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やっぱりこの学校は
もう出てこれない
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もう、夜丘は出てきてくれないのかもしれない。
僕は自分の部屋の机を触る。
僕が夜丘のために作った机。
多分、この世で一つだけのデジタル机。
小説が書きやすいように工夫された机。
机の電源を入れる。すぐに表示される小説。書き途中。題名は『今から君を守るのに理由が必要ですか・・?(仮)』。仮が入ってるから、題名は保留なのかもしれない。
僕は読む。椅子に座って、1文字1文字文字を追う。
「1人閉じこもってる男の子。誰も手を差し出してくれない。ドアの向こうからは両親の喧嘩の声。男の子は耳を塞ぐ。両親の声を聞きたくなくて、喧嘩してる怖い声は聞きたくなくて。いつもの優しい声が聞きたくて。男の子は涙を流す。涙は止まらない。泣きたくないのに、泣いたら怒られるから。怒ってる父親を見たくなくて必死に止める。」
一呼吸おいて、また読み始める。
「それでも父親は男の子に怒りをぶつける。罵倒を暴力を。男の子にぶつけた。男の子は謝って謝って。なんで謝ってるのかさえ分からなくなる。母親は、横で見てるだけ。止めることはしない。理由は勿論、男の子は分かってる。自分まで、暴力を受けたくないから。だから母親は男の子に手を差し出さない。傍観。男の子は痛いと痛いと言えない。言ったらまた痛いから。」
泣かないようにしていたのに、泣きそうになる。
「男の子はいつも、行く場所がある。それは一時の安息を求めて。男の子が大好きな人の家。迷惑だと思っている。それでもその人のところに逃げるしかなかった。その人は決して嫌な顔をしない。それよりも嬉しそうな顔をする。男の子はいつも下を向いているから気が付かない。その人は嬉しそうなんだ。男の子が来るのが、来て、手当てをするのが。男の子が家に戻る時、その人は悲しそうな顔をする。そしていつも言う。
『また、俺に手当てをさせて』
と。」
もう涙が止まらない。袖で涙を拭っても拭っても、それでも読み続ける。
「でも、男の子の前からその人はいなくなった。男の子の安息の場所がなくなった。その日から、男の子は何度も何度も自殺を測ろうとした。測ろうとしたけど、そんな勇気男の子にはなかった。休み時間もないまま男の子は暴力に耐えるしかなかった。そんなある日、両親が離婚することが決まった。どっちが言い出したかは分からない。男の子にはどっちについて行くか決める権利を与えられた。男の子は、何も言わなかった・・言えなかった。どっちとも一緒にいたいから。離れたくないから。その結果。母親に引き取られた。」
僕はもう、確信していた。これは僕のお話だ。僕が・・。
「引き取られた後は、他よりは裕福な生活を送っていた。それでも父親の血が入ってるせいか、母親、母親の祖父母からは一線を引かれていた。暴力こそないが、祖父母は男の子に関心がなかった。」
これは・・・どうして夜丘が?
「小学5年生に上がった男の子は元気がなかった。祖父母の会社が倒産した。それは今の生活が終わると言うことを示していた。前々から一線を引かれていた男の子はお金がなくなった今、男の子に何かするより自分達にとお金を使う。男の子は分かっていた。だから、小5に上がって数日経った頃の母親と祖父母の態度に違和感を感じていた。優しかったから。男の子は不思議に思いながらも、学校に登校する。」
・・・・
「そこで、男の子は知る。
『売られたのだと』
男の子は」
そこで小説は止まっている。
この話に夜丘は一切出てこなかった。
僕は自分の部屋の机を触る。
僕が夜丘のために作った机。
多分、この世で一つだけのデジタル机。
小説が書きやすいように工夫された机。
机の電源を入れる。すぐに表示される小説。書き途中。題名は『今から君を守るのに理由が必要ですか・・?(仮)』。仮が入ってるから、題名は保留なのかもしれない。
僕は読む。椅子に座って、1文字1文字文字を追う。
「1人閉じこもってる男の子。誰も手を差し出してくれない。ドアの向こうからは両親の喧嘩の声。男の子は耳を塞ぐ。両親の声を聞きたくなくて、喧嘩してる怖い声は聞きたくなくて。いつもの優しい声が聞きたくて。男の子は涙を流す。涙は止まらない。泣きたくないのに、泣いたら怒られるから。怒ってる父親を見たくなくて必死に止める。」
一呼吸おいて、また読み始める。
「それでも父親は男の子に怒りをぶつける。罵倒を暴力を。男の子にぶつけた。男の子は謝って謝って。なんで謝ってるのかさえ分からなくなる。母親は、横で見てるだけ。止めることはしない。理由は勿論、男の子は分かってる。自分まで、暴力を受けたくないから。だから母親は男の子に手を差し出さない。傍観。男の子は痛いと痛いと言えない。言ったらまた痛いから。」
泣かないようにしていたのに、泣きそうになる。
「男の子はいつも、行く場所がある。それは一時の安息を求めて。男の子が大好きな人の家。迷惑だと思っている。それでもその人のところに逃げるしかなかった。その人は決して嫌な顔をしない。それよりも嬉しそうな顔をする。男の子はいつも下を向いているから気が付かない。その人は嬉しそうなんだ。男の子が来るのが、来て、手当てをするのが。男の子が家に戻る時、その人は悲しそうな顔をする。そしていつも言う。
『また、俺に手当てをさせて』
と。」
もう涙が止まらない。袖で涙を拭っても拭っても、それでも読み続ける。
「でも、男の子の前からその人はいなくなった。男の子の安息の場所がなくなった。その日から、男の子は何度も何度も自殺を測ろうとした。測ろうとしたけど、そんな勇気男の子にはなかった。休み時間もないまま男の子は暴力に耐えるしかなかった。そんなある日、両親が離婚することが決まった。どっちが言い出したかは分からない。男の子にはどっちについて行くか決める権利を与えられた。男の子は、何も言わなかった・・言えなかった。どっちとも一緒にいたいから。離れたくないから。その結果。母親に引き取られた。」
僕はもう、確信していた。これは僕のお話だ。僕が・・。
「引き取られた後は、他よりは裕福な生活を送っていた。それでも父親の血が入ってるせいか、母親、母親の祖父母からは一線を引かれていた。暴力こそないが、祖父母は男の子に関心がなかった。」
これは・・・どうして夜丘が?
「小学5年生に上がった男の子は元気がなかった。祖父母の会社が倒産した。それは今の生活が終わると言うことを示していた。前々から一線を引かれていた男の子はお金がなくなった今、男の子に何かするより自分達にとお金を使う。男の子は分かっていた。だから、小5に上がって数日経った頃の母親と祖父母の態度に違和感を感じていた。優しかったから。男の子は不思議に思いながらも、学校に登校する。」
・・・・
「そこで、男の子は知る。
『売られたのだと』
男の子は」
そこで小説は止まっている。
この話に夜丘は一切出てこなかった。
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