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やっぱりこの学校は

名前

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 「百合姫ゆりひめ、今の話を聞いて高女1位になりたいと思う?」 
 同じ質問をもう一度百合姫に聞く。百合姫はただ綺麗な姿勢で、夕姫ゆうひめを見ていた。
 「可愛くて美人をイメージさせるこの名前。でもこの名前は親が初めてくれる贈り物なんかじゃない。この学校のためのためだけの名前。百合姫もそんな名前欲しかった?俺が初めて神に感謝したのは都瀬みやせ白斗はくと様が俺の前に現れた時だけ。それが俺にとって初めての贈り物だった。」
 夕姫は胸を押さえながら訴える。この場にいる全員に。
 「どうして、1位になりたい人がなれなくて1位になりたくない俺がなれているのか分からない。交換できるなら今すぐに1位の座を譲りたい。1位なら、百合姫の願望が叶うんだろう?」
 百合姫は何も言わずにただ目をつぶっている。
 「ゆう。」
 白斗が夕姫の腕を掴む。
 「な、ななななななにににぃ?」
 嬉しそうにでも、少し悲しそうな表情をする。
 「夕。そんなことを思っていたの?」
 「っ。い、いや。あの、白斗様。」
 初めて夕姫の動揺を見た。
 「夕。今だから言うけど、桜紅さくらもみ夕姫はちゃんと夕を産んだ両親がつけた名前だよ。夕は夕方の黄金色のように美しく、姫は姫のように可愛い子になりますようにって。」
 「い、いや。そんな、そんなことは」
 夕姫は一歩一歩後ろに下がっていく。
 「ね?ボス。」
 「あぁ。夕姫の親は男高、女高を卒業した後、敷地外に出た。きっと久しぶりの敷地外ではしゃいでいたんだ。それが原因で交通事故に遭ってしまった。夕姫。母親が手に何を持っていたと思う?・・・・」
 ボスは一呼吸を置く。
 「だよ。」
と。
 「そのノートには名前が書いてあった。愛桜あさくら愛雨あめ愛衣玖あいく好縁いより・・・・そして夕姫。夕姫には丸がついていた。花盛はなざかりはお前に自分が名前をつけたと言ったみたいだが、俺たちは知っている。夕姫。お前の名前はちゃんと親からの贈り物だ。それでもまだ何かあるのか?」
 何も言えなくなっている。
 「夕。花盛のところに戻りたい?」
 白斗が話を元に戻す。
 「・・・・も、戻り」
 「?」
 「戻りたくない。俺は、俺はずっと、ずっと白斗様のそばにいたい。ダメ?」
 夕姫が白斗のそばに行き裾を掴む。初めて子供ぽいところを夕姫は見せた。

 「・・・そう言うことだ。花盛。今ここで花盛と一緒に帰りたい人は・・1人しかいない。それでもまだここに居座る気か?」
 篠秋しのあきの言葉に花盛は唇を噛んだ。

 「なんなのよ!さっきから話を聞いていれば!桜紅夕姫!わたくしが貴方を1位にしていなかったら貴方はここにいなかった。そこの改造人には会えていなかった。それが分からない?私のおかげなのよ!全部!全部!それなのに私に恩を帰さない気?出来損ない!出来損ないよ!」
 花盛は地団駄を踏み、適当な言葉を吐き出していく。

 白斗が「どうしますか?」と言う顔で篠秋を見る。篠秋はため息をついた。
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