆ、ゆう。」
　「うん、白斗様に愛称を呼ばれるのは嬉しいな。最後に呼んでくれてありがとう。」

　白斗が夕姫の袖を掴む。
　「ごめんなさい。」
　「ほらっ。顔を上げて。」

　声が優しい。夕姫だって行きたくないのに、それでも白斗に優しい声でいつもとは違ってあの発狂はない。

　「この笑顔が行きたくない人の笑顔に見える？」

　そう、これが本来の高校3年生の無邪気な笑み。

　この学校はいつの間にか普通の笑みを奪っている。